特集 北陸ヤーンフェア2023(4)/出展者の見どころ/東洋紡せんい/蝶理/シキボウ/新内外綿

2023年11月07日 (火曜日)

〈再生ナイロン拡充/高品位リサイクル綿糸訴求/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいは、原糸販売グループ(G)、インナーG、御幸毛織が共同出展し、綿や合繊、ウールまで幅広く独自糸を紹介する。

 インナーGは、経編み向けのビームサプライシステム「サイプス」やリサイクルナイロン「ループロン」を紹介する。ループロンは、GRS認証を取得するマテリアルリサイクルに加え、ケミカルリサイクルも始まった。ケミカルリサイクル糸は食品衛生法に対応し、オーラルケア商品用での訴求も強める。品種も広がってブライト糸なども可能となり、今回展では22T(デシテックス)・48F(フィラメント)や44T・96Fなどのハイマルチ糸も紹介する。

 原糸販売Gは、綿を中心に独自の紡績糸を紹介する。新商品では、高品質なリサイクル綿糸「さいくるこっと」を紹介する。回収した繊維を従来の反毛ではなく、新しい手法でカットするように処理するため、繊維を傷つけず高品位のリサイクル綿糸が生産できる。リサイクル綿を50%使用することができ、80番手など細番手も可能。GRS認証を取得し、トレーサビリティーも確保している。

 独自の純綿糸「プライムコット」も提案する。これまで培ってきた原料や紡績法などのノウハウを生かし、グローバルに高品位の綿糸を生産していく。シルケットのような光沢や滑らかで柔らかな風合いを実現し、20~80番手をそろえる。

 御幸毛織は2年前から参加し、ウールの長短複合糸「マナード」を訴求してきた。「スポーツ用途でウールのニーズが高まっている」という中、今回はウールの混率を抑えたポリエステル高効率混のマナードを紹介する。これまでポリエステルは短繊維で使っていたが、今回は長繊維のリサイクル糸にして脱落繊維のない環境対応商品として訴求する。ポリエステルの混率を高めることでイージーケア性が高まり、長繊維なのでピリングを抑える。

 環境配慮型のマナードも拡充する。伊藤忠商事の再生ポリエステル「レニュー」を使った「マナードCP」やマナードと和紙糸を撚糸した商品などを紹介する。

〈紡績糸の新ブランド/循環型リサイクル進化/蝶理〉

 蝶理は、独自の差別化糸として機能紡績糸の新ブランド「SPUNLAB」(スパンラボ)や循環型リサイクル「B―LOOP」(ビーループ)などを紹介する。

 同社は産地が目指す高付加価値化の要望に応えるため、差別化糸の品ぞろえを強化している。足元では再生ポリエステル「エコブルー」、高伸縮糸「テックスブリッド」、ピン仮撚り糸「SPX」などが堅調で、差別化糸比率は40%に高まった。

 差別化糸は長繊維が中心だが、新たに紡績糸の新ブランドとしてスパンラボの本格展開を始めた。特殊なポリエステル短繊維を使った紡績糸をそろえ、STXと共同展開する。両社が持つグローバルな生産ネットワークを活用し、顧客の要望に応じてさまざまな紡績法や混率の糸を開発していく。まずは吸水速乾やバルキー性の高いポリエステル短繊維を使った糸からスタートし、糸種を広げていく。

 サステイナブル糸の品ぞろえをさらに拡充する。ポリエステルではペットボトルリサイクルのエコブルーに加え、循環型リサイクルのビーループにも力を入れる。

 ビーループは、北陸産地から回収した繊維廃棄物を反毛し、自動車の吸音材や河川補強材などに使う取り組みが順調に拡大している。今後は再びポリエステル長繊維にしての展開も始める考えで、来期からの本格展開を目指して日本、ベトナム、台湾、中国でマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルの仕組みを構築する。

 再生ナイロン糸「ブルーニー」も拡充する。ブルーニーの中に、工場での廃棄物を再利用する「ループ」、漁網から再生する「オーシャン」、植物由来「セーブ」のシリーズを設けて展開する。ブルーニーセーブで展開するナイロン56は、従来より低い温度で染色できるなどの特徴もあると言う。

〈環境配慮糸や機能糸提案/グループでの協働も/シキボウ〉

 シキボウは、国内外の生産拠点で原料にこだわったモノ作りや特殊な製法による機能性など、幅広い商品を展開している。また、全ての製品・サービスを通して、地球環境に優しく、社会への貢献を目指す。

 今回展では、環境配慮糸シリーズや機能加工糸シリーズ、連続シルケット加工糸「フィスコ」などを提案する。昨年に引き続き、グループ会社の新内外綿と共同で出展。両社の特色を生かしたコラボレーション商品も紹介する。

 環境配慮糸シリーズとして、生分解性ポリエステル短繊維「ビオグランデ」、焼却処理時に排出される二酸化炭素を削減するリサイクルポリエステル「オフコナノ」、サステイナブルに栽培された米綿など、原料から環境に配慮した商品をそろえた。

 機能加工糸シリーズとしては、綿の原料に機能を持たせた糸や特殊な製法にこだわった糸を提案する。消臭加工「スーパーアニエール」、吸湿発熱加工「サーモストック」、吸汗速乾機能加工糸「シードライハイパー」、ストレッチ糸などをそろえる。

 フィスコはシルクのような艶やかな光沢が特徴で、洗濯後の色落ちが少なく奇麗が長持ちする。タオル、デニム、テープなど幅広い用途で使用されている。

〈杢糸見本帳リニューアル/シキボウとの連携も/新内外綿〉

 杢(もく)糸紡績の新内外綿(大阪市中央区)は、今年リニューアルした定番杢糸の見本帳をアピールする。フランスなどで市場調査を重ねて、新たに作った受注生産対応の新色もある。竹、ヘンプ、葦(ヨシ)といった自然界の未利用繊維を有効活用した糸も同社ならではの素材だ。

 親会社のシキボウとの共同出展で2021年に新内外綿がシキボウの完全子会社になって以来、初の生産面での連携の成果も見られる。

 ニット糸「フィスコ×アートコット」はその一つ。生地染めで杢の表現ができ、なおかつ生地に光沢も付けられる。新内外綿の生地染めで杢糸を使った色合いが出せる綿糸「アートコット」とシキボウの糸に光沢を持たせる連続シルケット加工を組み合わせた。ポロシャツなどに使う鹿の子地と靴下で展示する。

 二つ目はカジュアルウエア用途を想定した環境配慮型のニット糸「ビオグランデERC」。ポリエステル・レーヨン・綿混糸でポリエステル部分に一定の条件下で生分解性を発揮する生分解性ポリエステルわたを使う。このわたの輸入はシキボウがしており、紡績は新内外綿の工場で行う。

 三つ目はユニフォーム用織物に使うことを想定した原着リサイクルポリエステル杢糸だ。混用率は綿50%・再生ポリエステル50%。原着なので、染色の必要がなく、二酸化炭素排出量や水使用量削減に貢献する。新内外綿が糸を供給し、シキボウが製織する。街でも違和感なく着られるカジュアルな作業着への採用を見込む。