特集 スポーツ&アウトドアウエア(2)/素材編 環境配慮素材の需要に応える/東洋紡せんい/ユニチカトレーディング/クラレトレーディング/旭化成アドバンス

2023年08月02日 (水曜日)

 スポ―ツ・アウトドアファッション業界は、持続可能な社会実現に向け、環境配慮素材を使った製品比率向上の取り組みに積極的だ。機能性の追求とともに進化するウエア開発の一翼を担う素材メーカーの注目製品を紹介する。

〈改質で綿を疎水化/繊維to繊維リサイクル推進/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいはスポーツ用途に向けて改質によって疎水性を持たせた綿素材「アイ・コット」を投入する。綿100%でも合繊並みの速乾性を実現した。繊維to繊維リサイクル「T2T」もスポーツ分野で積極的に導入を進める。

 アイ・コットは、本来は親水性であるコットンを原綿改質することで疎水化したもの。このため綿100%でも合繊並みの速乾性や肌離れの良さを実現した。速乾性と綿100%のカジュアル感を生かし、スポーティーカジュアルのゾーンに向けた提案を進める。

 世界的にサステイナビリティーへの要求が強まる中、トーヨーニット(三重県四日市市)やインドネシアのシンコートーヨーボーガーメント(STG)など縫製子会社で発生する裁断くずなど端材をケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルするT2Tもスポーツ用途で積極的に導入を進める。

 同社は高弾性糸と高捲縮(けんしゅく)糸を組み合わせることで高密度とストレッチ性を実現した合繊長繊維編み地「スクラムテック」の好調が続いている。加えて原綿改質技術によって東洋紡グループの短繊維織・編み物の強みも改めて打ち出す。

〈吸放湿ナイロン販売拡大/機能が高い評価/ユニチカトレーディング〉

 ユニチカトレーディングは、吸放湿ナイロン「ハイグラ」の販売を伸ばしている。快適性がキーワードの一つになる中、吸放湿性から生まれる蒸れ感軽減やべとつき抑制などの機能が評価を得る。接触冷感性を高めた「ハイグラクール」などのシリーズもそろえ、拡販戦略を加速する。

 ハイグラは、独自の複合紡糸技術で開発した吸放湿性ナイロンフィラメントで、ナイロンの心地よい質感とさらっとした着心地を兼ね備える。ゴルフをはじめとするスポーツ関連のほか、ユニフォーム用途でも採用が拡大している。パジャマや部屋着用途でも注目度が高まっていると言う。

 接触冷感のハイグラクールに加え、秋冬向けでは温かさと蒸れ感軽減を両立した「ハイグラウォーム」を投入するなど、商品のグレードアップを図っている。同じユニチカグループの検査機関、ユニチカガーメンテックとの連携による提案手法の工夫も拡販に寄与している。

 スポーツ分野では、チームユニフォーム用の昇華プリントの需要が増えており、プリント用生地の備蓄販売を復活した。吸水速乾の「スパッシー」を使ったニット生地(180㌢幅)など5、6品番を展開している。

〈SPS繊維を投入/海外展示会へ積極出展/クラレトレーディング〉

 クラレトレーディングは、このほど開発したシンジオタクチックポリスチレン(SPS)繊維「エプシロン」をスポーツ・アウトドア用途に新たに投入する。撥水(はっすい)加工せずに高い疎水性とドライ感を持たせることができる。

 エプシロンは、出光興産が世界で初めて合成したSPS樹脂「ザレック」を繊維化したもの。疎水性が高く、融点も270℃と高く、耐熱性に優れるためアイロンでのケアもできる。分散染料で染まるため、ポリエステルとの複合でも一浴で染色でき、昇華転写プリントも可能だ。比重は1・04で、ポリエステルの1・38と比較して軽量性に優れる。

 スポーツ用途では速乾性を高めるためにポリエステル繊維に撥水加工を施すことが多いが、エプシロンは撥水加工なしでも高い速乾性とドライ感を実現する。世界的にフッ素系撥水加工剤に対する規制が強化されていることから、フッ素系加工剤非使用の環境配慮型素材としても注目だ。

 国内は25秋冬向けから本格販売するほか、海外市場への提案も進める。そのため国際テキスタイル見本市「インターテキスタイル上海」や国際スポーツ用品展示会「イスポ」などにも積極的に出展し、認知度を高める。

〈透湿防水の開発強化/「ベンベルグ」使いも重点/旭化成アドバンス〉

 旭化成アドバンスはこのほど、スポーツ・アウトドア用のナイロン長繊維織物のブランドを「インパクト」に統一した。インパクトをマスターブランドとし、機能ごとに「Ω」「Σ」「α」「φ」の4カテゴリーをそろえる。

 特に積極提案するのが透湿防止生地のインパクトΣ。撥水(はっすい)加工剤、ラミネート膜いずれもフッ素化合物(PFAS)非使用でバインダーも無溶剤タイプを使用しながら、強度など基本物性はPFAS使用品とほぼ同等の性能を確立した。

 PFASに対する規制が強化されていることに対応した素材として打ち出す。ポリウレタン樹脂加工に用いるジメチルホルムアミド(DMF)など有機溶剤への規制も強化されていることから、これらに対応したコーティング、ラミネート加工の開発も進める。

 編み地はキュプラ繊維「ベンベルグ」使いを重点提案する。ポリエステル長繊維とキュプラなどセルロース系繊維の紡績糸を交編することで速乾性と吸放湿性を高レベルで両立した「モイスカルテット」を開発した。

 再生原料などを活用した環境配慮素材ブランド「エコセンサー」も引き続き積極的に打ち出す。旭化成グループとして独自のリサイクルシステムの構築も視野に入れる。