タイ東レグループ/生産基盤を再整備/高付加価値化で構造変化に対応

2023年09月25日 (月曜日)

 タイ東レグループは、タイの産業構造が大きく変化していることに対応し、生産基盤の再整備と生産品種の高付加価値化に取り組む。そのために自動化・省人化やデジタル技術で企業を変革するDXの投資を重視し、差別化原料やリサイクル原料による高付加価値商材に力を入れる。

 在タイ国東レ代表の松村正英執行役員トーレ・インダストリーズ〈タイランド〉社長は2023年度上半期(4~9月)の商況に関して「合繊長繊維製造のタイ・トーレ・シンセティクス(TTS)、紡織加工のトーレ・テキスタイルズ〈タイランド〉(TTT)ともに厳しい事業環境が続いている」と話す。

 TTSの産業用原糸はエアバッグ向けナイロン長繊維とシートベルト向けポリエステル長繊維ともにタイの自動車生産台数回復に合わせて回復基調にあるものの期待した水準には達していない。一般産業用途は漁網が需要減退で苦戦した。衣料用ポリエステル長繊維は好調だった欧米アパレル向けがアパレルの在庫調整で一時的に荷動きが鈍化している。

 TTTはTTSの原糸を活用した長繊維織物がメガブランド向けで堅調だったが、ポリエステル・綿混織物は依然として市況低迷で苦戦。ただ、ポリエステル短繊維100%織物は中東やインド向けで拡大した。エアバッグ基布は4~6月こそ苦戦したが7月以降は回復し、利益も安定的に確保している。

 今後に関して松村氏は「工場の生産基盤整備が一段と重要になった」と指摘する。

 タイは少子化による労働力不足が深刻化している上に、8月に発足した新政権が最低賃金の大幅引き上げを公約する。取引先アパレルがサプライチェーンの人権・労働デューデリジェンス(調査対象への価値やリスクを調査すること)を強めており、残業時間削減なども避けられない。「タイでは労働集約型モノ作りは不可能になった」として、工場のボイラーやコンプレッサーの更新などで省エネルギー化を進めるほか、自動化設備導入やDX投資を積極的に進める。

 また、「他で生産できないモノ作りに取り組む」として、マレーシアのペンファイバーやインドネシアのインドネシア・トーレ・シンセティクス(ITS)などASEAN地域の東レグループ会社が生産する複合原綿も活用した高付加価値テキスタイルの開発に取り組む。長繊維は延伸加工糸(DTY)の複合紡糸を導入することを検討する。ポリエステル、ナイロンともにリサイクル原料の利用を拡大し、環境配慮型商材のウエートも一段と高める考えだ。