別冊ユニフォーム総合(21)/素材・副資材/サステを新たな原動力に/東レ/インビスタジャパン/東洋紡せんい/帝人フロンティア
2023年11月24日 (金曜日)
ユニフォーム業界では、SDGs(持続可能な開発目標)やサステイナビリティーへの配慮が必須になってきた。素材・副資材メーカーも各社の強みを生かした取り組みでユニフォームメーカーを素材から支援する。サステへの取り組みは、インフレの加速を原因とした利益率低下に揺れるユニフォーム業界をけん引する、新たな原動力となりそうだ。
〈東レ/充実する環境配慮素材〉
東レはユニフォーム素材でも環境配慮型素材を充実させている。快適性や高耐久・高強力といった機能面でも用途を超えた素材提案に取り組む。
環境配慮型素材としてバイオマス原料によるポリエステル繊維とナイロン繊維「エコディア」を重点提案する。エコディアによるストレッチ機能ポリエステル織・編み物「ライトフィックス」や吸汗速乾・防透ナイロン織・編み物「スプリンジー」、高通気麻調ポリエステル織・編み物「シャミラン」など機能素材も実現。再生ポリエステル繊維、再生ナイロン繊維「&+」(アンドプラス)も採用が拡大している。
快適性を重視した商品として、ワークウエアで根強い人気がある裏綿素材にライトフィックスを導入することでストレッチ性を付与したタイプも開発した。裏綿素材はポリエステル・綿混素材が一般的だが、ポリエステル100%ストレッチタイプも用意。独自技術で生地に通気孔を発現させたポリエステル織物「ドットエア」など高通気素材、遮熱・紫外線遮蔽(しゃへい)機能織・編み物「ボディシェルEX」など防透素材もある。
そのほか、高耐久・高強力素材としてかばん地などで実績のある高強力ナイロン織物をユニフォーム用途にも提案。ストレッチ性があり後染めにも対応しながら難燃素材の国際規格に対応した難燃織・編み物「ナフレム」を重点提案する。
〈インビスタジャパン/原着糸で環境負荷低減を訴求〉
インビスタジャパンは、ナイロン66の原着糸「コーデュラ トゥルーロック ファブリック」の販売拡大に取り組む。耐摩耗性などコーデュラ本来の強度に加え、耐UV退色や耐変色性などが特徴。従来に比べ、製造工程に必要な水やエネルギー、発生するCO2を削減し、環境負荷低減の面からも訴求する。
生地での染色工程が不要なことから、従来の染色工程に比べ、25万メートルごとに46万7千リットル以上の水、40万8千メガジュール以上のエネルギーを節約できると言う。CO2も大幅に削減でき、環境負荷の低減に貢献できる。
既に軍事向けでバッグやブーツといったギア関連、レインフォースメント(補強材)などに使われていた。改めてリブランディングし、一般用途のかばんや靴、キャンピング用品、ワークウエアのレインフォースメントなどの市場を狙う。
556デシテックス、1111デシテックスを中心に展開し、7色をそろえる。今後は556デシテックス以下の細い糸や、赤や青といった色の販売も検討。将来的には「既存の3分の1を原着糸に置き換える」ことも視野に入れる。
ドイツで開かれた労働安全分野の見本市「A+A2023 国際労働安全機材・技術展」へも出展し、同素材を中心にアピール。欧州の著名なワークウエアブランドにも既に採用が決まりつつあるという。
〈東洋紡せんい/独自性高め的確に用途捉える〉
東洋紡せんいのユニフォーム事業は上半期(4~9月)、前年同期比10%超の増収だった。販売量も5%増と堅調。その堅調な動きを支えているのが、独自性を高めてきた差別化素材だ。
新型コロナウイルス禍の行動制限の解除によって需要が拡大している飲食などサービス向けが堅調で、中でも高機能ニットシャツ地「Zシャツ」「Eシャツ」の販売が好調。白衣向けではUVカットや透け防止機能のY字断面フルダルポリエステル糸使いの「ダルファインテトラ」、吸水速乾性が高い扁平(へんぺい)ポリエステル使いの2層構造糸「ドライキューブ」のダブルクロスなど、特殊なニット地の受注が増えている。
高弾性糸と高捲縮(けんしゅく)糸を組み合わせ、高密度とストレッチ性を実現した合繊長繊維編み地「スクラムテック」ではポロシャツだけでなく、ワーキングのセットアップ企画に採用される事例も出てきた。
高捲縮ポリエステル糸使いの2ウエーストレッチ生地「オールフレックス」では、目付や組織を変えるなど、織物や編み物双方で生地の提案が可能。防透け性、ストレッチ性に優れるとともに、工業洗濯にも対応できる。
環境配慮に対するニーズも捉え、自社グループ内の縫製工場で発生する端材をマテリアルリサイクルする「T2T」や、生分解性ポリエステル繊維「アースケア」の抗ピル短繊維なども訴求する。
〈帝人フロンティア/低通気とストレッチ両立〉
帝人フロンティアは、ユニフォーム素材販売で高付加価値品のウエートを高めるポートフォリオ改革に取り組む。その一環として新たに軽量・保温・ストレッチ織物「エルゴライトUS」や防透・紫外線(UV)カット機能織・編み物「ウェーブロンUP」などを市場投入する。
エルゴライトUSは、表側を通気性の低い高密度構造、裏側は保温性を高めるかさ高構造にしたポリエステル長繊維高密度2重構造織物。複合繊維や高捲縮仮撚り糸と染色加工時の工夫を合わせることで高いストレッチ性も併せ持つ。
通常、通気性を抑えるために高密度にするとストレッチ性が低下し、ストレッチ性を高めるために密度を下げると通気度が高まる。このため低通気性と高ストレッチ性を両立するのは難しい。エルゴライトUSは特殊複合繊維や糸加工と特殊織物構造によって相反する機能を両立することに成功した。冬の屋外作業時にも使用できるワークウエア用途などに提案する。
ウェーブロンUPは防透・紫外線(UV)カット機能ポリエステル長繊維織・編み物。高濃度フルダル特殊原糸を特殊仮撚り加工し、2重織やバックハーフなど特殊織・編み構造と組み合わせることで高い防透性とUVカット機能を実現した。こちらは白衣やスクールシャツといった用途を中心に提案する。