特集 抗ウイルス・清潔・衛生(2)/大和紡績/カケン/ダイワボウレーヨン/QTEC

2023年11月29日 (水曜日)

〈ふとん中わたに採用拡大/抗菌防臭・防ダニで多機能/大和紡績〉

 大和紡績は、抗菌防臭・防ダニ加工ポリエステルわた「ハルゼッケアルファ」がふとんの中わたとしてインテリア専門店、ホームセンターなどへ広がっている。これまで〝側〟(中わたを入れる前の半製品)として防ダニ加工「ハルゼッケ」を展開していたが、同様の機能を持った中わたも欲しいといった声を受け、昨年から販売を開始した。

 ハルゼッケアルファでは高い忌避効果によってダニを寄せ付けにくくするとともに、繊維上の細菌の増殖を抑制し防臭効果も発揮する。同素材50%混合のポリエステルを使った洗濯耐久性試験では、抗菌活性値では初期が5・0に対し、洗濯3回後は3・6。防ダニ性能の忌避率では初期が99%、洗濯3回後も99%と高い数値を維持する。

 抗菌防臭加工でSEKマーク、防ダニ加工でインテリアファブリックス性能評価協議会の認証を取得。ポリエステルでは再生PET繊維を使うことでエコマークの取得もできる。最近、温暖化によってダニの繁殖期間も長くなる傾向にある。気温20~30℃、湿度60~80%が繁殖の活発的な期間といわれ、ダニはアレルギー患者が増えている要因の一つとされている。防ダニに加え、抗菌防臭の機能もなかなか洗濯ができないふとんで大きな訴求ポイントになる。

 インドネシアの協力工場で安定して生産できる体制を整えており、今後は日本だけでなく中国など第三国への販路開拓も進める。

〈清潔・衛生に試験で貢献/防蚊などに問い合わせ増/カケン〉

 カケンテストセンター(カケン)は、東京事業所川口本所のバイオラボと大阪事業所の生物ラボで、抗ウイルスや抗菌、花粉由来タンパク関連など、清潔や衛生に関連するさまざまな試験・検査に対応している。その中で「問い合わせが増えている」(生物ラボ)とするのが防蚊試験だ。

 「JIS L1950 生地の防蚊性試験方法」は2018年に制定され、22年にISO化された。機能や用途に応じて誘引吸血装置法と強制接触法の二つの試験方法が規定される。このうち吸血を防ぐ衣料品に適用するのが誘引吸血装置法で、強制接触法は居住空間への侵入を防ぐアイテムに適用する。

 新型コロナウイルス禍でアウトドアの人気が高まり、現在も人気が続いていることから問い合わせが増えていると分析する。生物ラボでは、アウトドア分野に加えて、農業や林業をはじめとする屋外作業のユニフォームでも需要があるとして積極的に取り込む。海外のニーズも探索する。

 花粉やダニ由来タンパク質測定、抗バイオフィルム試験なども国際標準化されており、注目度は高い。花粉やダニ由来タンパク質測定(ISO4333)は、花粉やダニに由来するタンパク質を低減する度合いを測定する。抗バイオフィルム試験(ISO4768)はプラスチック製品などへのバイオフィルムの付きにくさを評価する。

 そのほか、光触媒では、従来の抗菌性に加え、抗ウイルス性への対応を検討する。

〈消臭や防虫機能に注目/先染め製品にも使いやすい/ダイワボウレーヨン〉

 ダイワボウレーヨンは、多彩な機能レーヨンを商品化しているが、ここに来て強力消臭機能レーヨンや防虫機能レーヨンへの引き合いが増加している。難燃レーヨンに衛生関連の機能を追加付与する開発にも取り組む。

 同社は抗菌防臭機能レーヨン「バクトフリー」や抗ウイルス機能レーヨン「パラモスプラス」など機能レーヨンを多彩に用意する。いずれも原綿段階で機能が付与されているため、タオルや靴下など先染め製品でも使いやすいのが特徴だ。

 強力消臭機能レーヨンも開発し、現在はインナーやユニフォーム用途でサンプル提案を進めている。機能発現速度、耐久性、消臭力いずれでも高い性能を持つのが特徴だ。

 防虫機能レーヨン「バグノン」も海外を中心に引き合いが増加している。レーヨンに練り込む機能剤は香料として一般的に使用されているケイ皮酸誘導体を応用しているため安全性も高い。東南アジアなどでは蚊が媒介する感染症も多いため、防虫機能への関心は高い。

 新たな開発も進む。現在、同社の難燃レーヨンに抗菌防臭や消臭など衛生関連の機能性を付与したタイプの開発に取り組む。こちらはユニフォーム分野がターゲット。また、抗ウイルス機能レーヨンは洗濯耐久性を一段と高めることが次の開発テーマとなる。

 引き続き機能レーヨンを強みに清潔・衛生関連でもレーヨンの需要拡大に取り組む。

〈選ばれる存在へ成長を/聞き取りで顧客の要望把握/QTEC〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)で清潔や衛生に関連する試験・検査を行うのが、西日本事業所神戸試験センターだ。コミュニケーションを密にして顧客が求めているモノを把握し、そこにQTECしかできないことを掛け合わせる。基礎研究にも力を入れ、「顧客から選ばれる存在になる」と強調する。

 抗ウイルス性や抗菌性、抗カビ、花粉・ダニ由来タンパク質測定、抗バイオフィルム試験など、清潔や衛生に貢献するさまざまな試験・検査に対応している。清潔や衛生に対する意識は高まっているが、同時に試験依頼獲得の競争も厳しさを増す。QTECにしかできないことを示し、存在感の発揮を目指す。

 新試験開発や抗菌・抗ウイルス試験での対応菌種・ウイルスの拡充に加えて注力しているのが、顧客とのコミュニケーション。繊維企業や薬剤メーカー、製薬企業などとの接点を増やし、「意識的に聞き取りを行い、何を求め、何をしようとしているのかをつかむ」と言う。

 その上で顧客が困っている事項とやりたい事項を分けて考え、QTECにしかできないことを掛け合わせて提案する。顧客の要望に的確に対応するには基礎研究の強化も重要とし、「検査機関と大学の研究室の中間のような存在を目指したい。論文なども積極的に出していく」とした。

 人材教育が不可欠になるとして、内部でのセミナーはもちろん、外部(企業など)の仕事を見て、学ぶ機会を充実する。