特集 環境(9)/新価値の創造へ/豊島/新内外綿/比楽紡績

2023年06月27日 (火曜日)

〈用途広がる「フードテキスタイル」/廃棄食材を染料に再活用/豊島〉

 豊島はサステイナブル素材の普及にいち早く取り組み、環境に配慮した服作りに向け提案してきた。この施策をけん引してきたのが、廃棄食材を染料に再活用する「FOOD TEXTILE」(フードテキスタイル)だ。

 フードテキスタイルは、色の原料を供給する食品関連企業、その生地を使って商品を展開する企業と協業して進めるプロジェクトブランド。従来は廃棄されていた規格外の食材やカット野菜の切れ端、コーヒーの出がらしなどを食品関連企業や農園から引き取り、食材に含まれる成分を抽出して染料に再利用する。

 環境に対する意識が高いアパレルブランドへの採用実績を着実に伸ばしてきた。今春も、中国・上海発のエシカルブランド「ICICLE」(アイシクル)の23春夏コレクション「ナチュラル・ウェイ」に採用された。レタス、抹茶、赤カブなどの花や茎から抽出した色素で染色したエレガントな婦人服が販売された。

 近年はファッションアパレルにとどまらず、インテリア、雑貨、シューズなど用途の幅が広がっている。

 今年のバレンタインの時期には、有名パティシエの辻口博啓氏のパティスリーに、期間限定販売のエコバッグと巾着の素材として採用された。染色にはカカオ豆の外皮から抽出した色素を使った。

 4月にはアシックスがフードテキスタイルを取り入れた「GEL―LYTE Ⅲ OG」「GEL―LYTE V」を発売した。それぞれルイボスと柿、抹茶とレタスというカラーを組み合わせている。

 アシックスはシューズの製造に、原料自体に着色する染色技術を導入しており、フードテキスタイルの取り組みに共感したことが協業につながったと言う。

〈未来へ持続可能性紡ぐ/自然の未利用繊維に活路/新内外綿〉

 新内外綿が地球環境の持続可能性を考えた糸のバリエーションを増やしている。自然界にふんだんにあるが、商業利用されてこなかった植物由来の繊維に着目し、衣料素材としての活路を与えている。

 竹糸がその一つで、10年以上のロングセラーだ。原料となる竹繊維は中国の竹林から定期的に切り出されるものに由来する。綿との混紡糸で竹55%・綿45%の12番単糸、竹30%・綿70%の20番単糸、竹15%・綿85%の28番単糸がある。生地は麻のような爽やかな肌触りでアロハシャツ、作務衣などに適した素材。

 近年、商材に加わった葦糸も竹糸と似た経緯を持つ素材。淀川水系に自生するものを使うため化学肥料などが必要なく環境への負荷が少ない。葦30%・綿70%で26番単糸、10番単糸の展開。竹と同じくシャリっとした清涼感のある手触りでアロハ、デニム、トートバッグといった用途が想定される。「葦」は「あし」とも「よし」とも読むが、「悪し」を想起させるため同社では「良し」の縁起も担いで「よし」糸としている。

 最近ではヘンプを使った杢(もく)糸も新しく加わった。綿70%混で綿のわたにトップ染めのヘンプのわたを混紡し20番単糸、30単糸を試作。24春夏へ提案し、取引先の反応を見ながら当面は受注生産する。竹、葦、ヘンプに加え近い将来、バナナ、パイナップルの未利用繊維も綿の混紡糸として商品化を模索する。

 今年で4年目に入った廃棄繊維のリサイクルシステム「彩生」は生産設備のフル稼働状態が続く。彩生は不要となった在庫反や裁断くずなどを原料に再び紡績糸を作るというもの。7月以降に反毛工程に機械を増設し生産数量の上限を月5トンから10トンにまで引き上げる。

〈再生ナイロン66糸採用広がる/カーペットなどに/比楽紡績〉

 紡毛紡績の比楽紡績(堺市)が備蓄販売する再生ナイロン66短繊維使いの紡績糸が、カーペットなどへ採用され始めた。衣料用を含めて幅広いニーズに対応する。

 再生ナイロン66短繊維は、主に中国で出たエアバッグ用端材を国内でチップにして紡糸する。カーペット向けはリング精紡の3番手、5番手糸を用意する。衣料向けはミュール精紡の10番手、16番手糸に対応。衣料、カーペット用途とも、わた染めや糸染め、後染めできる点も訴求する。

 エアバッグ用端材はノンシリコンを使っている。供給量は多くないが、物性が安定して高品質品を供給でき、コントラクト用ラグなどで使用されている。

 再生ナイロン66長繊維もそろえており、カーペット用再生BCF(かさ高連続長繊維)ナイロン66糸を備蓄販売する。短繊維同様、中国で出るエアバッグ用端材を国内でチップにして紡糸。再生ナイロン100%で、紡糸工程の前段階で顔料を添加して糸自体に色を着ける原着糸と、後染め用の白糸を備蓄する。

 原着糸は黒の1120デシテックス56フィラメントで、コントラクト用のダストコントロールマットや自動車用マットの用途へ訴求する。

 白糸は1120デシテックス56フィラメントと、1170デシテックス80フィラメントの2タイプをそろえてレジデンシャル用途などへの浸透を図る。

 エアバッグ用端材以外のナイロン66素材を集めるルートも確保しており、供給力を高める。

 ほかにもウールノイル、再生ポリエステル短繊維、リサイクルウールも扱い、再生ナイロン短繊維を含めて、このうち一つ以上を使用したサステイナブル紡毛糸を「REWOOL」(リウール)として衣料やカーペット用途に提案している。