シリーズ事業戦略/大和紡績/取締役産業資材事業本部長兼製品・テキスタイル事業本部長 青柳 良典 氏/フィルターは総合化へ/変化に乗り遅れない
2023年09月04日 (月曜日)
大和紡績の産業資材事業本部は今期(2024年3月期)に入り、カートリッジフィルターの受注回復の遅れが足を引っ張ったが、青柳良典取締役は「底を打っている」と話し、攻めに転じつつある。一方で製品・テキスタイル事業本部は価格改定が浸透し収益改善が進んだ。この数年、新型コロナウイルス禍をはじめ急激な原燃料高、円安といった誰しも“経験したことがない”環境が続いたが、「変化に乗り遅れない」事業体制へと進化させることで、次の成長につなげていく。
――第1四半期(4~6月)までの進捗(しんちょく)はいかがですか。
産業資材事業本部では半導体など電子部品向けカートリッジフィルターが、昨年前半が良かっただけにその反動が出ています。半導体メーカーの生産状況を見ても現状は低調で、その影響を大きく受けています。ただ、第2四半期(7~9月)に入ってから最終ユーザーごとに凹凸はありますが、特に自動車を中心に半導体需要が戻りつつあり、既に受注は底から脱却しつつあります。
下半期では実需で前上半期に近いラインにまで戻ってくるとみられ、第4四半期から来春にかけてはかなり需要が見込まれます。
カンバス・メッシュベルトは、ネット通販でダンボール需要が増えており、堅調な販売を維持しています。営業担当者が北海道から九州まで全国の製紙会社の工場に直接足を運び、その成果が出ています。本当に営業担当者には頭が下がる思いです。インドネシアのダイワボウ・インダストリアルファブリックス・インドネシア(DII)を通じて日本だけでなく現地を含めた海外向けの販売も拡大しています。品質だけでなくアフターフォローの面からも優位性を高めていきます。
建築シートは戸建ての着工件数が減っていますが、都市の再開発によって需要が伸びています。
帆布はイベントの増加でテントシートの需要が拡大し堅調です。トラックシートでは、従来品に比べ33%も軽量な合繊帆布「エアフェザー」への評価が高いです。物流の2024年問題が話題になる中、受注が伸びてくるものと期待しています。
――製品・テキスタイル事業本部は。
第1四半期は店頭で旧価格と新価格が混在している時期でしたが、第2四半期に入り価格改定がある程度浸透し、増収増益で推移していくものとみています。製品OEMも為替に対し価格をしっかり決めながら商談を進め、収益を確保しています。
一方で対米輸出は苦戦しています。店頭在庫を売り切っていないのか、動きが鈍い。下半期もあまり良くないかもしれません。
環境配慮型素材への要望が増えています。リサイクルポリエステルを米綿で包んだ二層構造糸「ツインレット」はカジュアル向けで販売を堅調に伸ばしています。米綿使いでトレーサビリティーの面からも安心して採用されています。
――下半期の各事業本部の見通しは。
産業資材事業本部では、カンバス・メッシュベルト、建築シート、帆布関連それぞれが堅調です。
フィルターも半導体需要の回復から受注拡大を見込んでいます。技術・開発本部の播磨研究所(兵庫県播磨町)の協力で、新型フィルターの試験販売に入ろうとしています。来年には本生産につながれば。
元々当社はフィルター分野で後発でした。特徴を出すために、展開していた不織布を生かし電子部品を中心に販路を広げてきた経緯があります。21年には各工場に分散していたフィルター製造設備と原料製造設備を出雲工場(島根県出雲市)に移管し、原料から製品までの一貫生産体制を構築しました。播磨研究所での研究と出雲工場を連携させながら、高機能化を図っていきます。食品や化学、塗料といった分野へも販路を広げていきます。
実は工場で粗ろ過、中間ろ過、最終ろ過といった工程ごとに使うフィルターが異なり、フィルターの供給企業もそれぞれで違うケースが多いんです。そこで、いずれの段階でも当社が対応できるように総合化も目指します。
現状では、より高精度が求められるフィルターは米国メーカーがシェアを握っていますが、当社が供給できるようになれば、国内向けにも安定した納期で供給できるようになります。
台湾や韓国など海外向けもコロナ禍で落ち込んでいた部分を取り戻し、拡大していきます。
製品・テキスタイル事業本部は対米輸出が年内厳しいと思われますが、来春夏には受注が戻ってくればと考えています。
この2、3年で原燃料高をはじめ、これまで経験したことがないようなことが続きました。ただ、急激な変化に対し臆せず先手を打って対応してきました。変化に乗り遅れず、新タイプのフィルター開発のような取り組みをどんどんやっていきます。