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綿紡績大手 4~9月期/目立つ収益悪化/価格転嫁追い付かず

2023年11月14日 (火曜日)

 綿紡績大手の4~9月期連結決算が出そろった。繊維事業はエネルギー価格の高止まりに加え、原綿高など前期からのコストアップ分の価格転嫁が追い付かず、収益の悪化が目立った。

 繊維事業ではシキボウや日東紡が増収だった一方で、ダイワボウホールディングス(HD)やクラボウ、富士紡HDが減収だった。日清紡HDは1~6月期まで増収だったが、1~9月期では前年同期比0・5%の微減収に転じた。

 シキボウは、円安で勢いづく中東民族衣装向け織物輸出や、グループ紡績会社である新内外綿の別注糸販売が堅調で収益に貢献した。ユニフォーム地の販売は増収だったものの、価格転嫁が進まず苦戦。寝装分野やインドネシア紡織子会社メルテックスの原糸販売などの苦戦も響き、営業損益は赤字幅の縮小にとどまった。

 日東紡は芯地販売が外出機会の増加による需要の戻りで堅調。コストアップの影響で減益を強いられたものの、営業損益は黒字を確保した。

 ダイワボウHDは、建設シートやベルト関連の販売を伸ばした産業資材部門と、値上げの浸透で採算が改善した衣料製品部門で増益を確保。合繊・レーヨン部門は機能性レーヨンの販売が好調だったが、米国向け建材の需要回復が鈍いことや原燃料価格の高止まりで減収減益となり、繊維事業全体の収益にも響いた。

 クラボウは糸や製品で在庫調整を受け減収となり、営業損益が赤字になった。しかし、カジュアル向けテキスタイル販売の拡大や商事会社のクラボウインターナショナルが増収増益になるなど、計画比では上回った。ユニフォーム地販売は別注向けが増えた一方で、カタログ定番商品向けが低調。販売数量も減少した。

 富士紡HDの生活衣料事業は、繊維素材の苦戦で減収減益。ただ、インナーブランド「BVD」を中心とした繊維製品は、店頭販売でより収益性の高い製品に絞り込んだことで堅調。ネット販売では多様化する顧客ニーズや市場動向に応じたデジタルマーケティングの強化で伸ばした。

 全体ではダイワボウHDがITインフラ流通事業の好調によって上半期で過去2番目の売上高、営業利益となり中間で32円に増配(前年同期は30円)。クラボウも環境メカトロニクス事業で半導体洗浄装置の大型案件の前倒し受注があるなど売上高、各利益とも期初予想を上回わり、中間、期末でそれぞれ5円増配し40円、年間で合計80円とした。