特集 スクールスポーツウエア(5)/スクールスポーツ事業 各社取り組み/採用校獲得、安定生産に注力

2023年08月18日 (金曜日)

〈小学校向け対応強み/オゴー産業〉

 学生服製造卸のオゴー産業(岡山県倉敷市)は、スクールスポーツの基幹ブランドである「スポーレッシュ」のほか、道徳心の啓発や寄付を通じて世界の子供たちを支援する「セーブ・ザ・チルドレン」とのコラボレーションモデルなどもそろえながら商品を訴求している。中学、高校に加え、小学校向けの体育着にも対応できる強みを生かし、受注につなげる。

 商品では、防風やストレッチ、軽量、透け防止など、近年体育着に求められる機能を備えたアイテムをラインアップ。大手メーカーと同等レベルの充実した商品群に加え、「素材やカラーリングなど、学校側の細かい要望にも応える」(片山一昌取締役)提案によって、公立中学校を中心に採用につなげている。

 セーブ・ザ・チルドレンブランドでは、再帰反射など体育着の機能面とともに、学校教育や生徒の道徳心の醸成など、教育的な方向からの提案を行う。片山取締役は「セーブ・ザ・チルドレンの考えに共感した学校が採用してくれている」と言う。

 今春の入学商戦では遅れもなくスムーズな納品ができた。来春に向けても引き続き安定生産につなげる。

 来年にはスクールスポーツのカタログの刷新を計画する。「ニーズに応えられる」カタログに仕上げるとともに、生地感を確かめることのできる生地スワッチも用意して提案していく。

〈市況回復に手応え/ミズノ〉

 新型コロナウイルス禍が徐々に収束へと向かう中、ミズノの2022年度販売実績は「前年に比べると回復している」と言う。コロナ感染症の5類移行後、スクールスポーツ市場を取り巻く環境は「コロナ禍前の状況に戻りつつある」との認識を示す。

 同社にとって、スクールスポーツ事業を「しっかりと収益性を保っていかなければならないカテゴリー」に位置付けており、23年度の販売は前年に比べ「増える」との手応えを示す。

 23年度は、昇華デザインや機能性に富んだアイテム、スエットライクな風合いのトレーニングウエアをスクールスポーツウエアのトレンドアイテムに位置付けている。

 少子高齢化に歯止めがかからない中、「使う生徒に商品の良さを感じてもらえるような訴え」を重視しており、23年度は新素材を導入したトレーニングウエアの販促に特に力を入れる。

 SDGs(持続可能な開発目標)を意識した取り組みにも力を入れている。「学校によってはSDGsへの提案依頼がある」といい、24年度に新展開するウエア、シューズ全てに環境に配慮した素材を採用する。

 長くスポーツで培ってきた技術やノウハウをスクールビジネスにも落とし込み、商品だけでなく「トータルで提案できるのが当社の強み」との認識だ。

〈男女共用水着好スタート/フットマーク〉

 水泳用品製造販売のフットマーク(東京都墨田区)はジェンダーレスに対応した「男女共用セパレーツ水着」を今夏から本格展開する。採用校数は期初予想の200校を大きく上回る300校超となった(出荷ベースの推測数)。一般向けの販売とともに今シーズンの販売数はさらに増えそうだ。

 4、5年前に性の悩みを持つ生徒が水着を選べないという販売店からの相談を受けた。すぐには開発に至らなかったものの、性別を問わず肌の露出を避けたいという声は年々高まっているほか、学校で性的少数者(LGBTQ)へ配慮する流れから制服のジェンダーレス化が進んでいることなども後押しし、開発に着手することになった。

 昨夏、東京都と兵庫県の公立中学3校でテスト販売を実施したところ、潜在需要があることが分かった。その後、改良を重ねながら製品化にこぎつけた。

 水着は上下分かれたセパレーツ型となる。長袖の上着は露出を軽減。ボトムスはハーフパンツで、体のラインが出にくい形状を採用した。パターンを微調整し、体形の違いが目立たないデザインにした。このほか、ロック機能式のファスナーや引き手部分のガード、めくれ防止ループを付けるなど、細部にこだわる。

 同社は将来的にスクール水着製品のラインアップを一本化させたい考えだ。

〈スクール水着のタイプは?/菅公学生服〉

 菅公学生服はこのほど、全国の中高生1400人を対象に、水泳の授業に関する意識調査を実施した。

 水泳の授業が「ある」と答えたのは全体の43・4%。ただ、中学生で「ある」との回答が70・3%だったのに対し、高校生は35・5%で、中学生と高校生とで差が出た。

 性的少数者(LGBTQ)へ配慮する流れから、全国の学校で制服を性差の少ないブレザーへモデルチェンジする動きが相次いでいる。そのような背景もあり、スクール水着でも男女別デザインの違いのほか、体のラインや肌の露出などに抵抗を持つ声も上がる。一部では男女共用デザインで、肌の露出が軽減されているデザインへの変更も見られるようになってきた。時代の変化とともに色やデザインで男女を分けないなど、改良が求められてきそうだ。

 水泳授業で着用しているスクール水着のタイプについて調べたところ、「男女それぞれ別のタイプ」が全体で91・1%(中学生92・0%、高校生90・6%)と9割を超えた。「男女共用のタイプ(セパレーツ水着など)」は全体の8・9%(中学生8・0%、高校生9・4%)で、まだ同タイプの水着の採用は少ない。

 同調査では水泳授業の好意度も聞いている。水泳授業があると回答した中高生で同授業が「とても好き」と答えたのは全体の18・8%、「まあ好き」は同29・4%。「とても嫌い」は同25・5%だった。