特集 2023年夏季総合Ⅱ(5)/成長に向けたわが社の商品・取り組み/東レ/東洋紡せんい/ユニチカトレーディング/帝人フロンティア
2023年07月26日 (水曜日)
〈東レ/“日本製”にこだわる/スポーツ用途で輸出強化〉
東レはスポーツ・アウトドア向けテキスタイルの輸出拡大に取り組んでいる。4月には輸出専任部署としてテキスタイル貿易事業部を新設した。北陸産地などの撚糸や織布企業、染色加工場との連携を強化し、“日本製”にこだわったテキスタイルの開発と販売拡大に取り組む。
スポーツ・アウトドア素材の市況はやや踊り場となっているものの、日本製のこだわりのある生地を評価する高級ブランドや個性派アパレルが存在する。こうした取引先との取り組みを強化することで引き続き輸出の拡大を目指す。
そのためのブランディングも強化した。例えば透湿防水生地「ダーミザクス」はブランドを明確に打ち出しながら、機能性によって3カテゴリーを用意し、ユーザーの要望に合わせたカスタマイズにも対応する。
織物に加えて編み地の開発と提案にも力を入れる。コーティングやラミネートなど加工を施すことでアウトドアでの提案を進め、同時にスポーティーカジュアルにも販売を広げる。織物の販売先に編み地も紹介することで提案に厚みを持たせることもできる。リサイクル素材など環境配慮素材の活用も拡大する。
〈東洋紡せんい/資材分野の拡大に期待/衣料・寝装は素材に重点〉
東洋紡せんいは成長戦略の一つとして、資材分野の拡大を掲げる。それを担うのがマテリアル事業部になる。宮嵜勝浩マテリアル事業部長は2025年度(26年3月期)には「資材売上高で22年度比10%アップを目指す」と意気込む。
資材開拓で期待をかけるのが、天然由来プラスチック「コットンFRTP」。綿のUD(単一方向性)シートである「ウェイシート」と生分解性熱可塑性樹脂を組み合わせれば環境配慮型の繊維補強プラスチックになる。現在は各用途に応じた改良など試作開発の段階だが、自動車内装やパソコン筐体向けなどで開発が進む。加工しやすい特性を生かし木材代替も狙う。
一方、既存ビジネスに対しては「原料、糸など素材戦略に軸足を置く」。衣料用では天然繊維使いによる機能性紡績糸やマスバランス方式も含めた再生ナイロン糸に力を入れる。機能性紡績糸は同社が得意とするもの。春夏向けでは吸水速乾性を持つ「爽快コット」、秋冬向けでは保温性を持つ「エアリーコット」などが現在でも伸長する。
寝装用では原綿改質技術を生かした素材を拡充し、シート状や不織布状で伸ばすなど、素材開発力を生かして、充実を図り、今後の成長につなげる。
〈ユニチカトレーディング/環境配慮素材を重点提案/“製・販・開”グローバル化〉
ユニチカトレーディングは環境配慮素材の拡販と製造・販売・開発のグローバル展開を推進する。環境配慮素材で重点提案商品を欧州市場に積極提案する。
環境配慮素材の拡販では国内に加えて欧州など海外市場を重視。芯に植物由来原料ポリエステル、鞘に綿を配置した複重層紡績糸「パルパーソロナ」、ヒマシ油を原料とする植物由来ナイロン11繊維「キャストロン」、ポリ乳酸繊維「テラマック」を重点素材として提案する。特にスポーツ・アウトドア用途で反響があり、「有力ブランドからの引き合いもある」(芦田直彦常務事業企画本部長)。
一方、サプライチェーンと販売のグローバル展開も重点戦略に位置付ける。中国、ベトナム、インドネシアの子会社を活用し、海外生産だけでなく現地での開発にも力を入れる。そのためグローバル開発センターを設置し、海外拠点に技術者を派遣するなど基盤整備を進めた。「“製・販・開”の現地化することで、内販やASEAN域内販売の拡大を進める」戦略だ。
他社との協働も重視。現在進めているシキボウとの提携のほか、商社との連携にも取り組む。
〈帝人フロンティア/スエード調生地など欧州で/シリーズを基幹素材に〉
帝人フロンティアは、「ポリリズム」シリーズの販売を伸ばしている。コンパクトな“度詰め感”が特徴の「ポリリズム」、環境対応型スエード調生地「ポリリズムSD」とも海外市場での評価が高く、「当初の想定以上に順調」という。同シリーズは、次代を担う基幹素材の一つに育てる。
ポリリズムは、スパン調のポリエステル生地。芯がカチオン可染高収縮糸、鞘がソフト風合いの低収縮糸の2層構造糸を使用しており、染色加工の際に芯の糸が50%以上縮む。こうした工夫によって綿の度詰め生地のような風合いを実現した。スポーツを軸に多用途展開を図っている。
ポリリズムSDは、異収縮2層構造糸をベースに、編み地設計や適正な染色加工を組み合わせて立毛風合いを付与した。起毛を施したようなレーヨンライクなソフト触感が特徴のほか、超高密度による織物調の高級な質感を持つ。非起毛のためマイクロプラスチックの発生も抑制する。
両素材とも海外市場で人気に火がついた。今後は日本国内での拡販にも期待をかける。海外市場ではタコ足型断面ポリエステル「オクタ」が浸透し、同素材を使った生地「サーモフライ」などが人気を博している。