繊維ニュース

特集 スクールスポーツウエア(5)/オゴー産業/ミズノ/トンボ/ミヤモリ

2023年12月12日 (火曜日)

〈オゴー産業 ニーズ捉えたアイテムそろう/生徒参画型の取り組みも〉

 学生服製造卸のオゴー産業(岡山県倉敷市)は、スクールスポーツの基幹ブランドである「スポーレッシュ」を軸に提案を進めている。寄付を通じて世界の子供たちを支援する「セーブ・ザ・チルドレン」とのコラボレーションモデルをそろえるほか、道徳心の啓発や実際に着用する生徒の体育着のデザイン企画への参画など、独自の取り組みで採用につなげている。

 体育着では、軽量、防風といった近年体育着に求められる機能を備えたアイテムをそろえる。中学、高校に加え、小学校向けの体育着にも対応できることも強み。片山一昌取締役は「例えば小中一貫校では小学校から中学校まで垂直に対応できる」と話す。

 体育着のロゴや色など、デザインを生徒も参加して決める“生徒参画型”の取り組みも進めている。「メーカー視線ではなく、学校や実際に着用する生徒の声を反映する」(片山取締役)ことで、ニーズを捉えた体育着を供給する。

 セーブ・ザ・チルドレンブランドでは、再帰反射など体育着の機能性と併せて、学校教育や生徒の道徳心の醸成など、教育的な方向からの提案も行っている。片山取締役は「セーブ・ザ・チルドレンの考えに共感した学校が採用してくれている」と説明する。

 来年にはスクールスポーツのカタログを変える構想もあり、提案に生かしていく考えだ。

〈ミズノ 24春夏も拡販目指す/透け防止に引き合い〉

 ミズノは2023年度、スクールスポーツウエアの販売量が「22年度より増加する」との手応えを示しており、24春夏に向けても「増える」と積極的に春夏商戦に臨んでいる。

 新型コロナウイルス感染症が5類に移行して以降も、対面ではなく非接触での採寸(オンライン採寸)に対する問い合わせが変わらず増えていると言う。

 今シーズンは昇華転写プリントのデザインや機能性に優れたモデルが引き合いを集めたとしており、今後は価格を重視する層と他校と差別化された機能・デザインを求める層にユーザーが分かれていくと見通している。

 23春夏の売れ筋として透け防止機能を持たせたTシャツの売れ行きが好調だったといい、今後も引き続き透け防止が引き合いを集めるとともに、防風機能が特徴のトレーニングウエアへのニーズが高まってくるとみている。

 また、「SDGs(持続可能な開発目標)に配慮した活動・素材を求める学校が増えてきている」として、これらのニーズには24春夏に新モデルとして打ち出すトレーニングウエアに搭載する「フィールドドライ」「フィールドプロテクト」「ソフトストレッチニット」3素材を重点的に投入する。

〈トンボ 1129デザインコンクール/最優秀賞はEF搭載ウエア〉

 トンボは11月29日の“いい服の日”に、第14回「トンボ1129デザインコンクール」の受賞作品を特設サイトで発表した。応募点数1万4759点、1178校からの応募があった。体育着デザイン部門では、苫小牧市立青翔中学校2年の矢幡陽真里さんの「夏でも快適!すずしげだぼっと体育着」が最優秀賞に選ばれた。

 矢幡さんの作品は、暑い夏でも涼しいと思えるような工夫、色使いを盛り込んだ。特徴の一つが電動ファン(EF)を取り入れた点。EFによって衣服内の体温調整ができる。ウエアの製作ではサンエス(広島県福山市)が協力した。また、熱がこもりやすい脇部分には保冷剤が収納できるポケットを付けた。袖とパンツの裾はファスナーで分離でき、“夏スタイル”に変えることができる。

 審査員は「昨今の日本の暑い夏に対応した機能体育着。現代のトレンドも入っていてとても高い企画力を感じた」と評価した。

 同コンクールは2010年から開催する。今回はデザイン部門(制服5024点、体育着698点)、プリント部門(6863点)、アイデア部門(2174点)から最優秀賞、優秀賞、入選作品、学校賞を選んだ。

〈ミヤモリ 裁断くずを鉛筆芯に再生〉

 体操服などのスポーツウエアの縫製を主力とするミヤモリ(富山県小矢部市)は、生産時に発生する生地の裁断くずから鉛筆の芯を作るプロジェクトを始めている。裁断くずを間接加熱で炭化させ、鉛筆の芯の原料に活用するものだ。裁断くずを廃棄する場合に発生する二酸化炭素(CO2)の排出を抑えることで、環境改善に貢献する。

 同社では年間20トンの裁断くずが発生しており、これを埋め立てか焼却で処分していた。環境配慮の観点からも、裁断くずの有効活用に取り組むため、社員からアイデアを募集。地元企業とも意見交換を行った結果、間接加熱によって炭に作り変える方式を採用することにした。

 地元の炭化装置開発会社、鉛筆製造会社と共同で開発し、2年半をかけて完成させた。芯には廃棄繊維由来の炭が20%含まれている。芯の硬度は「4B」相当で、黒度が高く光沢を抑えた仕上がりだ。

 この案を採用したのは、体操服の供給先である学校でSDGs(持続可能な開発目標)教育の題材にしやすいと考えたためだと言う。小学校への出前授業を開始しており、この取り組みを子供たちに伝えている。裁断くずの再利用によるCO2排出の削減効果も発信していく。