特集 北陸ヤーンフェア2023(8)/出展者の見どころ/シモムラ/タロダ/ジャテック/福井県撚糸工業組合

2023年11月07日 (火曜日)

〈再生糸の見本帳拡充/撥水糸など機能素材も/シモムラ〉

 シモムラは、今回展でサステイナブル糸の先染め見本帳を拡充するほか、撥水(はっすい)糸やストレッチ織物など機能素材の提案も強化する。

 新たな取り組みでは、帝人フロンティアの再生ポリエステル「エコペット」を使った先染め糸見本帳を一新し、今回展で紹介する。エコペットの先染め糸見本帳は現在88色展開だが、色数を大幅に増やす。伊藤忠商事の再生ポリエステル「レニュー」の見本帳も始め、今回展で披露する予定。長繊維で10~20色展開を予定する。

 機能性を付与した糸の品ぞろえも拡充しており、今回展では非フッ素系加工剤を使った撥水糸を紹介する。ゴルフ用などで要望が増えており、横編み用の先染め糸のほか、後染めに対応する商品もそろえる。

 糸加工で高い伸縮性を実現したストレッチ織物も紹介する。生地幅を維持しながら1・5~2倍の長さに伸長し、回復率も高い。デニム用が中心だが、新しい用途も探っていく。

 近年はグループ連携による開発も強化している。色糸見本帳に掲載する商品の60%は園田産業で染めており、今回展で紹介する撥水糸も手掛ける。前期(2023年10月期)は、22年6月から稼働したむつ工場(青森県むつ市)が増収要因の一つとなったが、旧北陸化繊の工場を譲受する形で設立した押水工場で開発し、むつ工場で量産する取り組みが進んでいる。糸加工と製織のソフィーナは、今年にレピア織機を増設して生産能力を高めた。広幅織機の導入により、ストレッチ品の展開を強化していく。

〈外観・風合いで差別化/割繊糸も注目高める/タロダ〉

 タロダはリサイクルをベースに機能や感性で差別化した糸の提案に力を入れる。近年は特に表面変化のある糸開発を強化しており、今回展では天然繊維調のタスラン糸や割繊糸の見本帳などを紹介する。

 リサイクルポリエステルを中心にサステイナブル糸の見本帳を幅広く展開している。ポリエステル先染め糸では、マテリアルリサイクルの「エコッタ」、リサイクルをベースにストレッチ性を付与した「エコッタα」、伊藤忠商事の「レニュー」や蝶理の「エコブルー」との協業品などをそろえ、マテリアルリサイクルからケミカルリサイクルまで幅広く展開する。

 「リサイクルがある程度浸透してきた」とみる中、同社では現在サステをベースにプラスαを加えた提案に力を入れている。特に感性や風合いで差別化した加工糸の開発に力を入れており、今回展では天然繊維調の外観を持つ商品などを紹介する。

 先染め糸を備蓄して見本帳展開する割繊糸も紹介する。靴下や手袋などの用途に展開するが、ナノファイバーのように強すぎず、適度なグリップ性が付与できるなどの特徴が評価されている。

 同社はかほく産地の細幅織物向けを主力とするが、北陸ヤーンフェアや愛知県一宮市で開催されるジャパンヤーンフェアに継続出展して展開領域を広げている。

〈生分解性合繊糸に広がり/新混繊機で開発強化/ジャテック〉

 ジャテックは今回展で、合繊に生分解性を付与できる「CiCLO」(シクロ)の糸や、グループ会社のケーエヌテーで開発を強化している混繊糸などを紹介する。

 シクロは、米国のイントゥリンシク・アドバンスド・マテリアルズ(以下IAM)が展開する添加剤で、合繊糸に生分解性を付与することができる。ジャテックは2年前から台湾の合繊メーカーと組んで日本での提案を始めており、さまざまな用途で注目を高めている。足元ではレディースやスポーツで開発が進んでいるほか、副資材などでも引き合いが増えた。今後は寝装やインテリアなどへの提案も強める。

 幅広い糸種をそろえることが強みの一つ。ポリエステル長繊維はまずDTYから展開を始めたが、現在はなま糸やPOYもそろえる。ポリエステルは長繊維だけでなくモノフィラメントや短繊維もそろえ、ナイロン糸も展開している。

 シクロを付与したポリエステル糸の生分解性は、ウールなどと同水準で、土壌では1170日で91%(シクロ処理なしの糸は3%)、海水では1362日で94%(同5%)が分解されることを第三者機関によって証明している(米国規格のASTM)。

 シクロを添加しても耐久性や染色性などに影響はなく、通常糸と同様に扱える。リサイクル合繊糸に生分解性を付与することもできる。

 シクロのほか、ケーエヌテーの混繊糸も紹介する。今年1月に新しい混繊機を導入して開発を強化し、複合のバリエーションが広がった。ブースでは新しい設備による開発糸を紹介するとともに、顧客の要望に沿う糸加工を提案する。

〈技術力生かした糸訴求/パートナーシップ築く/福井県撚糸工業組合〉

 2019年の福井県開催以来、出展を続ける福井県撚糸工業組合は今回が5回目となる。出展を通じて先々の成果に結び付けたい考えだ。

 同組合は現在、天然繊維・化学繊維の撚糸(かさ高加工糸を含む)を行う43社が加盟し、撚糸に関する情報収集・提供、人材育成、新製品・新技術の開発、需要開拓、金融・経営に関する指導援助などを行う。

 糸に撚りを掛けることは生地の風合いや肌触りを変え、丈夫さも生み出すなど、生地作りにおいて重要な意味を持つ。その撚糸など糸加工を行う福井県の企業が加盟するのが同組合になる。

 今回展を通じて「最新の技術と革新的なアイデアを共有し、新たなパートナーシップを築くことで撚糸の進化をけん引していきたい」とする。

 ブースでは組合員企業各社の技術力を生かした加工を施した、さまざまな糸を提案するほか、吸水・速乾ポリエステル100%糸による「サラサラクッション」も展示する。