特集 北陸ヤーンフェア2023(6)/出展者の見どころ/トスコ/三菱ガス化学/STX/ミマス
2023年11月07日 (火曜日)
〈北陸産地で麻の浸透狙う/ヘンプ・綿混糸訴求/トスコ〉
5回目の出展を数えるトスコは、定番商品をそろえることで北陸産地への麻の浸透を図る。それらの中でも特に力を入れるのがヘンプ(大麻)だ。今回はヘンプの落ちわたと綿の混紡糸などを用意する。抗菌性を持つ和紙糸「Cu―TOPアオ」(シーユートップアオ)も提案する。
北陸産地は合繊を主体とし、綿調や麻調のポリエステルも進化を続け、リサイクル糸なども充実している。その中で同社素材が存在を示すには「天然繊維であることの訴求が重要」とし、今回展ではヘンプの打ち出しがその一番手と捉える。
ヘンプは成長が早く、害虫にも強いため農薬・化学肥料がほぼ不用。茎は繊維、繊維を取り出した残りは建材、種子は食品・オイルなどさまざまな用途で用いられる。繊維は特有の硬さがあり、肌離れや清涼感が特徴。吸水発散性にも優れる。
混紡糸には、ヘンプ100%を紡績する際に発生する落ちわた(副産物)を利用する。原料を中国から仕入れ、日本で精練するため白度が高く、晒工程が容易。糸種はヘンプ30%・綿70%混で、綿番の40番、30番、20番、6番をそろえる。
シーユートップアオは、紙糸に銅イオンで抗ウイルスや抗菌、消臭などの機能を付与した素材。医療・介護やスポーツ分野、インテリア、インナーなど、幅広い用途に提案する。
〈資材用途へ提案強める/モノフィラなど紹介/三菱ガス化学〉
三菱ガス化学は、独自のナイロン樹脂「エモクシー」とバイオベースのポリアミド「レクスター」を出品する。今回展では特に産業資材用途での訴求を強める。
エモクシーは低吸水性、高強力、耐薬品性などが特徴の独自ナイロン樹脂。吸水率は2%以下で、一定の伸度があって強度が高いため独特のハリ感がある生地を作ることができる。
北陸ヤーンフェアへの出展を重ねる中で、繊維では特に資材での開発が進んできた。低吸水性を生かす形で水産資材用にモノフィラメントが採用されたほか、フィルターなどでの取り組みも始まっている。フッ素フリーへの要望が高まるアウトドア用途も可能性があるとみる。
今回展ではマルチフィラメントや紡績糸、モノフィラメントを生地サンプルも用意して紹介する。資材用では織物だけでなく、ダブルラッセルや不織布での試作も進めている。ダブルラッセルはハリコシを生かして寝具のマットレスに提案するもので、ナイロン66使いよりへたりにくいと言う。
繊維以外での開発も進んでおり、本格展開に向けて量産のめどを付けた。繊維では紡糸性の向上などさらなる開発も進めていく。
バイオベースナイロンのレクスターは、サステイナビリティーの流れも追い風となって注目を高めている。33デシテックス糸などを展開してきたが、今回展ではDTYの織物なども紹介する。
〈機能性紡績糸をメインに/知名度高め商機狙う/STX〉
蝶理グループのSTX(東京都千代田区)はサステイナブルコットンやセルロース繊維による紡績糸、ポリエステルと綿、レーヨン短繊維との混紡糸、ポリエステル100%紡績糸など約150品種を備蓄販売する。
綿糸に加えて、各種短繊維を使用した機能紡績糸の開発にも注力しており、さまざまなニーズに対応した幅広い提案を行う。
今回展では「ドライマスター」「スパンラボ」をメインに打ち出す。
再生ポリエステル繊維を使用したドライマスターではフルダルわたと黒原着わたを使用した2タイプを訴求する。フルダルわた100%使いの紡績糸は吸水速乾性、UVカット性、抗ピル性に加え、コットンライクな風合いを持つ。
黒原着わた使いは黒、グレー杢(もく)をラインアップする。吸水速乾性、抗ピル性に加え、原着使いで染色不要である点を訴求する。
スパンラボは機能性短繊維の総称。機能性短繊維に特化することから、ラボとネーミングする。今回展では親会社である蝶理と共同開発中のスパンラボ糸を使ったTシャツを展示し「素材そのものを体感できるようにする」と言う。
同社では「北陸産地ではまだまだ知名度が低いため、出展によって認知度を高め、新しいビジネスにつなげたい」としている。
〈綿ヘンプ混糸に重点/麻混糸並ぶ素材として/ミマス〉
意匠糸など特殊糸製造が主力のミマス(三重県玉城町)は、5回目の出展となる今回展で、綿ヘンプ混糸の提案に力を入れる。
混率は綿45%・ヘンプ55%と綿70%・ヘンプ30%の2タイプ。それぞれ10・20番手、20・30番手をそろえ、綿麻混糸に並ぶ素材として位置付ける。
ヘンプ絡みの紡績糸への引き合いが活発化しており、同社では綿混糸だけでなく、ダイワボウレーヨンの海洋生分解性レーヨン短繊維「e:CORONA(エコロナ)」との混紡糸、帝人フロンティアのペットボトル再生繊維「エコペット」との混紡糸もラインアップする。さらにヘンプ100%紡績糸も仕入れで品ぞろえし、その他の紡績糸同様、少量から備蓄販売する。
同社の北陸産地向け紡績糸販売は、カーテン向けを主力に、カチオン可染ポリエステル短繊維を混紡したデニム調ポリエステル紡績糸や、スラブ糸による天然繊維ライクなポリエステル紡績糸、さらに遮熱性を持つポリエステル紡績糸などを手掛ける。
今回展では各種ヘンプ混紡糸のほか、天然繊維調ポリエステル紡績糸なども紹介する。
同社は現在、5792錘の紡績設備を持ち、天然繊維からセルロース繊維、合繊まで幅広い紡績糸を製造する。2024年1月には紡績設備を1台増設する。