日系機械・部品メーカー/需要低迷で中国内販鈍化/アフターサービスや新規用途に重点
2023年12月04日 (月曜日)
日系機械・部品メーカーの中国内販は今年、需要低迷で鈍化している。中でも部品メーカーは、地場競合の攻勢にさらされ、苦しむ。各社はハイエンド市場の深耕のために、アフターサービスや新規用途提案に力を入れる。(岩下祐一)
11月19~23日に中国・上海で開かれた繊維機械の国際見本市「ITMAアジア+CITME2022」で、日系メーカー出展者からは中国内販の鈍化と、中国メーカーの攻勢を指摘する声が聞かれた。今年は、中国経済の低迷とロシアのウクライナ侵攻にイスラエルとハマスの衝突が重なり、経済環境は悪化している。繊維機械の需要も国内外ともに低迷する。
丸編み機大手の福原産業貿易の中国内販は、一部大手向けが伸びている以外は総じて鈍い。欧米市場が芳しくないことを反映し、「欧米ブランド向けを手掛ける顧客の設備投資意欲が低迷している」と福原正則社長は話す。
渦流精紡機「ボルテックス」と自動ワインダー(精紡糸の自動巻き上げ機)を手掛ける村田機械は、両機とも引き合いは続いているものの、「顧客は設備投資に慎重になっている。来年についても厳しい見方をするところが多い」(繊維機械事業部営業部第1課第1チームの岡村敏治課長)。
2年半前に開かれた前回展では、地場メーカーがキャッチアップを続ける中で、将来を危ぶむ日系出展者が目立ったが、部品メーカーを中心にそれが現実のものとなった。
織機用リードを手掛ける高山リードの内販は、地場メーカーが品質を高めていることが響き、苦しんでいる。2年前まで好調だったガラス繊維の織機用も追い上げに遭い、芳しくない。「この2年で地場メーカーの品質が驚くほど高まっている」と同社幹部は述べる。
地場メーカーの台頭を象徴するのが、デジタルプリンターだ。昇華型インクジェット(IJ)プリンターは7、8年前まで、日系メーカーの独壇場だったが、その後京セラやエプソンのヘッドを搭載する地場メーカーにシェアを奪われていった。今回展では、日系メーカーの多くが出展を取り止める一方、宏華(ホンフア)や弘美(ホンマー)などの地場メーカーが大型ブースを設け、存在感を示した。「宏華は価格競争力を武器に、ワールドワイドで商圏を拡大している」と日系プリンターメーカー幹部は指摘する。
地場メーカー台頭の背景には、中国で知的財産がいまだにおろそかにされ、コピーが横行していることもある。「(同展の)主催者の知的財産保護チームが、当社のブースに調査に訪れたが、もう遅い」と日系部品メーカー幹部はため息を漏らす。
価格競争で地場競合に太刀打ちできない日系メーカーは、ブラックボックスで新技術を守りながら新機種を出し続け、ハイエンド市場を死守し、深耕していく必要がある。ハイエンド市場の深耕のためには、アフターサービスや新規用途の提案も重要だ。
福原産業貿易は、中国4拠点(上海、山東省青島、広東省東莞、香港)を活用した手厚いアフターサービスの提供に力を入れている。
島精機製作所は「ホールガーメント」(WG)横編み機と、成型横編み機で生産する高品位のニットウエア市場の創造に注力する。
デジタルIJプリンターを展開するコニカミノルタは、顧客サポートに重点を置く。「中国でも顧客を丁寧にサポートし、生産性を上げる支援を行っている」(産業印刷事業部テキスタイル事業推進部稲田寛樹部長)。地道な取り組みで、シェア拡大を図っていく。