特集 環境(6)/わが社の環境戦略・商品/蝶理/伊藤忠商事/豊島/ヤギ

2023年12月05日 (火曜日)

〈繊維から繊維への循環始動/北陸産地企業と連携/蝶理〉

 蝶理は、糸・生地・製品という繊維産業の川上から川下までの各段階でサステイナビリティーに対応した取り組みを行い、それらを柔軟に掛け合わせることでサプライチェーンのサステ全体の最適化を実現するコンセプト「ブルーチェーン」を推進する。

 その一環として、繊維の循環型スキーム「B―LOOP」(ビーループ)を本格始動した。蝶理の強みであるグローバルなネットワークを生かし、日本やアジアで製造される繊維製品の製造工程で発生する繊維くずを回収、循環させる仕組みを築く。

 ポリエステル素材については、ポリエステル糸に再生することで、衣服や資材などさまざまな用途へ循環させることを可能にし、石油資源の使用量削減も実現する。

 糸への再生が困難な素材については、反毛後に自動車の吸音材や水害防止用の河川敷マットなどに再利用する。資源を無駄にせずに有効活用することで、焼却処分される繊維の量を減らし、温室効果ガスの発生削減にも貢献する。

 まずは蝶理との結び付きが強い北陸産地企業と連携し、糸・生地の生産工程で発生する廃棄繊維を回収、再利用し、繊維の廃棄量削減に取り組む。

 現在、北陸産地の取引先を中心とした約140社から、ブルーチェーンのパートナーとして賛同を得ている。このつながりを活用しながら、サーキュラーエコノミーを加速させ、持続可能な繊維産業を目指していく。

〈廃棄衣料の再生資源化/ガス化技術で化学製品に/伊藤忠商事〉

 伊藤忠商事は、従来のケミカルリサイクルでは処理が困難だった混紡品を含む廃棄衣料を再生資源化する「アルケミアプロジェクト」を推進する。樹脂加工・機能性化学大手のレゾナック(東京都港区)と協力関係を結び、同社のガス化処理技術を活用して、低炭素アンモニアなどの化学製品に再生させるシステムを構築、運営していく。

 伊藤忠繊維カンパニーは、回収の専門業者を通じてアパレル企業や自治体、小売業者から集めた廃棄衣料などを固形燃料RPAFに作り変え、レゾナック川崎事業所のプラスチックケミカルリサイクルプラントに供給する。

 そこではガス化の技術により、RPAFを原材料にしてアンモニアを生み出す。アンモニアからは肥料やアクリル繊維原料などができるほか、精製工程で発生した二酸化炭素(CO2)を回収し、ドライアイスや液化炭酸に再生させることも可能としている。

 プロジェクトの本格始動に先立ち、伊藤忠繊維カンパニーはユニフォーム事業会社のユニコ(東京都中央区)と、使用済みユニフォームを再生資源化する実証実験を行い、循環システム実用化の確証を得た。この結果を踏まえ、ユニフォームを供給する側・使用する側の企業にプロジェクト参画を働きかけている。さらに、アパレル全般にも連携の輪を広げていく。

〈脱炭素社会へ学生とタッグ/ラリーに向けたTシャツ制作/豊島〉

 豊島は6月、W TOKYO(東京都渋谷区)と共に、愛知県豊田市と「『ゼロカーボンシティ』の推進に関する連携協定」を締結した。同協定は、同市の脱炭素社会推進プロモーション事業「ニューバイブズ」の一環としてなされた。ニューバイブズは大学生が中心となり、企業の協力を受けながら同世代の共感を生むための情報を発信し、行動を起こすきっかけ作りを目指す。

 その一歩となったのが、豊田市が11月に開催した「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」のオリジナルTシャツ制作だ。学生がデザインを考案し、豊島のオーガニックコットン普及プロジェクト「オーガビッツ」のコットン100%を使ってTシャツを作る形で活動は進んだ。デザインは、サステイナブルの頭文字「S」を未来に続く道に見立てたものを採用した。

 完成したTシャツは、ラリーの期間中に名鉄・豊田市駅前の広場と豊田スタジアムで販売された。学生たちも売り場に立ち、懸命にTシャツと活動をアピールした。豊田スタジアムでの販売分は完売となった。

 同協定は、豊島が豊田市から協力の打診を受けたことが契機になったという。学生との窓口を担った同社の伊東周典さんは「学生たちの強い思いに動かされ、自身も改めてサステなファッションについて見直すきっかけへとつながった。この出会いを生かして、環境に配慮したファッションについて発信を続けていきたい」と意気込む。

〈分別から担う循環サービス/顧客ニーズに応じ提案/ヤギ〉

 ヤギは、回収された使用済み繊維製品の分別から再製品化までを一貫して手掛ける循環サービス「LOOP LOOPS」(ループ・ループス)の提案を開始した。同社独自のネットワークを活用し、顧客が抱える課題の内容やレベルに応じたサービスを提供する。

 回収した衣類は、混率を確認した上で素材別に仕分けし、付属品も取り外す。その後、反毛して再生品の素材に作り変える。素材については、糸に加え紙やボードも提案に含めている。さらに、羽毛のアップサイクルも請け負う。

 糸は、仕分けされた単一素材の製品から作る。わたの状態で染色することで水の使用を抑えるなど、製法についても環境に配慮する。

 紙は、回収衣類から再生した原料を30%含有する。名刺やショッピングバッグなど多様な用途を想定する。

 ボードは、反毛した原料を圧縮成形して作り上げる。厚さは1~30ミリの間で対応し、木材に近い強度と加工性を持たせる。家具のほか、ハンガーなど副資材にも活用する。

 使用済みの羽毛ふとんから回収された羽毛は、天然水で丁寧に洗浄し、高品質の原料に再生させる。

 サービスの利用料金は顧客の状況に応じて個別に設定し、費用の面で顧客に負担をかけないようにする。廃棄よりも費用をかけずに脱炭素社会の実現に貢献できるメリットも訴求していく。