特集 商社OEM 2023/組織再編で事業の効率化図る/サプライチェーン再構築に注力/クラボウインターナショナル/蝶理/豊島

2023年06月28日 (水曜日)

 アパレル商社のOEM/ODM事業はこの3年余り、新型コロナウイルス禍をはじめとする数々の非常事態に直面し、事業運営の見直しを迫られてきた。時代の転換に対応しながら、厳しい事業環境でも利益を上げられる筋肉質の経営体を作るため、組織再編に着手する動きも加速している。2023年はその具体的な成果が求められる「勝負の年」に位置付けられる。

 MNインターファッションは22年1月、日鉄物産の繊維事業と三井物産アイ・ファッション(MIF)の統合により誕生した。今年4月からは、同社として初となる中期経営計画をスタートさせた。その中で「国内およびグローバルの市場での既存事業拡大」「新規事業への挑戦」というテーマを設けた。

 これらの目標を踏まえ、23年度はコロナ禍で減退した収益力の早期回復を最重要課題とし、その実現のため営業組織を再編した。

 旧日鉄物産は商材別、旧MIFは顧客別と異なっていた組織の形態を統一化した。市場・顧客別を基礎にして商材別の機能も補完する組織に作り変えた。

 顧客別を軸にしたのは、顧客との関係を強化するためであり、新体制で顧客ニーズの開拓に力を注ぐ。融合政策は着実に実務面でも進んでおり、〝旧2社〟という言葉の使用頻度も減っている。

 丸紅も、国内向けのOEM/ODM事業の効率化に向け、国内外の事業会社の再編に踏み切った。中国、香港、ベトナムでは、アパレルと靴のアイテム別に運営していた生産管理の事業会社をそれぞれ1社ずつに統合し、コスト削減を図った。

 国内では3月に、丸紅ファッションプラニングの事業を丸紅ファッションリンクに移管した。ビジネスの最前線に近い位置で、丸紅ファッションプラニングが持つマーケティングや素材提案の機能を生かすのが狙い。人員ごと丸紅ファッションリンクに移し、受け皿となる新しい部署も設けた。

 サプライチェーンについても、ロックダウン(都市封鎖)で商品供給が滞った経験を踏まえ、バックアップの整備を含めた安定した生産体制の構築に取り組む。

 コロナ禍以前は「一つの商品は一つの工場」という形をとっていた。それを、一つの商品の生産を複数の工場で担い、適宜、他工場への振り分けもできる体制に整備している。消費地の近くで生産することを念頭に置きながら、ベトナムを中心とした東南アジアで拠点の拡充を進める。

 モリリンは、不安定な社会情勢から生じる想定外の事態に直面するリスクを踏まえ、24年2月期の重要課題の一つに「中国に偏重した生産背景とサプライチェーンの見直し」を掲げる。営業面の重点政策にも「サプライチェーンと物流の見直し」「海外拠点やグループ企業を含めた総合力の高度化」を盛り込み、不採算な受注を見直しながら、新規事業の獲得で業績を伸ばす方針を打ち出す。

〈新規ビジネス創出に力/深化するサステの取り組み/クラボウインターナショナル〉

 素材メーカー系商社のクラボウインターナショナルは今期の重点方針に、SDGs(持続可能な開発目標)関連を軸とした新規ビジネスの創出を掲げる。サステイナブル関連の商材充実、訴求強化もテーマだ。

 23年3月期決算は前期比増収増益となり、中期経営計画初年度の数値目標も達成した。仕入れコストが上昇し既存取引の利益率は低下したものの、中東民族衣装向けが好調に推移したことや、新規ビジネスが貢献した。

 西澤厚彦社長によると新規ビジネスとして、幾つかのアパレルと新たな取り組みが始まった。その一つが「国産」にこだわったモノ作り。国産を売りにしたい幾つかのブランドのニーズに、同社の素材提案力と、国内縫製工場を自社内に持つ機能が合致した形だ。専任スタッフを配置して新規ビジネスの創出を推進してきたが、ここに来て結果が出始めている。

 サステ関連では、3年目に突入したサステ商材の総称ブランド「エコロジック」のアップデートをこのほど図った。「オーガニック」「リサイクル」「生分解性」「森林保護」「動物愛護」「環境配慮」という六つのカテゴリーは変更なし。ただ、これまでは綿についてはオーガニックコットンのみを対象としていたが、「コットンUSA」「BCIコットン」「フェアトレードコットン」などの国際認証も対象に加えた。

 六つのカテゴリーがどのようなソリューションとつながるかも可視化した。「資源の再利用」「環境負荷軽減」「労働環境改善」という三つのソリューションとどのようにひも付けされるかという系統図を作成し、顧客提案に活用する。クラボウグループだけでなく他社の商材を使用してもエコロジックの下げ札を使用できるのも同ブランドの特徴だ。

 その下げ札も、これまでは1種類のみだったが、3種を新たに加えた。ブランドによって下げ札のデザインの好みが分かれることに対応したもの。

〈サプライチェーン進化図る/STXとのシナジー発信/蝶理〉

 蝶理がSTXを子会社化してから約2年が経過した。この間、「蝶理は合成繊維、STXは天然繊維を得意とする」と言うように、特徴が異なる2社がシナジーを発揮できるための施策を進めてきた。その成果を繊維業界に体感を伴って伝える機会となったのが、このほど東京都内で開催した合同の24春夏向け総合展示会だ。

 そこでは、両社がそれぞれに打ち出す素材を出品し、合繊から天然繊維まで独自性が高い素材がそろう〝蝶理グループならではの商品力〟をアピールした。

 併せて、素材やアイテムの種類、価格帯によって使い分けができる海外の生産背景も紹介した。

 両社はこれまで、STXがベトナムで運営する縫製工場「SGS」(サミット・ガーメント・サイゴン)の有効活用を進め、同工場の稼働の安定化を図ってきた。今展では、レディースとメンズの中高級の布帛製品の生産には、SGSの高い技術力が適していることを強調した。

 一方、レディースのボリュームゾーンについては、中国、カンボジア、バングラデシュ、ミャンマー、インドネシアの生産背景を活用できる供給体制を示した。

 ニット製品に向けた提案の強化も、今展の大きなテーマであり、ASEAN地域で築いた生産背景を提案した。

 インドネシアは、現地で原料から製品まで一貫して手掛けられる体制を築いている。カンボジアについては、中国・天津で編み立てた生地を使って製品に仕上げ、日本に納品するまでの新たな3カ国間物流アレンジを実現させたと言う。ベトナムからは独特の繊細さを生かした製品を供給する。

 丸編み製品については、蝶理の強みである中国、ASEANの工場との連携を生かし、素材調達から縫製まで一貫したサプライチェーンを、顧客に合わせてカスタマイズする生産ソリューションとして提供する方針を打ち出した。

〈DX活用で課題解決促進/情報精度の高次元化急ぐ/豊島〉

 豊島はデジタル技術で企業を変革するDXの取り組みを活用し、課題解決型の“OSM(オリジナル・ソリューション・マニュファクチャリング)”提案を強化する。従来の完納をゴールとしたOEM/ODMから踏み込み、販売・生産面での課題に顧客と共同で解決する精度の高次元化を進める。

 OSMは「生産管理」と「価値創造」の2軸で進める。生産管理のDXは原料から製品までの多様な生産面の情報を、自社開発のプラットフォーム「トヨシマデータジャム」に集約・連携して可視化する。業務の効率化やロスの削減を図るのが主な目的だ。

 生産管理のDXは着実に進化している。同社内の生産情報を集積したデータジャムが完成し、運用を開始した。必要な機能を必要分だけ利用する形態(saas)でなく、個別の要望にオーダーメードで柔軟に対応したスクラッチ型のシステム開発で応える。商流が多岐にわたり情報を活用しにくいOEMの弱みを補完しながら、商品の品質維持・向上も見据える。

 価値創造のDXは革新的なベンチャー企業への投資を通じて3DやCG技術を駆使し、商品企画・開発のオンライン化を目指す。デザインのCG化やパターン・生地・素材をデータ化し、販売実績と連動しながら販売方法の改善策を打ち出す。

 今後強化する点として、はじき出した情報のさらなる精度向上を挙げる。協業先とデータの共有と活用を浸透させ、検証を繰り返しながら、より高次元のレベルに引き上げる。

 豊島は持続可能なライフスタイルの実現に向けた企業ステートメント「マイウィル」に基づきDX化に早期から取り組んできた。現在、特に注力するのは情報セキュリティーの強化だ。プラットフォームの整備や設備更新時に機能を強化するほかに、運用ルールの見直しや補完を行う。社内で講習会などを開き、セキュリティー強化への注意喚起も促す。