ごえんぼう
2023年12月25日 (月曜日)
業容が拡大してくれば、事務所を大きくするのは当然。しかし、本社を全く別の地に移転させるとなると社員の中から反発が出るかもしれない▼戦国時代、織田信長は領土を拡大する中、居城を那古野から清須、小牧山、岐阜、安土へと移転した。毛利元就や武田信玄、上杉謙信、北条氏康などの戦国大名が居城を変えなかったことを見れば、異質である▼もちろん信長もまだ尾張を統一したばかりの弱小勢力のころ、居城移転で家臣からの反発を恐れた。そこで小牧山(現在の愛知県小牧市)への移転を明かす前、もっと辺境な二の宮山(同犬山市)に移ると言い出した。家臣たちは「難儀の仕合せなり」(信長公記)と皆迷惑に感じたという▼しかし、信長が後からやはり小牧山に移ると言った途端、二の宮よりはましと「悦んで罷り越し」たとある。何事も独断専行のイメージが強い信長だが、人心掌握の苦労を示すエピソードでもある。