繊維ニュース

どうなる2024年の繊維産業/景況予測/「変化なし」「好転」「悪化」で分かれる/先行き不透明感を反映か

2024年01月05日 (金曜日)

 本紙は昨年11月に、繊維関連企業トップを対象にした恒例の「新春アンケート」を実施し、118社から回答を得た。設問は以下の9項目。①繊維産業の景況は2024年にどうなるか②繊維製品の原材料価格はどうなるか③繊維製品の売上高規模が拡大する小売り業態は④繊維製品の店頭価格はどうなるか⑤国内生産量が拡大する分野は⑥今後、繊維品の海外での生産・調達を拡大するか⑦拡大する場合、重視する国・地域はどこか⑧今後、繊維品の海外での販売(輸出、内販、第3国向け)を拡大するか⑨拡大する場合、重視する国・地域はどこか――。(吉田武史)

 設問の一つ目は「24年の景況はどうなるか」。最も多かった回答は42%を占めた「変化しない」で、次いで「好転する」(33%)、「悪化する」(25%)という結果だった。22年、23年の景況予測では新型コロナウイルス禍からの回復を予測して「好転する」が過半数を占めていたが、今回は三つの回答で票が割れ、先行き不透明感の強まりを表す結果となった。

 好転する理由は、「欧米の在庫調整が終わり景気は緩やかに上向く」(一村産業)、「欧米需要の回復」(澤村)など欧米市況の回復を予測する声や、「訪日外国人増加に伴うさらなる消費拡大が期待される」(MNインターファッション)、「インバウンド関連の需要増」(東リ)、「インバウンド消費のさらなる伸長」(デサントジャパン)、「インバウンド拡大」(小泉アパレル)など訪日外国人観光客の需要がさらに高まるという指摘が目立った。

 「悪化する」と予測した中では、「23年はコロナ禍から経済活動の正常化が進み景気は上向いたが、24年は回復が一巡し、景況としてはやや鈍化する」(旭化成)、「一時的な需要の揺り戻しが落ち着く」(アツギ)、「コロナ禍後のドレスニーズの揺り戻しは一巡し、市場自体が落ち着く」(瀧定名古屋)などコロナ禍が落ち着いたことの需要増が一時的であり、24年度は沈静化するとの指摘が多く見られた。

 「好転する」で多く挙がっていた欧米市況の回復という声とは逆に、「欧州・中国市場の不振継続」(旭化成アドバンス)、「欧米の景気減速の影響」(日本バイリーン)と見通す声も強い。「ロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・ガザの紛争」(菅公学生服など)により世界経済の悪化が続き、日本にも波及するという指摘も多かったほか、「物価高による生活防衛意識の高まり」を繊維景況が悪化する要因と捉える回答も相当数あった。

 「変化しない」とした回答の中では、「良い要素、悪い要素が混在」(コーコス信岡)、「まだら模様」(ユニチカトレーディング)、「自動車関連の需要は回復するが、ファッションアパレルは物価高が影響し消費マインドは低迷したまま」(セーレン)などプラス面とマイナス面が均等であるため「変化しない」と予測する声が目立った。