特集 アジアの繊維産業(11)/カケン/アジアで着実な成長図る

2023年09月27日 (水曜日)

 2023年度(24年3月期)を初年度とする3カ年の中期経営計画を推進しているカケンテストセンター(カケン)。人と社会貢献を重視しつつ、事業収入(売上高)の拡大を目指す。事業収入は海外で年間1.5%ずつ拡大させる方針で、ベトナムやバングラデシュの成長に期待するほか、中国も高度化を図る。

〈ベトナム、バングラデシュの成長に注力〉

 検査機関のアジア戦略は、他の繊維関連企業と同様に2022年までは新型コロナウイルス禍による負の影響に振り回された。都市封鎖の解除など、各国・地域でコロナ禍に対する政策が変化したことなどから、23年に入ってからの平常化や回復に期待感が高まっていた。

 ただ、中国は回復が想定よりも遅れている。春節(旧正月)前は問い合わせ件数が増えていたが、勢いは戻っていない。不動産関連の低迷などが足かせになっていると伝わる。ビザが取得しにくい状態が続いていることも日本企業の対応を困難にしている。先行きも不透明感が強い。

 そのような状況下でカケンは、GB規格(中国国家標準規格)への対応強化を図ることで増収につなげる。機能性で対応できる試験を増やすとし、紫外線遮蔽(しゃへい)や吸湿発熱、抗菌性などに焦点を当てる。接触冷感などの試験機の充実にも取り組み、できる試験を拡充する。

 また、CSR監査も強化している。これまでCSR監査に対応できる拠点は、上海科懇検験服務だけだったが、順次体制を整え、22年度に全拠点に監査対応スタッフの配置を終えた。6拠点7人体制(大連試験室が2人)となり、「増えている」(カケン)と言う要望に積極的に応じる。

 ASEAN地域では、ベトナムの成長に力を入れる。現在、ベトナム試験室は提携先との連携で試験・検査を行っているが、来年度に独自の試験室(子会社)をホーチミンに立ち上げる計画だ。機能性試験などを充実し、上海科懇検験服務と同レベルの規模となる見込み。

 インドベンガルール試験室を立ち上げるなど、前中計で強化に努めた南アジアにも引き続き重点を置く。特にバングラデシュは問い合わせも多く、試験機の充実を図っている。インドについては、日系企業の進出もまだ少ないのが実情。国も広く、営業の方向性を再考するとしている。

〈中国・大連試験室/環境対応に視線注ぐ〉

 中国の遼寧省大連市に所在を置く大連試験室は、新たな取り組みを積極的に進めることで事業収入の拡大につなげる。新たなその代表例が試験の拡充で、環境対応などに目を向けている。営業力の強化やセミナーの充実などにも力を入れる。

 遼寧省は、下着やパジャマ、デニム関連の縫製工場が多い地域で、同省の主要都市の一つである大連では、200~300枚という小ロットに対応する工場の姿も目立つ。大連試験室への試験・検査依頼件数は、昨年と比べて若干減少している。中国経済が勢いを欠く中、今後も厳しさが続くと予想する。

 そのような状況下で三つの新しい取り組みの推進によって事業収入の拡大を図る。新しい試験では、ファイバーフラグメント測定試験を提案する。国際NPOであるマイクロファイバーコンソーシアムの試験ラボの認定を取得しており、強みの一つとして訴求する。

 営業力も強化する。中国現地スタッフと日本人スタッフが一緒になって顧客を訪問するなど、人材の育成に注力する。セミナーの充実では、日系企業の中国人スタッフ向けに中国語によるセミナー対応を進める。

 デジタル化推進も新たな取り組みの一つ。最新のシステムを導入して納期短縮やミス防止に結び付けたいとしている。ITに強い職員も増やす方針だ。

〈カケンインドネシア/試験所認定を取得〉

 カケンインドネシアは、新型コロナウイルス禍による負の影響から脱し、23年上半期は前年を上回る事業収入を確保していると言う。大手のSPAなどがインドネシアでの生産に目を向けるなど、「新しい風が吹き始めている」とし、この風を確実に捉えて成長につなげる。

 感染症拡大による中国やベトナムの都市封鎖を経験した大手SPAやスポーツ系SPAがリスク分散などの観点から同国での生産を始めている。同国政府も国産重視を打ち出しており、こうした流れがカケンインドネシアの数字を押し上げた。

 同拠点自身も高度化を図り、インドネシア国家認定委員会からISO/IEC17025¥文字(':'+Vdir)2017に基づく試験所認定(SNI ISO/IEC17025)を取得した。品質管理体制や技術的な能力が認められたことなったほか、国際的な相互認証協定により他国間における試験データの受け入れが可能になった。

 認定を受けた試験項目は、JIS法による染色堅ろう度試験、物性試験、ホルムアルデヒド試験――など25項目にわたる。基盤強化ができたとして、今後も公正で信頼性のある試験・検査のサービスを提供するとしている。

 また、納期管理の徹底などによって顧客満足度の向上を図る。そのためにも人材の確保・育成には力を入れる。