大和紡績 独立で成長へ迅速、果断に
2023年11月27日 (月曜日)
大和紡績は、事業投資会社のアスパラントグループ(東京都港区)の支援を受け、ダイワボウホールディングス(HD)から独立する。大和紡績によると、独立によって繊維事業の成長に向け「迅速、果断に物事を進める体質になる」として、数年後にはIPO(新規株式上場)も目指す(一部既報)。
ダイワボウHDは22日、繊維事業の中核をなす大和紡績の発行済み株式85%をアスパラントグループの特別目的会社(SPC)に譲渡すると発表。譲渡価格は95億4千万円。株式譲渡日は来年1月18日を予定する。来期(2025年3月期)からの次期中期経営計画で、重点検討事項として事業ポートフォリオを整理する中、繊維事業の「企業価値最大化に向けた戦略的選択肢としてグループからの独立化」を実現した。
大和紡績によると独立の理由として、ダイワボウHDの売上高、利益の9割がITインフラ流通事業を占め、繊維事業の比率が低かった点を挙げる。卸売業と製造業という異なる業種の中にいるよりも、独立し製造業としての意思決定をスムーズにする方が「成長できる」と両社で判断した。
経営指標も異なり、「会社の構造自体が全然違う」「工場の遊休地などレガシーコストがある」ことから、機能性素材の研究開発や生産設備への投資などに対し判断しづらい面も背景にあった。旧大和紡績の設立から80周年を超え、2041年には100周年を迎える中、「繊維でずっと勝負をしていく」企業としての道を選択した。
譲渡先としては複数の候補先と協議を重ねた上で、「繊維は成熟産業」という理解とともに、「パートナーとして伴走してくれる」という観点からアスパラントグループを選定。レーヨンや合繊といった「ファイバー起点の繊維事業にフォーカスしている」ことに加え、高付加価値素材を中心に「将来の開発余地や展開性に非常に関心が高く、可能性を感じてもらった」ことが決め手になった。
「救済出資ではなく、成長のための協力」との認識で、経営体制や従業員の処遇などで変更はなく、リストラは「全くない」。今期(24年3月期)で最終年度を迎える中計の方針については基本的に踏襲し、「バリューアップするために、設備投資も積極的にする」。アスパラントグループとの共通目標として数年後にはIPOも想定し、「なるべく早い段階」に次期中計の発表を想定する。
ダイワボウHDは当面、大和紡績の15%の株式を保有することで既存取引先や従業員の不安を払しょくし、協力関係を継続。24年3月期連結決算において関係会社株式売却損として約170億円の特別損失を計上する見込みだが、「覚悟を決めて旅立たせてもらった」形となる。
大和紡績では現状、不採算部分がなく、今後収益をどのように伸ばすかが課題。研究開発と設備投資を続け、「伸び代を拡大する」方針で、独立により成長に向けたアクセルをさらに踏み込む。