特集 アパレルパーツ(3)/守りの時期を終え、再び成長へ/業績おおむね堅調/カジテック/モリトアパレル/ミツボシコーポレーション/伊豆義/グンゼ/コバオリ

2023年08月30日 (水曜日)

〈カジテック 社長 梶浦 昇 氏/印とバングラデシュに商機〉

 今上半期(2023年2~7月)は、売上高、利益とも前年同期とほぼ同じとなった。大手SPA向けのプラスチック製ホックが苦戦したものの、東南アジアなど向けの輸出や、ヘルメットや靴などの資材向け、ワーキングウエア向けなどが伸びた。

 下半期は、初回オーダーが少なくなる傾向が近年強まっていることなどから不透明感が強いが、前期並み着地を予測している。

 成長戦略は商品開発と海外開拓。商品開発では「相手を飽きさせない」ことを重視し、定期的な開発、提案を続けていく。

 海外開拓では、バングラデシュへの期待が高い。今春に行った欧米向け縫製工場への営業提案の結果、新たな契約が数件決まりそうだ。インドも同じ手法で開拓していく。

 中国は「インターテキスタイル上海」への上海法人としての出展復活などで、現在の主力であるベビー向けのほか、スポーツ・アウトドア向けなどを増やしていきたい。

〈モリトアパレル 社長 森 弘義 氏/画期的な商品開発を〉

 会社分割前を含めて、2020年を底に業績は右肩上がりだ。欧米ブランド向けが多く、新型コロナウイルス禍からの回復が早かったことがその要因の一つと言える。今期(23年11月期)はここまで、これまでとは逆に欧米向けが低迷している。特に米国向けが良くない。国内向けはワークウエアやレディース向けの副資材、スポーツや釣り向けの製品販売が好調に推移しており、トータルで上半期は堅調と言える。欧米向けも来期には戻ってくるとみている。

 今後は強まる地産地消ニーズへの対応が事業成長の鍵を握る。どこで作り、調達し、販売していくかを、グローバルな観点で考えていく。

 一方、日本の仕入れ先を支えていくこともこれまで通り重視する。方向性は高付加価値化になる。仕入れ先と協業し、商品開発に力を入れる。

 当社の主力商品であるホック、ファスナーに次ぐ、「留める、つなぐ」という機能を持つ、全く新しい商品を開発していきたいと考えている。

〈ミツボシコーポレーション 社長 中塚 一夫 氏/DXで業務効率化〉

 2023年3月期売上高は、前期比約12%増の74億円だった。ユニフォーム向けで新規品番の受注を獲得できたことが寄与した。顧客が反射材やボタンなどで差別化を図るといった“服飾資材を重視したモノ作り”に移行したことも大きかった。ただし、利益面は為替や仕入れ原価の上昇で伸びなかった。アパレル事業は微増だった。

 デジタル技術で企業を変革するDX推進のため、昨年10月に基幹システムを一部更新した。定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)で、手入力していた棚卸データも夜間に自動で処理できるようになった。

 表計算ソフトのマクロ(作業の自動化)を活用した業務の効率化にも取り組んでいる。

 これらの業務効率化もあって営業活動に注力できるようになった。スポーツウエアなどの流行を取り入れた見本を随時作成し“常に引き出しのある企画提案力”が高まり好循環につながっている。

〈伊豆義 副社長 伊豆田 浩央 氏/サステ推進し循環型経済確立〉

 上半期(2023年2~7月)の売上高は、前年同期並みだった。22秋冬商材では追加受注が伸び悩んだが、23春夏では新規案件の獲得など明るい兆しも見えてきた。通期目標の売上高38億円の達成に向けて発信を強める。

 販売先への価格転嫁は進んでいるものの、度重なる仕入れ原価の上昇で十分ではない。海外で手配する資材も含め総合的な提案でインフレ加速に対応していきたい。特に、中国では日本基準で自社検品を実施した上で出荷している強みを改めて訴求する。

 再利用やカーボンニュートラル、生分解性に重きを置いた商品の提供で、サステイナビリティーにつなげる活動「エコアクト」も引き続き発信していく。この取り組みは服飾資材だけでは解決しない。それぞれが得意な分野を持ち寄って全体で循環型経済を確立させたい。

 今年は、大阪営業所でサステに寄与する服飾資材を集めた内見会を実施する。10月末に本社敷地内で完成するショールームも発信に活用する。

〈グンゼ 執行役員 繊維資材事業部長 岡 修也 氏/バングラデシュが成長の軸〉

 2023年3月期の当事業部の業績は、売り上げ、利益とも前期比増加した。国内向けは厳しさが残ったが、バングラデシュやベトナム拠点での製造販売が奮闘し、全体を引き上げた。ただ、昨年後半からの欧米市場の景況悪化を受けて今期は特にバングラデシュが低迷している。中国も原料高で苦しく、インドネシアは人件費上昇による競争力の低下で相当厳しくなっている。工場移転や撤退も視野に入るほどだ。

 今期はベトナムを除いて厳しい情勢にあり、計画の下振れは避けられない見通しだ。もちろん傍観するわけではなく、生産性の向上や新規顧客開拓を各拠点で進めていく。ただ、バングラデシュの低迷は長くは続かないとみる。当面の成長の軸はバングラデシュが担うと考えている。

 エアバッグ向けも、車両販売台数の低迷の中で良くない。ミシン糸のナイロンからポリエステルへの移行が進むとみており、この流れに対応していく。

〈コバオリ 社長 小林 慎吾 氏/RFIDタグで次のステージ〉

 祖業の織ネーム製造以来、紙タグ、包装パッケージ、転写マークと手段を進化・多様化させながらも、当社は一貫して顧客、特にオーナー経営者の信任を得てブランド表示やメッセージ発信を担う商材を手掛けてきた。

 近年主力に育ったRFID(無線通信による個別管理システム)タグは、アパレル小売りが先導する形で先進的活用が進み、単なる情報表示を超えて多面的な利便性・有用性が実証された。ユーザーに引き上げてもらい、当社もタグサプライヤーとして、“無線通信技術関連企業”に脱皮できる自信を得た。繊維の製造・流通に限らず他分野も視野に、さらなる普及の一助となりたい。

 アパレル生産地の東南アジアシフトに対応して、ベトナム拠点で副資材供給の機能強化に取り組んでいる。工場を拡張しRFIDタグの生産能力を増強中だ。大ロット対応力のほか品質面でも中国拠点と遜色ない供給体制を整え、顧客に質量ともに新たな選択肢を提供したい。ベトナムならではの新しい取り組みにも精力を注ぐ。