特集 アジアの繊維産業(12)/ボーケン品質評価機構/多様化する現地ニーズに応える
2023年09月27日 (水曜日)
ボーケン品質評価機構の海外事業本部は中国のほか、ベトナム、タイ、インドネシア、台湾、韓国に試験センターを設置し、カンボジアのプノンペンに事務所を置くことで東アジア、東南アジア地域における「地域密着型ビジネスの創出」に取り組む。ベトナム、タイ、インドネシア、台湾はグローバル検査機関のSGSと、韓国はFITI試験研究院と業務提携を結び進出しており、国・地域ごとに多様化するニーズに応え、現地での品質向上に貢献することを目指している。
〈品質管理も“地産地消”〉
近年、アジア地域では品質管理の現地化を進め、問題が発生した際にも早急に対策を講じることのできる体制を整備してきた。現地と日本の担当者が連携し、機能性試験など拠点によっては実施できない項目があってもアジアの拠点ネットワークを活用し、近隣国のセンターに委託するなどタイムラグを減らす環境整備が進む。品質管理も“地産地消”が実現する。
現地スタッフの教育や研修も充実する。現地スタッフが高度な知識を持つことで課題を現地で解決し、生産現場での本質的な品質向上に寄与できる。検査機関から教育支援や品質支援サービスを提供できる体制を整えている。
高付加価値素材の開発が進む台湾、韓国、タイではSNSを通じてボーケンのセミナーや定期トピックスの情報を発信し、高い評価を得ている。現地スタッフがボーケンの顔として働く環境が整備されつつある。
現地から日系企業の海外進出をサポートするのも各国の試験センターの役割だ。アジア・ASEAN諸国でも法規制や表示事項が整備されつつある。
ボーケンはベトナムのTQC、台湾の経済部検験局や紡織産業綜合研究所(TTRI)、台湾産業用紡織品協会(TTTA)、タイのタイ繊維産業協会など行政機関や業界団体との関係構築を進め、最新情報を入手できる体制を整えた。法規制や現地規格に基づく安全性試験や化学分析、表示作成サービスを実施している。
《各国拠点最新トピックス》
〈台湾/高付加価値・環境配慮素材へ対応〉
台湾試験センターは通常の納品前検査だけでなく、高付加価値素材や環境配慮素材に関する相談も数多く対応するなど台湾の繊維産業の特色に合わせたサービスを展開している。日本の繊維評価技術協議会が認証する「SEKマーク」の普及活動も積極的に推進する。
台湾では8月7日に二酸化炭素排出権の取引所が開設された。このため環境負荷の定量化ニーズが高まる。これを受けて、まずは台湾試験センターでライフサイクルアセスメント(LCA)やカーボンフットプリント(CFP)算定支援サービスを提供できる体制を整え、今後はASEAN地域へも同様のサービスの展開を目指す。
〈ベトナム/日用品・家具の試験が拡大〉
ホーチミン試験センターは繊維だけでなく日用品・家具の品質試験でも成長が続いている。このため人員を増強し、現地での品質管理を支援するサービスを強化した。
その一つがカタログ用写真の撮影。ベトナムでは通販用の家具生産が拡大しているが、カタログ写真の撮影は日本での検査の際に実施するケースが多い。このためホーチミン試験センターは現地の大手フォトスタジオと提携し、現地での検査の際に写真撮影も実施できる体制を整えた。これにより現地での検査ニーズに対応する。
また、ベトナムから欧米やASEAN諸国に輸出するための品質管理や法規制に精通したスタッフをそろえ、日系企業に対してリコール情報の発信などコンサルティングサービスの提供の評価も高まっている。
〈タイ/周辺国の検査ニーズに応える〉
ASEAN諸国の中でもタイは少子化と人件費上昇のため繊維産業も構造転換期に差し掛かる。こうした中、バンコク試験センターは生産が拡大しているカンボジアやミャンマーなどタイ周辺国の検査ニーズに対応するハブ拠点としての体制を整えた。
現在、カンボジアのプノンペンに事務所を置き、カンボジアから依頼された試験をバンコク試験センターで実施する仕組みが好評だ。既に同センターが受託する試験の大半がカンボジア案件となっている。
ミャンマーもヤンゴンは政情が比較的安定していることから日本向けの生産も拡大傾向にある。このためヤンゴンにも事務所を設置することを検討する。
〈インドネシア/検品チームと連携〉
ジャカルタ試験センターは通常の繊維検査のほか、提携するSGSと協力して家具や日用品などさまざまなアイテムの抜き取り検品サービスを実施している。従来、インドネシアでは日系企業が求める品質要求に対応できるアイテムは限定的だった。こうした中で同センターが抜き取り検品サービスを開始した。検品チームの経験とフットワークの軽さから好評を得ている。
〈韓国/内販や欧米向けに対応〉
韓国試験センターはソウルと煙台に拠点を構える。韓国はアジア・ASEAN地域でのOEMが主軸だが、韓国内販や欧米に輸出する高付加価値素材に関する相談件数は増加傾向。
このため現地で実施できる機能性試験項目を増やすなど対応力を強化した。現地でのホームページやトピックス発信も拡充し、日本とボーケンの技術力の普及に力を入れている。