特集 全国テキスタイル産地Ⅰ(3)/商社編 数々の難局を商工一体で解決/蝶理/ヤギグループのイチメン/豊島

2023年07月27日 (木曜日)

〈生産品高度化に応える/蝶理〉

 蝶理の繊維事業の4~6月は堅調に推移した。中高級ゾーンを主力とする製品事業が回復し、素材も販売量が拡大した。素材は自動車用途が回復に向かい、差別化糸の販売も順調に拡大している。テキスタイル販売も中東や中国向けが伸び、国内向けも順調に推移した。

 北陸産地との取り組みも堅調だった。北陸との取引額は前期に新型コロナウイルス禍前の水準に回復。今期からの新中計では、①環境商材の拡大②差別化商材の拡大③北陸品の生地輸出、製品輸出の拡大――などに注力し、2025年度(26年3月期)に250億円を目指している。

 環境商材はサプライチェーン全体でサステイナビリティーを実現する「ブルーチェーン」の取り組みを軸に拡大する。参加企業は140社を超え、近年は川下企業の参加が増えている。北陸企業は約80社で、環境商材の開発において重要な役割を担う。

 生産品の高度化を志向する産地の要望に応え、差別化糸をさらに広げていく。足元では再生ポリエステル「エコブルー」、高伸縮糸「テックスブリッド」、ピン仮撚糸「SPX」などが順調に伸びており、今後は「ブルーニー」などナイロンのサステイナブル糸も拡大を見込む。

〈産地またぐモノ作り/ヤギグループのイチメン〉

 生地コンバーターのイチメン(東京都渋谷区)は2016年、ヤギグループに加わった。以来、グループ内では布帛生地の供給の担い手として独自の地位を築いている。

 同社は綿、麻、ウールなどの天然素材を中心に、先染め・後染めの織物を備蓄販売している。開発を得意とし、国内のコンバーターとしてはトップクラスの開発点数を誇る。

 ファブレスならではの「産地をまたいだモノ作り」を実践できることも強みとする。

 国内では、遠州と滋賀県が後染め、尾州がウール織物、播州が綿先染め織物、福島県がシャツやブラウスの縫製と各産地の特徴を生かした生産ネットワークを構築した。愛知県一宮市に、企画兼生産管理の担当者が常駐する事務所を設置し、各産地との関係強化に活用している。

 海外は中国が大半を占めるが、今後はASEANでの産地の掘り起こしも視野に入れる。国内外で築いた生産背景を最適に使い分けできるモノ作りを追求する。

 百貨店やセレクトショップ向けを主要な顧客層とするが、上下の価格帯への拡販も進める。高級ブランドからショッピングセンターのゾーンまで網羅した販路の構築を目指す。

 欧米、韓国、中国への販売にも力を注いでおり、中国では内販も推進する。

 グループ会社間の連携にも乗り出している。撚糸加工・販売の山弥織物(浜松市)と共同で素材開発に取り組んでいる。

 イチメンの小川佳久社長は「ヤギの原料、テキスタイル、製品の各部署と密に連携しながら、〝布帛の専門家〟としての役割を追求していく。国内のモノ作りを守るため、産地を支える役目も果たしたい」と話す。

〈天然や合繊、多彩なサステ素材/豊島〉

 豊島はサステイナブルな素材を天然繊維から合繊まで幅広くそろえており、全国の産地に供給している。ファッション衣料向け以外にもさまざまな用途での訴求を進めており、ライフスタイル提案商社として存在感を発揮している。

 同社は「テンセル」に始まり、オーガニック綿の普及を目指す「オーガビッツ」といったサステイナブル素材の提案をいち早く推進。顧客のニーズに対応した多彩な商品を打ち出してきた。

 綿での代表的な素材はトレーサブルなトルコ産オーガニック綿「トゥルーコットン」だ。生産者や産地を大切にする価値観を広げることが目的で、生産農場から紡績までの流れを追跡できるトレーサビリティーを実現している。

 ほかにも廃棄予定の食材を染料に活用した「フードテキスタイル」や、廃棄衣料を回収して再生する循環型社会の実現を目指す「ワメグリ」など多岐にわたる。多彩な取り組みや素材の展開によってSDGs(持続可能な開発目標)の達成を目指す。

 近年では合繊素材の提案にも力を入れる。繊維原料に極小セラミックスの粉末を配合し練り込んだ保温機能素材「セルフレイム」や、通常のナイロン糸に比べ2倍の公定水分率を保持している親水性ナイロン冷却糸「オプティマクール」などをそろえる。

 さらに、今年からは廃棄された繊維製品のポリエステル、ナイロン、アクリルの3素材を再生するプロジェクト「テックリサイク」を立ち上げた。海外の生産ネットワークを生かし、CO2排出量の軽減など環境への負荷低減を図る。