特集 環境(3)/わが社の環境戦略・商品/東洋紡せんい/大和紡績/シキボウ/新内外綿

2023年12月05日 (火曜日)

〈循環経済への対応力強化/アクリルやナイロンでも/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいは、環境配慮型素材や仕組みを充実させ、サーキュラーエコノミー(循環経済)への対応力を強めている。

 新たに打ち出した高品質リサイクル綿糸「さいくるこっと」は、協力関係にある海外の大手紡績を通じて開発。同工場では織物も生産しており、それらの端材を反毛し糸に戻す。空気を使って反毛することから繊維にダメージを与えず、バージンに近い風合いを出せる。リサイクル綿100%で40単糸まで供給できる。

 工場で発生する廃棄アクリルをマテリアルリサイクルした再生アクリルわた「アクリケア」は、抗菌機能アクリル繊維「銀世界」やアクリレート繊維「エクス」などのリサイクルも可能。「アクリルでのリサイクルは珍しい」と言う。工場の排ガス由来のバイオエチレングリコールを原料に約30%含んだ糸を使って開発した「スカイイー」は、石油由来のポリエステルと同等の性能を持つ。

 高品位リサイクルナイロン「ループロン」ではマテリアルリサイクルだけでなくケミカルリサイクルも用意。バージン原料に近づけることでデンタルフロスといった口腔衛生のアイテムにも使用できる。

 他にも自社グループ内の縫製工場で発生する端材をマテリアルリサイクルする「T2T」や、生分解性ポリエステル繊維「アースケア」の抗ピル短繊維なども訴求する。

〈「エコフレンド」PJを再構築/一貫生産の強み出す/大和紡績〉

 大和紡績は、環境配慮型の素材や取り組みによる総合提案戦略「エコフレンド」プロジェクトを再構築する。レーヨン、ポリオレフィン系合成繊維といった原料から、さまざまな製品まで一貫生産できる強みを生かし、次の成長の芽を育てる。

 特に輸出が多い化粧品や電機メーカーなどでは、欧米での環境配慮への意識に応えるため、部材や梱包(こんぽう)材などにも環境配慮型素材を使う傾向が高まっており、そうしたニーズを捉える。

 合繊ではバインダー繊維「ミラクルファイバーKK―PL」の採用が増加。芯部分にポリ乳酸(PLA)、鞘部分にポリブチレンサクシネート(PBS)を使った2層構造の生分解性の樹脂のみで構成された熱接着複合繊維で、化粧品会社からの関心が高く、採用に向けて試験に入った。

 レーヨンでは海水中生分解性の国際認証を取得している「エコロナ」が梱包材としてのニーズが高く、「電機メーカーからの問い合わせが多い」と言う。一部の取引先では、プラスチックに変わる次世代の梱包緩衝材として打ち出す。

 産業資材ではドライヤーカンバスを回収し、樹脂に戻してから、土木用の資材へ転用するプロジェクトも開始した。ドライヤーカンバスは工場への供給だけでなく、使用済みのカンバスの回収もしており、そのような取り組みがしやすい。既に一部で試験も始めており、今後はカートリッジフィルターなどでも検討する。

〈“森化”で魅せる環境配慮型/アップサイクルにも注力/シキボウ〉

 シキボウは、ユニチカトレーディング(UTC)とともに課題解決型の素材開発を強める。サステイナビリティーへの関心が高まる中、“森化(進化)”をテーマに両社が技術力を掛け合わせ、特色のある環境配慮型素材を充実させる。

 両社共通ブランドとして販売する生分解性ポリエステル繊維「ビオグランデ」は、微生物が存在する環境下で、二酸化炭素、水などの成分に分解。マイクロプラスチックの海洋環境汚染の軽減につながる。ユニフォームをはじめ、さまざまな用途へ開拓が進む。

 同素材ではカジュアルウエア用途を想定し、ポリエステル・レーヨン・綿混のニット糸「ビオグランデERC」も新内外綿と開発している。

 他にUTCの太陽光遮蔽(しゃへい)クーリング素材「サラクール」、吸水・拡散素材「ルミエース」、2層構造糸「パルパー」それぞれと、シキボウの校倉(あぜくら)造構造の高通気生地「アゼック」を組み合わせた素材も拡充。いずれもリサイクルポリエステルを使うことで機能性だけでなく環境配慮の面からも訴求できる。

 新内外綿と連携する繊維廃材のアップサイクルシステム「彩生」も広がりを見せる。音楽イベントでTシャツを回収し、翌年のイベントに使用するTシャツへアップサイクルするプロジェクトを支援するなど、少しずつ市場に浸透させつつある。

〈糸が紡ぐストーリー/“環境”語る素材充実/新内外綿〉

 “環境”や“SDGs”(持続可能な開発目標)がファッション産業のキーワードとなった今、これまで以上に大切にされるのが製品の“ストーリー”だ。

 シキボウグループで杢(もく)糸紡績の新内外綿(大阪市中央区)は、近年こうした市場のニーズに合った語れる素材を充実させている。デッドストックとなった生地や廃棄される繊維端材を糸にアップサイクルする「彩生」はその一つ。2020年に取引先への提案をスタートし、知名度が高まるほどに注文が増えたのはまさに時代に合致していたからこそ。ニーズの拡大に対応するため今夏、生産力を増強した。

 彩生だけではない。原料の出所を詳細にトレース(追跡)できる糸・生地も充実している。主力の綿糸では国際認証を取得したオーガニックコットンが人気だ。ロングセラーの「ボタニカルダイ」はオーガニックコットン使いで、さらに花や果実といった天然由来の色素で染めた優しい色彩が人気のヒット商材だ。

 これまで衣料繊維として使われず、捨てられてきた未利用繊維の活用にも取り組む。廃棄されてきた竹の間伐材を原料に作った竹糸や淀川水系で採取される葦(ヨシ)を原料とした葦糸、世界中でふんだんに採れるヘンプから作った糸も近年、衣料用で提案を強めている。こうした原料は糸にすると肌触りがチクチクするというデメリットもあったが今年、表面を滑らかにする改質処理を開発し、さまざまなアイテムに使いやすい商材となった。