ごえんぼう

2023年09月06日 (水曜日)

 ある糸染め工場で聞いた話。例えば黒というくくりだけで、何万種類もの色があるそうだ▼赤みを出したもの、黄色を入れたもの、ひたすらの漆黒など、数え切れないほどの黒色を糸に付着させてきたという。独自の黒も持つが、多くは顧客からの別注。この細かなこだわりが、世界に冠たる繊維技術を生み出してきたのだろう▼なぜ日本の技術は海外に流出してしまったのか、という問いに対して、日本は企業を優先し、個人を軽んじてきたからだという指摘がある。待遇に不満を持った個人が、海外からの高い報酬に応じ、技術を流出させた。繊維業界でもよく聞く話だ▼今日9月6日は、クローにちなんだ「カラスの日」であり、日に焼けた黒い肌にちなんだ「松崎しげるの日」でもある。語呂合わせで「黒の日」でもある今日、わずかな色の差にまでこだわってきた日本の繊維技術がこれ以上海外に流出しないことを改めて願う。