秋季総合特集Ⅳ(9)/Topインタビュー/コスモテキスタイル/社長 岡田 泰紀 氏/過去最多の生地ラインアップ/CosmoSmileで挑戦
2023年10月26日 (木曜日)
生地商社のコスモテキスタイル(大阪市中央区)の上半期(2023年4~9月期)は、売上高、利益とも前年同期を上回った。切り売り市場向け、アパレル向けとも販売数量を伸ばした。今後は、国内市場が縮小する中、新たな市場への開拓が課題となる。海外展に積極的に出展しながら輸出拡大に本腰を入れる。
――自社の“最旬”の事業は何でしょうか。
9月に開いた展示会ではクラフト部門で「KIDSコレクション2024」を打ち出しました。年代別に過去最多のラインアップを取りそろえましたが、これだけさまざまな提案ができる企業はなかなかないと自負しています。
新たなライセンス柄として、1990年代に流行し近年も幅広い世代で人気を博す「ラブラドールレトリバー」や、カードゲームの「UNO」(ウノ)を用意し、それぞれ2、3柄をそろえています。
自社柄も復刻させました。10年前にヒットした柄の色変更や柄配置の変更などに加え、昨シーズン人気だった柄への色追加も各カテゴリーでそろえ、幅出しをしました。
今年4月に開かれたハンドメードイベント「日本ホビーショー」に初めて行きましたが、意外と若い世代が多く、生地を使って何かを創作したり、手を動かすことが好きな人も増えているように感じました。ブームに火が付き、業界全体が盛り上がっていけばと考えています。
――上半期の商況は。
売上高、利益とも前年同期を上回っています。販売数量も伸びました。
切り売りのクラフト部門は前期、新型コロナウイルス禍のガーゼ特需の反動で落ち込みましたが、今期は回復基調にあります。地方の店舗はまだ客足が鈍い部分がありますが、都心の大型店舗はにぎわいを見せつつあります。
アパレル部門は、一部の百貨店でバブル超えの過去最高売り上げになるといった影響から、百貨店向けに供給する婦人服アパレルが堅調なこともあり、悪くありません。
――輸出も強化されています。
売上高に占める輸出の割合はまだ3%ほどですから、まだまだ伸び代があります。今年初めてイタリアの「ミラノ・ウニカ」に出展するとともに、中国の「インターテキスタイル上海アパレルファブリックス」や、韓国の「プレビュー・イン・ソウル」に出展しました。来年以降も出展を計画しており、これから積み重ねていきます。
展示会では日本国内での売れ筋を紹介しています。機能性やナチュラル感、ワッシャー感、光沢感に強いこだわりを持った天然、合繊素材をそろえています。見に来た人がワクワクする新商品を取りそろえるとともに、展示会で生地に対する評価を聞き、新たな生地開発にもつなげていきます。
――下半期に向けては。
切り売り向けで新ブランド「un/no」(アンノ)を打ち出しました。綿シーチングにバンビ、ユニコーン、テディベアの柄を乗せるなど、新商品をいろいろと仕込んでおり、それらの販売拡大に期待しています。
訪日外国人需要が拡大するとともに各種イベントが復活するのに合わせて和柄を充実させているほか、前シーズンに投入して人気だったテープ、クラフトレース類でも新色を追加しています。
――原材料費の高止まり、物流費の上昇など、コストアップが続いています。
値上げが追い付いておらず、下半期も厳しい環境が続くとみられ、決して楽観視はしていません。現状を真正面から受け止め、その厳しさを会社の成長を促していく大きな栄養剤と捉えていきます。引き続きお客さま第一主義を主軸に、中長期的な視点に立って社員一丸で努力を積み重ねていきます。
当社はスローガンにCosmoSmile(今日も楽しく、明日はもっと楽しく)を掲げています。生命力が強い「コスモス」のような花、「コスモ」(宇宙)のような広がりといった、さまざまな意味を掛け合わせています。さらに5年後、10年後の「マイルストーン」に向け、今までの延長線ではなく輸出など新しいことにチャレンジし続けます。
〈私の旬/プーチンと『悪霊』〉
「私の最旬は読書、バイオリン、阪神タイガース」と多彩な岡田さん。そんな岡田さんは、世界中に大混乱をもたらしているロシアのプーチン大統領の不可解な行動が、「なぜかドストエフスキーの小説『悪霊』に出てくる登場人物の奇怪な行動と被って見える」と指摘する。時代背景は全く異なるが、再度ロシア語で書かれた悪霊を電車の中で精読中だとか。「興味がある方はぜひ読んでみてください」
【略歴】
おかだ・やすき 1981年三井物産入社。89年ロシア/モスクワ支店次長、94年繊維部製品室長、2009年関西支社業務部長、15年関西支社副支社長を経て16年に給食受託業、メフォス取締役、18年同社社長。22年6月20日付で退任し、7月1日からコスモテキスタイル社長