特集 安心・安全(6)/検査機関/検査が安心・安全支える/カケン/ボーケン/QTEC

2023年08月09日 (水曜日)

 素材、製品の高機能化が進む一方で、その機能が本当にどこまで効果があるのか分からないケースが増えてきた。そんな機能を可視化するのが検査機関であり、多様なニーズが求められる中でその存在感を高めつつある。検査によってさまざまな側面から機能を実証していくことで、ユーザーに対する安心感や安全性を深めていく。

〈各種試験・検査で貢献/チェーンソー用防護服試験も評価/カケン〉

 カケンテストセンター(カケン)は、各種防護服や高視認性安全服に用いられる再帰性反射材の試験を実施するなど、検査機関として安心・安全に貢献している。その中でこのほど対応を始めたのが、手持ちチェーンソー使用者のための脚部防護服の性能試験だ。このうち切断抵抗性試験ができるのは国内ではカケンだけ。

 チェーンソー使用者のための脚部防護服は、規定された領域を防護し、各種要求性能を満たす服を指す。専門伐採者が林業作業時に使用するタイプA(ズボンとレギンス)、不定期作業で使うタイプB(チャップス、脚部保護衣)、頻繁には使用しないタイプC(ズボンとレギンス)がある。

 性能試験は「日本産業規格(JIS) T8125―2:2022」に基づいて行い、切断抵抗性とエルゴノミクス(人間工学)、防護範囲、洗濯による寸法変化、使用材料の無害性、防護用挿入材取付強さの六つが主な項目になる。東京事業所川口ラボで実施し、納期は1~2カ月。

 手持ちチェーンソー用防護服には、履物や手袋、脚半、上半身防護服などがあり、需要の多い物から順次対応していく予定としている。チェーンソー用防護服とは別だが、工場などで使用する作業手袋の耐切創性試験の依頼も増え、これらにも積極的に応じる。

 そのほかの防護服では、防火服や化学防護服など、幅広い分野・用途の試験に対応。再帰反射材では、反射輝度測定に応じている。一定照度の光を試料に照射し、規定の反射輝度以上が得られるかを測定する試験だ。企業の意識向上もあって、これら安心・安全に関連する試験・検査の注目度は高まっている。

〈“冷却”で新試験法開発/EFウエアの機能測定/ボーケン〉

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は冷却や冷感といった機能に対する新たな試験方法を相次いで開発している。いずれも提携するユニチカガーメンテック(UGT)と共同開発したものだ。

 近年、熱中症対策などで暑熱対策商品が相次いで登場した。これを受けてボーケンは新たな試験方法の開発を進めている。その一つが電動ファン付き(EF)ウエアに対する機能性試験。試験対象ウエアを発汗サーマルマネキンに着せ、ファンのオンとオフそれぞれの放熱量を測定・比較する。

 放熱量だけでなく、比較したい製品状態と試料の放熱量が同等となる比較状態の想定環境温度と想定環境温度差も算定できる。これによりEFウエア着用によって具体的に比較状態と比べ何℃の冷却効果が期待できるのかを提示することが可能になった。

 ジェルを使用した冷感敷パッドなどの持続冷感効果試験方法も開発した。体温を想定した熱板を接触させ、試料の表面温度の変化を測定する。接触冷感性試験方法として一般的な最大熱吸収速度(Q―MAX値)測定が瞬間的な冷感性を計測するだけなのに対し、新試験方法は持続的な冷感性を定量的に測定できる。

 そのほか、昨年には水分が蒸発する際に周囲の熱を奪う気化冷却効果を測定する試験も開発した。放熱量を測定するもので、UGTによる官能試験と相関関係を算出することで実際に冷たいと感じられる目安「冷感指数」も開発した。暑熱対策製品が登場する中、既存の接触冷感試験では十分に評価できなかった機能の測定が実現した。

 そのほか、生活用品分野でも製品特性に応じたカスタマイズ試験の提案を進める。評価方法の開発や試験を通じて社会のウェルビーイングの達成に貢献することを目指す。

〈ユニフォームに幅広く対応/防護服でエアロゾル試験も/QTEC〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、ユニフォームに関連する試験・検査を得意分野の一つとしている。工場や建設現場などで着用される作業服、ディスポーザルの医療用防護服、消防団員用の衣服をはじめとする幅広い用途に対応し、安心・安全を支えている。

 作業服関連では、ストレッチ性試験や帯電防止試験はもちろん、夏場では接触冷感性や通気性、透湿性といった試験に応じている。近年は、電動ファン(EF)付きウエアの下に着用するインナーウエアの試験も増えている。着心地やデザインの助言など、コンサルティングを含めた総合的な提案も特徴と言える。

 例えばEFウエア。気化熱冷却を応用しているため、「インナーは早く乾くより、ある程度時間をかけて乾く方が効果的」とする。溶接作業を行う工場で着用した場合に「火花を吸い込む危険もあり、難燃性を持つ素材を使ったインナーが良い」といったアドバイスを送る。

 医療用防護服では、アメリカ医療機器振興協会(AAMI)が定めた規格に基づいて人工血液バリア性試験などを実施。日本では対応機関が少ないとされるエアロゾル試験にも応じる。塩化ナトリウム粒子のエアロゾルを用いて防護服内部の漏れ率を測定する。医療用防護服はオゾン殺菌されており、オゾン処理を施した生地と試験を組み合わせることもできる。

 ファッションアパレルやスポーツアパレルによるユニフォーム分野への進出が増える中、そのサポートにも目を向ける。求められるスペックや機能などについて助言する。縫製工場、検品工場の指導や認証にも取り組んでいる。