秋季総合特集Ⅴ(14)/Topインタビュー/カケンテストセンター/理事長 眞鍋 隆 氏/サステの潮流追いかけ/新分野、コスト、人材が鍵

2023年10月27日 (金曜日)

 カケンテストセンター(カケン)は、今年度(2024年3月期)を初年度とする3カ年の中期経営計画に取り組んでいる。上半期は新型コロナウイルス禍前の水準には戻っていないものの、前年を上回る水準で推移している。10月に就任した眞鍋隆理事長は「伸びていく分野の需要を取り込むなど、計画を確実に実行する」と話す。

――カケンにとって“最旬”の事業や取り組みは。

 ひと言で表現するとサステイナビリティーの取り組みです。繊維業界全体の大きな潮流となっており、カケンとしても追いかけていきます。具体的には海洋プラスチック汚染の一因ともされる繊維くずに対する試験、依頼が増えているCSR監査などにきちんと応えていきます。

 欧州中心に規制が進んでいるPFAS(パーフルオロアルキル化合物)への対応も図っています。日本ではまだ浸透していない部分もありますが、今後を考えても目を向けていないといけないでしょう。サステは幅が広く、ライフサイクルアセスメント算定業務にも力を入れています。

――今月1日付で理事長に就任しました。抱負は。

 とにかく「できることからやっていく」を心掛けます。今年度に始動した中期経営計画の中に「カケンしかできない独自メニューを、小さくとも積み上げる」という文言があります。「小さくとも積み上げる」は私自身も以前から使っていた言葉ですので、それを体現していきたいと思います。

 経済産業省にいたころには、製品の品質表示に関わった経験を持っていますので、検査機関に対して違和感はありません。ただ、繊維製品が世に出るまでこれほど多くの試験・検査があることに驚きました。検査機関の社会的意義は非常に大きく、職員には改めてそのことを意識してほしいです。

――カケンのかじ取りを担います。事業環境をどう捉えていますか。

 資源価格の高騰が一番の問題であると考えています。カーボンニュートラルの観点から新エネルギーに注目が集まっていましたが、コスト高になっていました。そこにロシア・ウクライナ問題が重なり、資源価格高騰が加速します。資源価格高による経済への影響は小さくなく、苦しい状況が今後も続く可能性があります。

 繊維産業も困難な局面が続いていますが、よくいわれるように需要がなくなることはありません。どこに活路を見いだすかでしょう。

 例えば、海洋プラスチックごみに厳しい目が向けられていますが、そうした社会的要請に対応できる企業が伸びていくでしょうし、ピンチをチャンスに変えられるのだと思います。

――今年度上半期の業績は。

 全ての数字が出そろったわけではないのですが、中計で立てていた数字から大きくかけ離れることなく推移しています。前年の実績も上回っています。

 ただ、検査・試験依頼件数の大幅な増加は見込めないと考えています。需要の変化を見極めて、的確に対応することが不可欠です。

 また、カケンとしては、これまで以上に効率的に試験やサービスを提供することが重要になります。デジタル技術で企業を変革するDXによるスマート化の推進で効率性と正確性を高めています。スマート化にも人材は必要ですので、人材育成にも継続して力を入れます。

――中計での施策などを改めて。

 中計は「より良い暮らしのために」を最終目標に設定してスタートしました。顧客と職員、社会貢献の三つそれぞれを大切にしながら事業を組み立てています。環境やサステ、人権をはじめとする伸びていく分野、社会的に貢献する分野に焦点を当てることで成長を図っていきます。

 これらの新しい分野での需要取り込みに加え、資源価格高によってアップしているコストへの対応、人材の育成がポイントになります。経営目標では、22年度に12%弱だった女性管理職の比率を25年度に15%に引き上げること、二酸化炭素排出量削減などを掲げています。

〈私の旬/靴磨きは裏切らない〉

 古着や古靴などを買うのが好きな眞鍋さん。結構な頻度で購入するとし、「最近買った靴が旬」と話す。以前の所有者が丁寧に履いていた古靴は多いが、程度はさまざま。それを「自分できちんと手入れを行い、奇麗にするのが楽しい。靴磨きは裏切らない」のだとか。別の日に1960年代に作られた「バリー」のバッグが2万円で売られているのを見つけた。「1万円でいいと言われて購入した」が、修理には3万円かかったらしい。

【略歴】

 まなべ・たかし 1980年4月通商産業省(現経済産業省)入省。2003年経産省製造産業局化学課長、10年全国中小企業団体中央会専務理事、16年タクマ常務執行役員、21年中東協力センター代表理事・専務理事、23年6月カケン非常勤理事などを経て、今年10月にカケン理事長に就任