繊維ニュース

繊維街道 立志編/ウィファブリック 代表取締役 福屋 剛 氏(中)/アパレル廃棄問題に挑む

2023年11月29日 (水曜日)

  ――2005年、関西外大を卒業後、福屋は瀧定大阪(現・スタイレム瀧定大阪〈大阪市浪速区〉)に入社する。

 ファッションには中学、高校、大学生までずっと関心がありましたから、そこに関わる仕事をしたいと繊維専門商社に入りました。ライフスタイル部という部署で自社オリジナル製品の企画から生産、販売まで一貫した業務に携わりました。インテリア、パジャマ、ルームウエア、バスタオル、ファッション雑貨などを手掛けました。中国の製造業者と日本の小売業とをつなぐ仕事です。海外出張も多く充実した日々を過ごしました。

 12年のある日のことです。ふとつけていたテレビで衣料の廃棄問題について知りました。年間800万トンという繊維製品が廃棄されているというのです。気になって、調べてみると、とても大きな社会問題になっていることが分かってきました。

 さらに、大量廃棄問題や繊維業界がもたらす環境問題に、実は自分自身も仕事の中で知らず知らずのうちに加担していることに気付くようになります。それがきっかけとなり繊維業界の廃棄ロスをなくすことを事業計画として手書きでまとめ、賛同者を募る活動を始めました。

  ――15年春、会社を辞め、共感が得られたITエンジニア、デザイナーと3人で、ウィファブリックの前身となる会社を立ち上げる。

 アパレル業界の廃棄問題を解決するために、残った生地や糸、製品を回収し、私たちで改めて魅力あるデザインにして売るという事業を始めました。商社時代に貯めた1千万円は起業1年目でなくなる勢いで一時期1日300円で暮らしていましたね。

 それでもアパレル業界の廃棄ロス削減を実現したいという思いと、米国でのボランティアで挫折したわだかまりを自らのビジネスで克服したいという思いがあったから踏ん張れたんだと思います。私たちの廃棄削減につながる製品ブランドは徐々にメディアに取り上げられ、広く知られるようになっていきます。ところが今度は、それを知った企業から売れ残った糸や生地、製品を買い取ってほしいという要望が殺到してきたんです。

 資金力はそんなにありませんから、全てを買うことなんてできません。解決したいはずの廃棄問題に資金繰りの都合で向き合うことができない状況に罪悪感が湧きました。

  ――ちょうどこの頃、海外で、世界中の別荘を低価格で貸し出すサービスや自動車のライドシェアサービスがビジネスとして急成長していることを知る。

 これがヒントとなりました。自分たちが間に入って、廃棄される商品を欲しい人に届けられるオンライン上の仕組み、プラットフォームを作ればいいんじゃないかと。売り手と買い手をネット上でつなぐ“場”を作ればビジネスになると確信しました。それが今のオンラインショッピングモール「スマセル」へとつながります。