特集 環境(2)/わが社の環境戦略・商品/東レ/帝人フロンティア/旭化成/クラレファスニング

2023年12月05日 (火曜日)

〈産資でもリサイクル推進/連携で「漁網to漁網」実現/東レ〉

 東レは産業資材分野でも繊維リサイクルの社会実装に向けた取り組みを進めている。その一環として日東製網、マルハニチログループの大洋エーアンドエフと連携し、使用済み漁網を回収し、再び漁網にリサイクルする取り組みを始めた。

 使用済みナイロン漁網は海水中のゴミや藻が付着しているため、リサイクル原料として使用すると紡糸時に強度や耐久性が低下する。このため漁網への再生は困難と考えられていた。これに対して東レは独自技術でバージン原料100%と同等の物性を持つ再生ナイロン原糸の開発に成功した。これを用いた漁網を日東製網が製造し、大洋エーアンドエフが運航する漁船で試験導入した。

 11月から大洋エーアンドエフが運航する漁船による沖合巻き網漁で試験操業し、性能を実証した。廃棄漁網を再生した漁網の市場適合性や妥当性を確認し、使用拡大に向けた検証を行った上で12月から販売する計画だ。産資分野でもポストコンシューマ型リサイクルの社会実装を目指す。

 ポストコンシューマ型リサイクル繊維として「&+」(アンドプラス)も採用拡大が続く。これまで使用済みペットボトルを原料とするポリエステル繊維での展開を進めてきたが、再生ナイロン繊維も含めたブランドにリブランディングした。また、バイオマス由来原料合繊「エコディア」も特殊糸や機能糸として採用が広がった。繊維による循環経済(サーキュラーエコノミー)の実現が加速する。

〈環境戦略軸に一丸で/目標達成に向け順調/帝人フロンティア〉

 「美しい環境と豊かな未来に貢献」するという企業理念を掲げる帝人フロンティア。それを具体的に進めるための環境戦略が「シンクエコ」だ。グループ一丸で環境配慮型の素材や製品を広く提案するなど、シンクエコで設定する目標も達成に向けて順調に進む。

 シンクエコでは「素材からエコにこだわろう。」(脱化石原料による省資源社会実現)、「きれいな空気と海を守ろう。」(環境負荷低減による自然との共存)、「省エネな毎日を送ろう。」(CO2排出量削減による低炭素社会実現)を重点目標とする。

 この中で2030年をターゲットに「リサイクル原料使用比率を50%以上、植物由来を10%以上に高める」「きれいな環境を守る商品100%」などを目指している。全体として当初計画通りに推移しているが、中には「ほぼ実現」した目標もある。

 ケミカルリサイクルでは、着色された繊維でも石油由来と同等の品質の原料に再生できる技術、ポリウレタン弾性繊維を取り除く異素材除去技術(脱色工程を兼ねることが可能)を開発した。「最終的には多様な複合素材に対応できるようにしたい」と強調する。

 そのほか、有害物質の不使用や海洋プラスチック問題への対応、社内のeラーニング実施にも力を入れている。消費者への啓発が課題とし、個社での取り組みや他社・団体との連携も強化する。

〈ロイカ事業でサステ報告書/マスバランス方式も導入/旭化成〉

 旭化成はスパンデックス「ロイカ」事業でサステイナブルと独自性を追求する。サステでは11月に「ロイカ・サステナビリティ・レポート2023」を発表(5月にベータ版を公表)。今後は毎年、同レポートを発表する計画だ。

 レポートではロイカが目指す持続可能性へのビジョン、各種環境対策、サステ素材の開発、取得する各認証などを紹介する。特に重視するのは温室効果ガス(GHG)の排出削減。13年比で60%以上(現段階で50%)の削減に取り組む。

 サステ素材の開発では廃棄された不要糸を原料に再利用する「ロイカEF」、生分解性を持つ「ロイカV550」を事業化するとともに、今年、バイオ原料と再生エネルギーにマスバランス方式を導入した。

 ロイカEFは現在、日本、タイ、台湾で生産。年間300トンの規模にある。再生原料比率58%を主体に、日本では細繊度糸用として38%品もそろえる。スポーツウエアやグローバルSPAなどで採用されており、日本品とタイ品は繊維製品安全性認証「エコテックススタンダード100クラス1」を取得する。

 ロイカV550は日本で生産する。制御化されたコンポスト条件下であれば24カ月経過時点で約50%分解する。天然繊維との複合を中心に年間500トン規模にあるが、今後はデニム向けの開拓に力を入れる。

〈RCS認証取得/再生原料で「マジックテープ」/クラレファスニング〉

 クラレグループのクラレファスニングは、面ファスナー「マジックテープ」で再生原料を使ったリサイクルタイプの提案を進めている。このほど国際的なリサイクル表示基準である「リサイクルド・クレーム・スタンダード」(RCS)認証も取得した。

 マジックテープリサイクルタイプは、原料の30%(製品重量比)に使用済みペットボトル由来のリサイクルポリエステル糸を使用したもの。面ファスナーで一般的に使用されているバックコート剤を使用しない独自製法で製造する。ウレタンが含まれるバックコート剤を使用しないためポリエステル100%で生産されており、マテリアルリサイクルも容易となる。

 製品に含まれる原材料に5%以上のリサイクル材料が含まれていることとトレーサビリティーが検証されるRCS認証を取得したことで、ユーザーが安心して採用できるようにした。特に海外では関心が高く、ユニフォーム用途などで引き合いが寄せられている。

 マジックテープリサイクルタイプは発表から1年を経て、海外の企業ユニフォームなどで採用が決まった。欧州ではリサイクル性に加えてバックコート剤を使用しないことでライフサイクルアセスメント(LCA)削減につながる点も評価が高い。11月にはドイツ・ミュンヘンで開催された国際スポーツ用品見本市「ISPO」にも出展した。まずは海外市場での採用拡大を狙う。