ごえんぼう

2023年08月29日 (火曜日)

 東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出が先週24日に始まった。漁業への風評被害の懸念が拭い切れないままでの実行となった感は否めない▼開始を前に岸田首相や西村経産相は、漁業関係者らに対して「寄り添う」という言葉を発した。語感は良いが、どこか抽象的に感じる。人材育成プランナーの山本直人さんは〈耳に心地よい言葉は、具体的な情報量は少ない〉と指摘する▼山本さんの著書に『聞いてはいけない スルーしていい職場言葉』がある。同著では「寄り添う」はビジネスの世界でも用いられ、〈ユーザーや顧客に寄り添うという形で使用される〉が、〈何をするかは示されない〉場合も多いとする▼使い勝手の良い「寄り添う」だが、そこから具体的に何をどうするかという中身が大切と言える。それは政治もビジネスも同じであり、新聞記事も同様。言葉とどう向き合っているか。再考する必要がある。