特集 全国テキスタイル産地Ⅰ(4)/商社編 数々の難局を商工一体で解決/瀧定名古屋/一村産業/スタイレム瀧定大阪/旭化成アドバンス

2023年07月27日 (木曜日)

〈廃漁網活用しモノ作り/瀧定名古屋〉

 瀧定名古屋は廃棄漁網を主原料とする再生ナイロン樹脂「リアミド」を使った生地の販売を進めている。生地は産地別に3種類そろえており衣料向けはもちろん、ノベルティーグッズ向けなど幅広い用途に提案を加速する。

 リアミドは再生素材メーカーのリファインバース(東京都千代田区)が生産する。北海道で回収した廃漁網を厳選し、同社の一宮工場で洗浄したのちペレット化。厳格な管理でトレーサビリティーも実現している。

 瀧定名古屋は同社と協業しリアミドを活用した生地を各産地と連携して開発。尾州、北陸、和歌山といった各産地のモノ作りの特徴を生かした生地をそろえ、紳士服地10課が備蓄販売している。ファッション衣料向けで展開しているのは同社のみとみられる

 尾州産の生地はリアミドと再生ウールの混紡糸を使用。北陸産の生地は長繊維の合繊織物に仕上げた。和歌山産の生地は合繊や天然繊維混の糸で編み立てた。いずれも試行錯誤を重ね商品化にこぎ着けた。

 リアミドを使用することによる廃棄物の有効活用に加えて、同社は海洋環境の負荷低減への取り組みを進める一般社団法人、アライアンスフォーザブルーにも参画しており、今後、売り上げの一部を寄付する計画だ。寄付金は漁場の再生に使われる。

〈北陸との連携で開発強化/一村産業〉

 一村産業の繊維事業は第1四半期(2023年4~6月)、増収減益となった。売上収益が前年比5%増となったが、システム投資に伴う費用増で事業利益は減少した。7~9月は費用増が落ち着くため、上半期合計では増収増益を見込む。

 中東向けのトーブ地などポリエステル短繊維織物が増収増益で、ユニフォームも高通気素材「アミド」やストレッチ生地「ラクストリーマ」などをけん引役に堅調だった。ライフスタイルも増収増益で、国内や欧州向けが伸びた。

 今後は北陸産地との取り組みをさらに強化していく方針。昨年から染色と製織のベテラン技術者2人が金沢に常駐し、産地企業との連携を強化している。

 産地との連携でサステイナブル商品の開発を加速する。サステイナブル商品の販売は昨年度が前年比33%増となるなど順調に拡大。特に機能商品とサステイナブルの組み合わせによる展開を重視する。

 北陸の技術を生かした高付加価値素材の開発にも注力する。丸井織物との共同特許を取得するアミドはその一例で、開発から3年強で累計100万㍍を超えた。今後はリサイクル糸やバイオ糸を使ったタイプや、ナイロン版、綿混タイプなど商品幅を広げていく。

 産地では糸加工や準備工程などのスペース縮小が課題になっている。ここでも新たな取り組みを進める考えで、このほど北陸の撚糸企業と織物の生産契約を結んだ。撚糸技術を活用し、外注を使いながら織物を生産してもらう形になる。

 今後は、物流問題への対応も重視し、産地企業とアパレル企業を結んだシステム構築など出荷の平準化に向けた仕組みを検討する。

〈産地と一体でQR実現/スタイレム瀧定大阪〉

 スタイレム瀧定大阪(大阪市浪速区)は、産地企業や染色加工場との取り組み型ビジネスの積極化やチーム作りに本腰を入れている。その中心的役割を担うのが、2021年2月に発足したテキスタイルSCM推進部だ。飯田悟司テキスタイルSCM推進部長は、「深く取り組める先が着実に広がっている」と手応えを示す。

 発足後まず着手したのが、染色加工場や産地の詳細な現状把握。その結果、特に染色加工工程でボトルネックが発生し、納期に支障を来していることが改めて浮き彫りになった。その後2年間、元々関係性の深い北陸産地や尾州産地の染色加工場と密接な情報交換を続けてきた。

 最優先のテーマはQR。とりわけ海外市場向けでは納期順守や即納体制の構築が契約の必須条件であるため、工場と共にこの改善に取り組んだ。閑散期にプリント下地を作り込んでおき、さらに定番色は染めた上で備蓄しておくなどの施策を、工場と話し込みながら一体で進めた。

 効率的な備蓄機能によって販売の機会ロスを防ぐとともに、効率生産によってコスト低減にもつながった。こうした取り組みが評判を呼び、今では工場側から「一緒に取り組みましょう」と声が掛かることも増えたと言う。

〈独自のテキスタイル展開を強化/旭化成アドバンス〉

 旭化成アドバンスの繊維事業は前期(2023年3月期)、堅調だった。衣料用途では、スポーツ・アウトドア用途などがけん引役となり、資材用途も安定して推移した。今上半期も大きな落ち込みは見られないが、下半期の市場環境には不透明感が出ており、開発強化などの手を打つ。

 前期に好調だった欧米市場に減速感が出ていることなどが背景。下半期の発注はエアジェット織機が堅調なものの、ウオータージェット織機は若干の減速懸念があり、ニットや糸加工も慎重にみている。

 今後はモノ作りを強化しながら次の展開につなげていく。「ベンベルグ」や「ロイカ」などの素材を生かしたテキスタイル展開を強みと位置付け、独自のテキスタイルビジネスに磨きをかける考え。同時にテキスタイルの強みを生かした製品展開の拡大にも力を入れる。

 開発においては北陸産地との取り組みをさらに強化していく。ベンベルグやロイカに加え、アセテートやレーヨン、ナイロンを使った開発にも力を入れ、「海外に通用する素材」を創り上げていく。特に「エコセンサー」を軸にした環境対応品の開発を強化する考えで、スポーツやファッションなどの用途に力を入れていく。