「インテキ上海」開幕/日本館規模 コロナ禍前超える/期待と不安交錯の中で

2023年08月29日 (火曜日)

 服地と副資材の国際展「インターテキスタイル上海アパレルファブリックス2023秋展」(インテキ上海)が28日、中国・上海の国家会展センター〈上海〉で開幕した。日系出展者が集まる「ジャパン・パビリオン」は、新規出展者や数年ぶりの出展となる企業が目立ち、出展者数は新型コロナウイルス禍前を超えた。日系出展者には期待と不安が交錯する初日となった。会期は30日まで。(岩下祐一)

 今回の出展者数は、4千社弱だ。コロナ禍を受け、厳しい行動規制が敷かれた前回展(21秋展=約3300社)を大幅に上回ったものの、19秋展(約4400社)には届かなかった。

 日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)が主催するジャパン・パビリオンには、32社が出展。うち新規出展は6社(島田商事、トーホー、キラリ、ラン、ザ ワン、サンファスニングシステムズ)、数年ぶりの出展企業も6社(日東ボタン、クラボウ、セーレン、モナ・ニット、コスモテキスタイル、蝶理)ある。

 東レや帝人フロンティア、三菱ケミカル、スタイレム瀧定大阪などの日系企業は、国際館などに単独でブースを構えている。

 ジャパン・パビリオンの新規や復活出展が目立つ背景は、中国で昨年末、「ゼロコロナ」政策が解除され、日本から渡航ができるようになったことだ。22年は春・秋展ともに中止になったが、政策転換で延期や中止のリスクが減ったことも大きい。

 中国に拠点を持たない出展者は、ゼロコロナ政策の期間中、中国に渡航できず、顧客との対面の商談ができなかった。この影響で、中国内販の売り上げが縮小したところもある。「年間1千万円の取引があった顧客を失った」と、ある出展者のトップは明かす。

 こうした出展者の同展への期待は大きい。多くが今回展を機に、内販を挽回しようとしている。

 ヤギの香港法人、八木〈香港〉は4年ぶりに出展し、リサイクルコットン糸「リサイカラー」と、それを活用した「クローズドループ・リサイクル」の仕組みを訴求する。中国本土の新規顧客の開拓を再開し、事業拡大に弾みを付けていく。島田商事〈上海〉も4年ぶりの出展だ。これを機に、サステイナブル素材を使った副資材で、内販の掘り起こしに再度注力する。

 一方、不安材料もある。ゼロコロナ政策は解除されたが、景気低迷を受け、中国市場は振るわない。さらに、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を巡り、日中関係が悪化している。

 日系企業にとって期待と不安が交錯する中での開幕となったが、ジャパン・パビリオンはまずまずの人出となり、市況低迷や日中関係悪化の影響は現在のところ、見られない。

 中国市場は、コロナ禍前に比べ、開拓の難度が高まっている。「販売はコロナ禍前の80%ほどにとどまっている」「上海の都市封鎖を経て、7割の顧客を失った」など、ブランド関係者からは厳しい声が聞かれる。半面、スポーツブランドなどの一部は、1~6月業績が前年同期を大幅に上回った。

 いかに勝ち組の顧客を開拓し、取り組みを増やせるかが内販の成否の鍵を握る。今回展は、そのきっかけ作りの重要な機会となる。