繊維ニュース

綿紡績大手・繊維事業 中計達成に“黄信号”

2023年11月15日 (水曜日)

 上半期(4~9月)に軒並み利益面で苦戦を強いられた綿紡績大手の繊維事業は、中期経営計画での目標達成に対し黄信号がともり始めた。事業環境の好転がなかなか見込めない中、一部の企業では通期の計画を修正。下半期(2023年10月~24年3月)に向けて巻き返しながら、中計で目標とする数値に近付ける。

 クラボウは通期計画を売上高530億円(期初520億円)、営業利益1億円(同4億円)に修正した。上半期は計画が上振れたものの、下半期は「不透明感が漂う」(北畠篤取締役)と指摘。海外関連の事業回復が遅れていることに加え、残暑で秋物の販売が低調なことも懸念。「24春夏でほぼ在庫調整が終わり、24秋冬で(受注が)戻ってくるとみていたが、取引先によっては調整が続く」との情報もあり「慎重な数字」となった。

 シキボウも通期計画を売上高203億円(期初207億円)、営業損失3億円(同1億5千万円)と下方修正した。ユニフォーム地の値上げについて希望の値上げ幅に対し「おおむね5~8割程度は了解してもらった」(加藤守取締役)状況。その効果については早くても下半期から、遅くても来上半期とみており、「ユニフォームの損益は改善方向に向かう」との見方を示す。

 ダイワボウホールディングス(HD)の繊維事業は上半期、合繊・レーヨン部門の米国向け建材や、産業資材部門の電子部品向けカートリッジフィルターが低調で、「計画に対し乖離(かいり)が見られた」。下半期は回復を見込むものの、繊維事業の計画を売上高612億円(期初636億円)、営業利益16億円(同29億5500万円)に下方修正した。

 富士紡HDの生活衣料事業は上半期、減収減益だったものの、インナーブランド「BVD」を軸に、製品事業でデジタル技術を生かした事業改革を推進。EC(電子商取引)型ビジネスモデルへの転換を図る。売上高は期初計画と同じ70億円のままだが、営業利益では9億円(期初8億円)と上方修正し、中計の目標以上に高収益化を目指す。

 日東紡は通期計画を売上高24億円(期初25億円)とし、営業利益は1億円のままとした。

 富士紡HD以外は中計の目標との乖離が目立ってきた。

 クラボウとシキボウは25年3月期を最終年度とする3カ年の中計の折り返し地点となり、下半期の業績が目標達成の鍵を握る。引き続きユニフォーム地を中心に価格改定を進めるとともに、グループ内外の連携強化による海外での販売拡大や、高付加価値素材の拡販など加速させながら収益改善に努める。