特集 北陸ヤーンフェア2023(3)/出展者の見どころ/東レ/ユニチカトレーディング/帝人フロンティア/旭化成アドバンス

2023年11月07日 (火曜日)

〈アンドプラスで白無垢/ナノデザイン使いの生地開発/東レ〉

 東レはサステイナビリティーをベースにした特品の提案に力を入れる。柱の一つがポストコンシューマー型のリサイクル繊維ブランド「&+」(アンドプラス)で、ポリエステルとナイロンの幅広い品ぞろえを訴求する。

 アンドプラスはポリエステルでの取り組みを進化させ、ナイロン糸も加えて展開を広げている。再生ポリエステルではペットボトルリサイクルに加え、繊維廃棄物からの循環型リサイクルの構築も進めている。今回展ではサステをベースにした特品を幅広くそろえ、異形断面やカチオン可染、シック&シンのスラブヤーンなどを紹介する。

 ナイロンは、今年から名古屋事業場でのケミカルリサイクルを本格的に開始した。回収した漁網や、製造工程から出る廃棄物を再利用する。ポリエステルと同様に、特殊添加剤をフットプリントとして投入し、トレーサビリティーを確保することにもめどを付け、来年1月からスタートする。

 今回展では、回収したペットボトルから作成した婚礼用の白無垢を展示する。日本の伝統と最新技術の融合をテーマに作成したもので、会場ではイメージ動画も紹介する。

 機能糸では革新的複合紡糸技術「ナノデザイン」を紹介する。ナノデザインを使い、ファイバー起点で開発した生地も紹介する。

 長繊維事業部はテキスタイル事業部門とは別の動きで、ナノデザインによる生機の販売を始める。ファイバー起点で生地を開発し、糸販売につなげる狙い。まずはシルキー調の光沢や風合いを実現した織物を開発した。下半期から婦人衣料や中東民族衣装などの用途に展開する考えで、北陸ヤーンフェアでも紹介する。

〈シルミードライ開発/Z―10は来年50周年/ユニチカトレーディング〉

 ユニチカトレーディング(UTC)は、シルクのような風合いと機能性を両立させたポリエステル長繊維の新商品「シルミードライ」とバイメタル構造のポリエステル伸縮糸「Z―10」を重点的に提案する。

 シルミードライは、異形断面や常圧カチオン可染ポリマーなどUTCが持つ技術を結集して開発した。糸断面は、さまざまな三角の形状で構成する「ヴァリアス断面」とし、高い吸水性を実現した。

 シルクのような風合いや落ち感を出すため、常圧カチオン可染のポリマーを使用し、シルクを上回るしなやかさを実現した。フルダルで遮熱、UVカットなどの機能も持たせている。

 ファッションとスポーツの融合が進む中、機能性と感性を両立する糸に仕上げた。同社の紡糸技術に加え、北陸の仮撚り技術も組み合わせて開発を進めた。来年初めから販売を開始する予定。

 来年に50周年を迎える「Z―10」の提案を改めて強化する。快適なストレッチ性やドレープ性、生地の反発感などの特徴を持ち、スーツの中肉地から資材まで幅広い用途で根強いファンを持つ。ポリエステル100%なので、近年はリサイクルを容易にするモノマテリアルの流れも注目を高める一因になっている。

 前回展で提案した原料の50%を再生ポリエステル化したZ―10も好評を得ており、Z10全体の70~80%が切り替わった。再生ポリエステル使いは22~110デシテックスをそろえ、通常品とほぼ同様の糸種をそろえる。

 足元ではアセテート繊維やキュプラなど他素材との複合での要望も増えているほか、今後はシキボウとの協業で、天然繊維との組み合わせも再強化する。

〈エコペット軸に差別化/紡績糸を改めて提案/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアは環境戦略「シンクエコ」に沿って、エコをベースにした差別化糸の展開に力を入れる。今回展では、ポリエステル糸に加え、旧東邦テキスタイルの紡績糸の展示も拡充する。

 ブースでは、エコをベースに機能性や感性などを付与した糸をシーン別に提案する。機能では「快適性」「あったか素材」「クール素材」の切り口に分けて提案する。

 快適性はストレッチ商品に力を入れる。再生ポリエステル「エコペット」を軸に、ストレッチ性や回復性が特徴の「エスビロン」、PTT繊維「ソロテックス」などを紹介する。ソロテックスは、植物由来原料とリサイクルポリエステルを原料とする「ソロテックスエコハイブリッド」への注目が高く、新定番として提案を強める。

 あったか素材では、吸湿発熱素材「サンバーナー」を提案する。現在は中わたやシートでの展開が多いが、紡績糸での開発を改めて強化し、テキスタイルでの展開を広げていく。クール素材では、特殊断面で吸水速乾などの機能を持つ「ウェーブロン」や「カルキュロ」、接触冷感素材「クールセンサーEX」などを訴求する。

 複合で風合いや感性を高めた環境配慮型商品の提案にも力を入れる。今回は紡績糸の展示も増やす。

 21年に東邦テキスタイルを吸収合併してから長繊維と短繊維の強みを融合させた開発を進めてきたが、改めてバルキー性の高いわたを使った紡績糸「マーフィル」などの提案を強める。

〈ナイアを重点提案/先染め糸のストック販売も/旭化成アドバンス〉

 旭化成アドバンスは昨年に引き続き、ジアセテート繊維に焦点を絞って出展する。イーストマンケミカルのジアセテート長繊維「ナイア」とその環境配慮型商品「ナイアレニュー」、紡績糸「セルン」のほか、先染め糸のストック販売「アリア」などを紹介する。

 林田(福井県坂井市)との協業でナイアの先染糸ストック販売を今春から本格的に始めた。10~15色をそろえ、ファッションアウターなどに展開していく。

 紡績糸のセルンは24秋冬に向けて引き合いが増えている。ジアセテート100%からスタートしたが、現在はジアセテート高混率でシルク、ウール、カシミアなどとの混紡糸が拡充した。特に横編み向けで商品幅が広がっている。

 ナイアレニューは、原料となる酢酸の製造で廃棄物を再利用する。通常のナイアとほぼ同じの糸種をそろえ、足元ではジアセテート糸販売の半分ほどがナイアレニューになっている。

 ジアセテート糸の日本での販売量は引き続き堅調に推移する。急激な円安により採算が悪化しているため今下期の利益は慎重に見通すが、販売数量は引き続き堅調とみる。北陸だけでなく北関東や関西、中部などにも販売が広がっている。今後のさらなる拡大に向け、展示会出展などで訴求を強めるほか、風合いや光沢などジアセテートの強みを生かした生地開発をさらに強化していく。展開用途も広げていく考えで、ナイアが持つ抗菌防臭や吸放湿性などの機能を生かして寝装などへの拡販を狙う。