2023年夏季総合特集(8)/成長に向けたわが社の商品・取り組み/蝶理/豊島/御幸毛織/マスダ

2023年07月25日 (火曜日)

〈蝶理/全社的な業務変革を遂行/多様な人材の活躍推進〉

 蝶理は2022年4月、全社業務変革プロジェクト「CARAT」(カラット)を開始した。経営の変革に向け、ERP(経営資源を一元管理するためのシステム)、SAPの導入を進めている。デジタル機能を全社横断的に展開し、業務の効率化・標準化、データを活用した経営管理の高度化、生産性の向上を目指し、併せて人材のリスキリングや組織改編を検討していく。25年度、本格稼働予定。

 カラットは先濵一夫社長がプロジェクトオーナーを務め、各部署から集まったメンバーは30代の社員を中心に構成。SAPに業務を合わせる標準化と現場の間で活発な議論を重ねている。

 プロジェクトサブオーナーの中山佐登子上席執行役員は「商材の品番一つをとっても、品番がシーズンごとに変わるアパレル事業と、品番を海外と統一し法令順守や管理を行いたいとする化学品事業とは全く切り口が異なる。標準化と各事業独自の境界線が課題」と話す。

 カラットという名称には、繊維、化学品、機械とさまざまな顔を持つ蝶理を多面体に例え、その魅力をこのプロジェクトで磨き上げ、さらに輝く未来を目指すという思いを込めている。中山氏は「フラットに整備された業務環境を築くことで、女性の活躍も進めたい」と期待を寄せる。

〈豊島/“イノベーティブな事業づくり”推進/サステとテクノロジー融合へ〉

 豊島は社会に新しい価値観を示して共感を得られる消費者とともに新たな付加価値を生み出す“イノベーティブな事業づくり”を推進している。サステイナブルなモノ作りに加えて最新のテクノロジーを扱うことができる人材の育成を進める。新たな価値とライフスタイルの創造を高次元で提案できる体制を強化する。

 サステイナブルなモノ作りの一環として、サンプル数削減や物流の生産性向上と効率化も進める。余剰在庫や販売機会の損失の削減に対して、販売実績や生産面のデータを活用する。このような取り組みを行うことで、イノベーティブな事業づくりの高度化を目指す。

 3Dデザインソフトを中心に扱う“テクノロジー人材”の育成にも取り組む。デザイン企画室を中心に社内講座を運営し、これまでに50人を超える人材が各部署で実務に役立てている。デジタル専門学校やCG加工企業とも連携を深めつつ、さらなる技術の向上を狙う。

 機会損失削減を目的とした協業も進んでいる。販売実績のデータを販売先と共有し、適切なタイミングで必要な色・サイズの追加発注に関する判断支援も行う。建値消化率の向上と、適時適品の調達精度向上に寄与する。

〈御幸毛織/直営店ブランディング強化/HP刷新「和」と「陰翳」訴求〉

 高級服地製造販売の御幸毛織(名古屋市西区)は、オーダースーツ直営店「ミユキクラフツスーツ」のブランディング強化の一環としてホームページ(HP)を刷新した。「日本の美意識を纏(まと)う」をコンセプトに気品ある上質な服地と満足度の高いサービスを演出する。

 HP刷新に当たり、イメージを「和」と「陰翳(いんえい)」に設定した。日本を代表する服地製造企業として、日本の風土に根差したモノ作りを世界に向けて発信するという思いが込められる。黒色の高級服地の製造にこだわり、極めてきたことを陰翳という言葉で表す。

 動画や静止画の撮影は「外村宇兵衛邸」(滋賀県東近江市)で行われた。“近江商人”の豪商だった外村家は、1905年の御幸毛織創業時からつながりが深く、4代目当主の外村宇兵衛が毛織物の未来に着目。1918年には「外村商店御幸毛織工場」として事業拡大を進めた。それが今日の御幸毛織の基礎となった。

 HPでは店舗とアイテム、生地の紹介に加えてその歴史に触れた特集記事を更新する予定。東京・日本橋と大阪、札幌の直営店3店舗に加えて、婦人服を扱うミユキファムと、イタリア・タイユアタイ社と提携した麻布店の5店舗を対象としている。

〈マスダ/“共によくなる”精神で/社内外連携強化で、新たな価値を創出〉

 生地・製品備蓄販売のマスダ(名古屋市中区)は、生地と製品の定番商材を軸に、適時・適品・適量の供給で販売先のニーズに即応する。全国10箇所・計70人の営業スタッフが全国の顧客とともに時代にマッチしたビジネス構築を具現化に導く体制を強化している。

 166品種の生地定番はエコ素材や再生原料を使用した商材もそろえるが、後加工も駆使し、顧客の差別化ニーズにも対応しながらロスの削減を重視している。顧客の願望を営業スタッフがアイデアを加え実現していくことで高い信頼を得ている。

 116の品種をかまえる定番製品の前期(2023年3月期)売上高は前々期比から3割程の増収となった。数カ年前から取り組む“生地販売と製品化機能をリンクさせる”動きが加速化。国内縫製の背景を活用し、顧客が求める量と形態で供給を実現することで販売先の課題である過剰生産やロスの削減にも貢献する。

 新年度(23年4月)から戦略推進室を増員し、生地・製品を連携した販売形態を進化させる。片岡大輔社長は「マスダが持つ潜在的な力を引き出しながら、価値観を共有する仕入先(チームマスダ)と共によくなることが理想」とする。企業間連携で新サービスの開発・開拓に取り組む。