繊維ニュース

能登半島地震/北陸産地/4日は工場の整理整頓/5日以降に設備確認

2024年01月05日 (金曜日)

 1日に発生した能登半島地震は北陸の繊維企業にも影響を与えている。4日は落下物などの整理に当たる企業や、糸などの受け入れができず物流対策に追われる企業も見られた。

 能登半島中部の中能登地区では、工場建屋への被害も出た。余震、断水が続く地域に住む従業員も多く、この日は安全性を優先しながら出社、本格的な操業開始には至っていない。工場の設備への影響は5日以降、稼働させながら確認していく企業が多い。縦揺れ、横揺れともに激しかったため、ほこりなどの影響だけでなく織機の中心のズレなどを懸念する声もあり、「稼働させないと分からない」のが実情だ。

 丸井織物は2日に対策本部を設置して対応している。従業員の人的被害はなく、七尾市と中能登町の工場は「生産設備の被害は大きくない」と言うが、一部建屋が被害を受け修復工事を業者に依頼した。稼働開始予定だった4日は工場内の整理を行い、5日以降に稼働させながら設備への影響を確認していく。

 前多(金沢市)の織布子会社である鹿島テックス(石川県七尾市)も従業員への人的被害はなかった。断水が続く地域に住む従業員もいるため、5日は安全を優先して可能な人だけ出社し、出社できた社員で工場内の整理整頓から始め、状況を確認していく。詳細の把握は稼働させてからになるが、既にクリールの曲がりや井戸水を使うウオータージェット織機の配管の亀裂などが見つかっていると言う。

 ジャテック(金沢市)は中能登地区にサイジング工場、織布のジェイ・テキスタイル、糸加工のケーエヌテーの3工場を持つが、いずれも人的被害はなかった。4日の時点で工場への大きな被害は確認されていないが、5日以降に稼働させながら確認していく。

 石川県中西部にある内灘町は海岸砂丘地で、道路の陥没などの被害が大きい。糸商のタロダは事務所前の駐車場が隆起して車が入れなくなっており、建屋が傾くなどの被害があった。

 小松マテーレは孫会社のアマイケ(七尾市)で落下物などの影響はあったが、設備に大きな影響はなかった。本社(石川県能美市)など染色工場の稼働への影響も軽微で、4日にボイラーなどの点検を終えて稼働に入った。

〈工場の一部に損傷/素材メーカー〉

 能登半島地震によって北陸地区に立地する素材メーカーの工場にも一部被害が出ている。

 東レは現在、石川工場(石川県能美市)を含めて人的被害が出ていないか確認を進めている。建屋・設備の一部に破損が見られる。取引先の状況も含めて被害の程度や稼働への影響の詳細を確認している。

 東洋紡の富山事業所も人的被害はないが、庄川工場(富山県射水市)と井波工場(同南砺市)の建屋と設備が一部損傷した。このため7日まで操業を停止し、9日以降(8日は休業日)の稼働再開に向けて状況の確認と復旧作業を進める。

 帝人フロンティアは北陸地区にグループ会社の帝人フロンティアニッティング(石川県小松市)、フロンティアテックス(福井県坂井市)、帝人フロンティアDG(新潟県見附市)があるが、従業員とその家族の無事を確認しており、4日の時点で建屋・設備にも大きな被害は出ていない。

 シキボウの富山工場(富山市)、大和紡績の美川工場(石川県白山市)も現時点で被害は報告されていない。

〈被災中小の資金繰り支援/経産省〉

 経済産業省は、能登半島地震で新潟、富山、石川、福井県の35市11町1村に災害救助法が適用されたことを踏まえ、被災した中小企業・小規模事業者向けの資金繰り支援を行う。

 対象地域の日本政策金融公庫(日本公庫)、商工組合中央金庫(商工中金)、信用保証協会に特別相談窓口を設置したほか、日本公庫と商工中金が運転資金または設備資金を融資する災害復旧貸付を実施。信用保証協会は、一般保証とは別枠の限度額で融資額100%を保証するセーフティネット保証4号を適用する。近日中に官報で地域の指定を告示予定で、事前相談を開始している。

〈経産省の要請受け毛布送る/JBA〉

 日本寝具寝装品協会(JBA)は、能登半島地震の被災地へ毛布6千枚を送った。地震発生の1日夜に経済産業省からの支援要請を受け迅速に対応。2日、3日の2日間に分けJBA加盟企業の倉庫から送った。

 JBAは大規模災害時の被災者支援として、経産省と連携しながら災害時での睡眠に必要な寝具類の開発に向けた業界統一製品作りを推進。備蓄・物流体制を含め整備してきた。

 池田努専務理事は、「ニュースでも防寒用の毛布や寝具の不足がいわれる。3連休前に追加要請に応えられるよう連携を密にしたい」と話した。

 日本毛布工業組合も経産省からの支援要請を受けて3日から国産毛布を現地に搬送している。