特集 産業資材用繊維機械/新たな開発のソリューション/イテマ/エディー/伊藤忠マシンテクノス/ストーブリ/福原産業貿易

2023年12月25日 (月曜日)

 繊維産業にとって産業資材分野は古くから重要用途の一つであり続けている。近年、その重要性は一段と高まる。繊維機械メーカーも産業資材分野に向けた機種開発・提案を強化する。ユーザー企業の新たな挑戦を可能にするソリューションとして、有力メーカー・商社の最新提案を紹介する。

〈注目高まる「ユニラップ」/炭素繊維製織で威力発揮/イテマ〉

 イテマが「イテマテック」ブランドで展開する片レピア織機「ユニラップ」への注目が高まってきた。特に炭素繊維の製織で威力を発揮しており、海外で採用が増えている。こうした実績を生かし、日本でも高性能繊維による新規開発に取り組む織布企業に向けての提案を進める。

 ユニラップは、片レピア方式の緯糸挿入システムによって炭素繊維のような扁平(へんぺい)糸でも緯糸によじれが生じないのが最大の特徴だ。後工程で樹脂含侵させる繊維複合材の基布は加工精度に影響を及ぼさないように毛羽立ちなどを抑える必要がある。ユニラップはガイドレスのため経糸への干渉がなく、毛羽立ちが発生しない。

 レピアヘッドや調流装置などを簡単にユニット交換するだけで各種産業資材向けの製織が可能なことも特徴。1台で幅広い糸種による製織に対応できることへの評価が高まる。世界では既に年間10台以上のペースで販売実績が上がっており、特に欧州や中国、韓国、台湾などで導入が進む。

 11月に中国・上海で開催された国際繊維機械見本市「ITMAアジア+CITME」では、中国子会社のイテマ中国に有力バイヤーを招き、クローズ方式で実機見学会も開催した。こうした実績を生かして、日本でも新規開発用の設備としてユニラップの提案を進める。

〈資材用織機が安定推移/炭素繊維用フィーダーも/エディー〉

 ピカノール(ベルギー)の日本総代理店を務めるエディー(大阪府東大阪市)は、レピア織機「オプティマックス―i」を軸に、産業資材用の提案に力を入れている。資材用の需要は、6月以降は若干の減速があったが、ここに来て回復しており、来年は拡大を見込む。

 「オプティマックス―i」はさまざまな糸種に対応し、衣料、産業資材、工業資材、農業資材など幅広い用途で使われている。多様な緯入れや振動の少ない安定稼働のほか、エネルギー効率の高さ、デジタル技術を駆使した扱いやすさなども好評を得る。緯糸挿入は、ガイド式、「フリーフライト」式(ガイドレス)、積極受け渡し式をそろえ、産業資材用で注目が高いフリーフライト式は超広幅(540㌢幅)への要望にも対応する。ピカノール本社の技術者の訪日も昨年から再開しており、来年は技術者とともに産地を訪問する機会をさらに増やす考え。

 日本代理店を務めるLGLエレクトロニクス(イタリア)のフィーダーは近年、精密な張力管理のために既存織機・編み機のフィーダーを最新機種に入れ替える需要が増えている。産資用では、太番手や伸度の少ない糸を安定して送り出すことができる産業用織物に特化したタイプ「テクニコ」を展開しており、6月イタリア・ミラノで開かれた「ITMA2023」では最新機種「テクニコ2」も発表された。糸の安定した送り出しに加えて消費電力の低減なども実現しており、日本では炭素繊維用などでも導入が進みだしている。

〈新規ニーズ実現へ/AI搭載ロボットも実証実験/伊藤忠マシンテクノス〉

 伊藤忠マシンテクノスは、産業資材用途で新たに生まれるニーズを実現する織機や加工機をいち早く日本のユーザーに提案することに力を入れる。

 同社が販売するドルニエのレピア織機「P2」はフィルター用途の製織で評価が高く、堅調な販売が続く。フィルターだけでなくエアバッグ基布などドルニエが得意とする用途では求められるニーズも一段と高度化した。P2は6月にイタリア・ミラノで開催された国際繊維機械見本市「ITMA2023」で新技術を発表。送り出しと巻き取りロールに加え、バックレストロールも電子制御の独立駆動方式を選択できる。繊細なテンション管理が可能になり、変化する製織ニーズに幅広く対応できる。

 加工機も幅広くラインアップする。例えばイタリアのモンティアントニオ社のラミネート加工機は水系ウレタンのホットメルトなど近年要望が強い低環境負荷の加工を実現する。同じくイタリアのウイリー社の細幅加工機はスリットやエンボス加工、レーザーカットなどを提案する。こちらも産資用途でも強みを発揮する。

 繊維産業にとって最大の課題となりつつある人手不足に対応する提案にも力を入れている。その一つとして人工知能(AI)搭載7軸ロボットを使い、クリールのボビン交換の実証実験を来年早々に実施する計画だ。省人化を可能するソリューションとして期待は大きい。政府も補正予算で省人化枠の補助金を検討している分野だ。

〈電子開口と立体製織融合/北陸のセミナーでも紹介/ストーブリ〉

 ストーブリは独立駆動方式による開口を実現した電子ジャカード「ユニバル100」と複雑な立体製織が可能なダブルレピア製織システム「TF20」を融合させることで産業資材分野での多彩な可能性を提案している。

 ユニバル100は、開口制御を独立駆動方式で行うため、機械的制約のない複雑な開口挙動が可能だ。また、TF20はカーペットや人工芝の製織で培った技術をベースにしたダブルレピア方式の緯糸挿入によって3次元織物の製織を実現する。両社を融合することで従来の製織システムでは難しかった複雑な形状の3次元製織が可能になった。

 既に欧米では導入が進められており、一般産業資材の製織だけでなく、炭素繊維や高性能繊維を使った複合材の基布製造などで活用されている。航空機や自動車、風力発電設備部材など用途の拡大も進む。

 こうした海外での豊富な実績を日本でも積極的に紹介しており、このほど、石川県繊維協会が実施する「いしかわ繊維大学マネジメント支援講座」に講師として参加した。セミナーでは「産業資材における織物用途とストーブリの取り組み」をテーマに同社の開口・製織システムによって実現できるさまざまなアプリケーションを紹介した。

 通常の設備では難しい製織を可能とするシステムとして日本でも認知度を高め、具体的な導入成果につなげることを目指す。

〈サービス体制が強み/資材分野での豊富な実績/福原産業貿易〉

 福原産業貿易の丸編み機は、衣料用途だけでなくインテリアや資材用途でも豊富な実績がある。産業資材向け専用機は特にないが、汎用機をベースに資材分野でも活用されており、それを可能にするサービス体制が同社の強みとなる。

 同社の丸編み機は、資材用途では自動車の天井材など内装材、貼付薬基布などの編成で活用されている。そのほか、建材や土木資材でも丸編み活用に向けた研究開発が進められている。

 インテリア分野では海外を中心にマットレスの表皮材で豊富な実績がある。マットレス表皮材は世界的に織物から編み地へのシフトが進んでおり、多様な柄表現が可能な同社の電子柄編み機への評価は高い。

 ただ、マットレス表皮材向けはここに来て需要が鈍化した。世界的なインフレや欧州の景気低迷が影響している。このため一段の高付加価値化に向けて裏と表で異なる柄表現が可能な両面選針電子柄編み機などを提案している。密度も従来の主力である20ゲージに加えて、28ゲージなどハイゲージ機の提案も進める。

 サービス体制の充実も同社の強みの一つ。今春には製造子会社の福原精機製作所(神戸市)の本社工場内に、福原産業貿易として展示スペースを設置した。実習スペースとしても活用しており、丸編み技術に関するさまざまな実習を開催し、ベーシックな内容から応用まで技術情報を発信する体制が一段と拡充された。