繊維ニュース

特集 スクールスポーツウエア(2)/スクールスポーツ事業インタビュー/24年入学商戦に向けて/菅公学生服

2023年12月12日 (火曜日)

〈菅公学生服/営業本部企画推進部 スポーツ企画推進課長 勝山 裕太 氏/自社ブランド伸ばす/カンコープレミアム好評〉

――来入学商戦に向けての進捗(しんちょく)を教えてください。

 来入学商戦では安定納品に注力するために、例年11月末まで受け付けていた新規注文を9月末で締め切りました。そのため、新規校からの受注獲得数は例年に比べると少ないです。ただ、早めに動くことができたことに加え、定番商品は海外生産を活用するなど手を打ったことで、生産は順調に行えています。

――体育着の各ブランドの販売状況について。

 ハウスブランドである「カンコー」ブランドが引き続き好調です。特に、大手素材メーカーと開発した生地「グランガード」を採用する「カンコープレミアム」は、軽いにもかかわらず防風性が高い点が評価されています。グランガードを採用した中学校向けの商品も拡充しましたが、こちらも好評を得ています。カンコープレミアムでは来春に新規採用校約50校を見込んでおり、累計採用校数は約550校となる見通しです。

 シンプルなデザインの「カンコーノームコア」は、他ブランドの体育着とも合わせやすく、シャツやパンツなど単品で購入するケースが多いです。

 ファイテンとのダブルネームによる商品、「カンコー×ファイテン」も順調に伸びています。こちらのコラボレーションが15周年を迎えることに加え、当社が創業170周年、ファイテンが設立40周年を迎えたことを記念した、ファイテンネックレスなどが当たるキャンペーンを実施しました。販促によってさらなる認知度向上につなげます。

――円安に加え、原材料価格など、あらゆるコストが上がっています。

 昨年に引き続き今年も原材料費などコストが上がっていることから、エリアによって異なってきますが、製品の価格改定を実施する方向で動いています。顧客にご理解いただきながら働き掛けをしていきます。

――スクールスポーツにおける今後の注力ポイントは。

 体育着がブランドだけで決まる時代でもなくなってきました。当社としては自社ブランドをどう売っていくかが今後の鍵になります。いかに「カンコー」ブランドを売っていくかという部分に注力していきます。

〈菅公学生服/制服循環でプロジェクト始動/環境配慮へさらに踏み込む〉

 菅公学生服は、1997年にリサイクルポリエステルを使用した環境負荷低減の制服・体育着、2013年には業界で初めて植物由来ポリエステル繊維使った体育着を開発するなど「カンコーエコスクール」という活動を進めてきた。新たに衣類回収サービス「ブリング」を運営するJEPLAN(ジェプラン、旧日本環境設計)と取り組み、「制服循環エコスクールプロジェクト」を始動した。

 不要になった制服、体育着を学校で回収し、“服から服”へ循環させる取り組みで、26年入学商戦から再生原料を使った商品の発売を計画。さらに同プロジェクトを通じて生徒たちに循環型経済(サーキュラーエコノミー)への関心を高める機会を作る。

 26年度までにJEPLANと連携しながら菅公学生服が制服、体育着を供給する中学校、高校を中心に、目標として500校に回収ボックスを設置する。学校によっては他社の制服、体育着を併売するケースがあるが、他社製品も問わずに回収する。

 回収ボックスを設置した学校へは回収実績が目に見え、生徒たちが活動を実感できる「回収品受け取り証明書」を発行。衣料品循環のセミナーや講義の実施もしながら、回収した制服をどのように循環させるのか、生徒たちが主体的に考える学びの機会も提供する。

 26年入学商戦からシャツや体育着に採用されている防透け性に優れ、売れ筋の「ミエンヌ」シリーズで、再生ポリエステル原料「ブリングマテリアル」に置き換える。尾﨑茂社長は、「大きなミッションとして(生徒たちに)循環型社会の大切さ、素晴らしさを、実体験を交えながら感じてもらう」と強調する。

 25年の入学商戦に向けてインクジェットプリントを活用した制服の展開にも乗り出す。デザイン性の幅を広げるとともに、水の使用量を従来の先染め生地と比べ約40分の1に抑えることができ、環境配慮を訴求する。先染め生地では4色の色糸を使うのが限界でデザインにも制約があるが、インクジェットプリントであれば多彩な柄の表現ができる。

 他にもゆったりサイズながらもフォーマル性を担保するとともに、ポリエステルのモノマテリアル化でリサイクルしやすくした制服を試作するなど、循環型経済につながる商品開発にも力を入れる。