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三備産地/縫製工場新設の動き/国内縫製キャパ縮小受け

2023年12月08日 (金曜日)

 生産の国内回帰の動きなどによって国内縫製工場では生産キャパシティーが逼迫(ひっぱく)する状況が続いている。そのような中、岡山県南東部から広島県東部にまたがる三備産地の企業の中で縫製工場を新設する動きが一部で出てきた。

(秋山 真一郎、勝木 徹)

 円安や海外の人件費などさまざまなコストが上昇し、国内と海外の生産コストの差が縮む中、一部のアパレルメーカーでは国内生産を増やす動きが出ている。その一方で、新型コロナウイルス禍では、その受け皿となる国内縫製工場の廃業や縮小、倒産が進んだ。

 国内縫製キャパが縮小傾向にある中、三備産地では一部のアパレルメーカーで縫製工場を新設する動きが出てきた。学生服メーカー大手の菅公学生服は来年10月、米子工場(鳥取県米子市)の隣接地へ工場を増設する。約1万平方メートルの敷地に鉄骨平屋建て、床面積約6800平方メートルの工場を建てる。投資額は約23億円。両工場の従業員数は約300人になる見込みで、そのうち約50人を新規採用する計画を立てる。

 学生服業界では、LGBTQ(性的少数者)へ配慮する流れから、中学校を中心に従来の詰め襟、セーラー服から性差を感じさせないブレザーへと制服を刷新する動きが拡大している。これに対応するため、安定生産できる基盤作りが喫緊の課題となっていた。新工場では拠点を持つ南九州で生産してきたブレザーやスラックスの増産分の生産に当たる考えで、ブレザー、スラックス、スカートそれぞれ年間5万点を生産する見通し。

 ワークウエアメーカーの桑和(岡山県倉敷市)は、本社近くの鉄骨3階建ての空き物件を借り、縫製工場として活用する。敷地面積は約660平方メートル、投資額は約1億円を見込む。既に一部で稼働を始めており、来年4月までに本格稼働させる。

 新工場で小ロットの受注や追加生産へ細やかに対応することで企業納入向け販売の伸長につなげる。現在は4人体制だが、今後は人員を増やし、生産量を現状の3倍程度にまで高める計画だ。

 縫製工場が工場を新設するケースも出てきた。ジーンズ縫製の内田縫製(同津山市)は来秋、本社近くに工場を新設する。投資額は約3億円で、約4700平方メートルの農業用地に2階建て、延べ床面積約1300平方メートルの工場を建てる。ミシンを現在の70台から100台に増やすとともに、製造ラインも1ライン増設して2ラインにし、生産能力を高める。これに伴い、従業員も段階的に5~10人ほど採用する。本社機能も移す。自社ショップも併設し、ファンや地元住民が訪れる場にしていく考えだ。

 ただ、縫製キャパ拡充に向けては人材の採用も必要。繊維業界に限らず、幅広い業種で人手不足が深刻化する中、人材確保が課題となる。