特集 2023年夏季総合Ⅱ(6)/成長に向けたわが社の商品・取り組み/ボーケン/ニッセンケン/ケケン/カケン/QTEC

2023年07月26日 (水曜日)

〈ボーケン/新たな領域で役割拡大/社会的責任の一翼担う〉

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は試験方法の開発や環境配慮関連での標準化、品質支援などでの役割を拡大させている。第三者試験機関としてサプライチェーンにおける社会的責任の一翼を担う。

 繊維事業は近年、共同研究開発を推進してきた。その一つがフェムテック分野。取引先と吸水ショーツの評価方法を共同研究開発した。このほどフェムテックの普及を目指す一般社団法人、メディカル・フェムテック・コンソーシアムにも加盟した。また、日本産業規格(JIS)策定にも積極的に参画する。環境配慮型繊維製品に関するJIS開発委員会に参加しているほか、今年からリサイクル繊維鑑別定量化やスマートテキスタイルにおける評価方法の研究・技術開発もスタートした。

 新規事業として力を入れるのが品質支援事業だ。工場品質管理(QC)監査やCSR監査の依頼が順調に拡大している。国内でも人権デューデリジェンスへの取り組みで依頼が増加した。環境配慮関連の取り組みも拡充した。取引先における温室効果ガス(GHG)排出量やLCAの算出などに取り組む人材の育成を進める。アパレル塾など教育支援の充実や環境配慮設計に関する調査研究にも取り組む。

 認証分析事業ではサステイナブル分野への取り組みを強化している。日本バイオプラスチック協会の認定試験機関になり生分解性試験も実施する。このほど、サステナブルアパレル連合(SAC)の製造工程サステイナビリティー評価システムである「HiggFEM」の第三者検証機関に日本で初めて認定された。

 そのほか、機能性事業では千葉大学と提携して新型コロナウイルス抗ウイルス試験を開始した。繊維製品の花粉・ダニ等由来タンパク質の評価試験も始めるなど基盤整備を進めている。

〈ニッセンケン/「エコテックス」原動力に/分析技術で存在感〉

 ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)は、「繊維の安全証明『エコテックス』の認証が着実に増えている」と話す。今後も同認証を成長の原動力の一つとするほか、認証機関として20年以上にわたって積み重ねてきた有害物質の分析技術も顧客に提案して存在感を示す。

 エコテックスは、繊維ビジネスにおける世界に通じる安全の証し。350以上の有害物質の分析試験をクリアした製品に与えられる「エコテックススタンダード100」のほか、化学薬剤の認証「エコテックスパスポート」、生産現場の認証「エコテックスステップ」、最高峰ラベル「エコテックスメイド イン グリーン」などに広がっている。

 ニッセンケンは、欧州以外で唯一の認証機関として2000年に加盟した。安心・安全や環境配慮が重視される中で注目度は高まり続け、新型コロナウイルス禍の下でも認証件数は着実に伸びた。21年12月には西日本事業所京都ラボにもエコテックスの試験室を設けた。

 試験室を京都ラボに設置したことについて、「依頼の拡大でスペースが足りなくなったほか、BCP(事業継続計画)の観点もあった」と説明した。4~5人のスタッフで対応しているが、今後は「人員はもちろん、設備の充実も図っていく」考えを示した。

 加盟から23年間にわたって培ってきた有害物質分析技術も生かす。特定物資の分析の依頼を増やす考えで、繊維だけでなく香粧品分野などにも積極提案する。香粧品分野では抗ウイルスや抗菌などのバイオケミカル試験の訴求にも力を入れる方針だ。

〈ケケン/マイナスイオン試験開始/沖縄県の企業と業務提携〉

 ケケン試験認証センター(ケケン)は、鉱石類の効果検証などを行うレゾナバイオLAB沖縄(沖縄県うるま市)と業務提携し、繊維製品におけるマイナスイオン測定試験を始めている。2月に受託を開始したが、問い合わせは多く、試験依頼も入っており、今後の拡大に期待をかける。

 マイナスイオンは、何らかの方法で空気中に放出された自由電子が空気中の酸素および水分子と結び付き、負に帯電した粒子であると定義付けられている。効果は研究途上だが、近年ではマイナスイオン発生機能を付加したドライヤーやエアコン、空気清浄機などが販売されている。

 新型コロナウイルス禍を経て健康志向が高まる中、繊維関連でもリカバリーウエアなどが注目を集めている。マイナスイオンはそうした流れとの親和性が高く、信頼のおける提携先も見つかったことから測定試験への参入を決めた。2月に提携し展示会などで紹介したところ、興味を持つ企業が多かったと言う。

 試験は、正式な測定方法として規定されている日本産業規格「JIS B9929」を準用。試料(大きさ210×297ミリ)上の空気を採取し、採取した空気中のマイナスイオン密度を測定する。1立方メートル中のマイナスイオン密度の平均値、最大値、最小値を結果として示す。効果・効能は評価しない。納期は10営業日。

 ケケンでは遠赤外線の試験についても検討を進めるなど、健康に関連する試験・検査には積極的に応じていく。また、「ウールを使った繊維製品がどれだけ快適かといった発想もある」とするなど、ウール製品拡大のサポートにも目を向ける。

〈カケン/時代の要請に応じて成長/全有機フッ素試験受託開始〉

 カケンテストセンター(カケン)は、顧客ニーズや時代の要請に応じた試験・検査で成長を図る。繊維業界で注目が集まるPFAS(ペルフルオロアルキル化合物、ポリフルオロアルキル化合物)規制に対応した全有機フッ素定量試験を始めているほか、6月施行の消費生活用製品に関連する新政令にも対応する。

 2004年に残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約が発効し、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(ペルフルオロオクタン酸)の規制が進む。米国ではPFAS全般を規制する動きがあり、カリフォルニア州では25年1月からPFASの含有量が全有機フッ素を100ppm以上含む繊維製品が規制される。

 カケンは、PFASに対応可能な「燃焼―イオンクロマトグラフィー」を導入し、大阪事業所環境化学分析ラボで全有機フッ素の定量試験の受託を1月に開始した。PFOSやPFOAの試験も可能。5ppmまで確認できるのが特徴の一つ。

 6月19日に施行された政令に基づき、磁石製娯楽用品試験にも対応する。磁束指数の測定や小部品シリンダーによる試験、磁石の濫用試験などを行う。磁束指数は誤飲した磁石同士が消化管壁を挟んで引き付け合わず、自然排出される水準であるかを判断するもので、50(KG)2・mm2未満であることが指標となっている。磁石は幅広い用途で使用され、需要は多いとみる。

 抗菌製品技術協議会(SIAA)は、運用している抗ウイルス性試験に、抗ウイルス性評価方法(シェーク法)などを追加しており、カケンもこれに応じる。

〈QTEC/“人”が成長のポイント/新入職員研修など充実〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、「人的資本の活用や人材価値の向上が成長の要」と捉えている。そのためスタッフ教育の充実を図っているが、中でも力を入れているのが新入職員らを対象とした研修だ。2022年度に本格始動し、今年度についても年間で42回の実施を予定している。

 新入職員らを対象とする研修は、仕事上の一般的な知識を学ぶビジネス研修(18回)、業界やQTECを知るための業務研修(9回)、扱う商品などを知る製品知識研修(15回)で構成している。新入職員だけでなく、希望者は自由に受講でき、受けたい講義を選択することも可能だ。

 昨年度はベテラン職員が講師を務めたが、今年度からは複数名の中堅職員が講師を担当する。「人に教えることで自分も成長できる。中堅職員の教育にもなる」と説明する。検査機関は専門性が高い分、属人化が課題となるが、「専門性の高い中堅職員が講師となることで知識が財団全体に蓄積される」と強調する。

 今年度からタレントマネジメントシステムも導入している。人材データの一元管理によって個々人が持っている可能性を生かし、高いパフォーマンスが発揮できる最適な人員配置を行う。同時に「どの部署で働きたいか」を尋ねるアンケートも行っている。

 QTECは正職員全体の約6割が女性であり、女性職員が活躍できる場を拡大することが今後の課題になる。上級管理職の比率向上、将来は女性役員も増やしていきたいとし、そのための研修を計画している。同時に男性管理職の意識改革や啓発にも力を入れる。