特集 環境(8)/新価値の創造へ/東洋紡せんい/三菱ケミカルグループ/クラレ

2023年06月27日 (火曜日)

〈エコシステム構築/マスバランス方式も導入/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいは、「脱炭素」「資源循環」「天然資源の活用」をテーマに多彩な環境配慮型商品をそろえ、エコシステムの構築を目指している。

 天然繊維では、持続可能な農法で栽培する米綿「USコットン・トラスト・プロトコル」認証綿や、環境に配慮して栽培されるBCIコットン、オーガニック素材の国際認証である「グローバル・オーガニックテキスタイル・スタンダード」(GOTS)認証を取得したオーガニックコットンなどを幅広く採用する。

 合繊もマテリアルリサイクルポリエステル繊維「エコールクラブ」を年間約800トン販売している。これにより二酸化炭素排出量を年間約824トン削減できるとする。ナイロン繊維では製造工程で発生する残糸や端材をマテリアルリサイクルした「ループロン」がある。

 新たにマスバランス方式のケミカルリサイクルナイロン繊維の商品化にも取り組む。東洋紡が参加する大手化学企業のシステムを活用するもので、回収した漁網や廃プラスチックなどを化学企業でナフサまで分解し、通常のナフサと合わせて再び粗原料を合成し、ナイロン原料として利用する。

 リサイクルした廃棄物の量に応じてリサイクル原料が使われていると認定される。バージン品と基本性能が変わらないため極細繊度糸などの生産が可能。高密度ナイロン織物「シルファイン」などもリサイクル原料使いにできる点が注目だ。

 自社縫製工場で発生する端材をリサイクルする「T2T」、東洋紡の事業横串でポリエステルのフィルムや不織布をペレットに再生・再利用する「TOYOBOic」もある。繊維廃材をプラスチック強化材として再利用する「アップ・トゥ・サイクル」、綿糸をプラスチック強化材に利用するコットンFRPにも取り組んでいく。

 これらは10月に幕張メッセ(千葉市)で開催される「サステナブルマテリアル展」や、11月の同社総合展で披露する。

〈環境優位性や素材特徴が好評/サステ度高め拡販/三菱ケミカルグループ〉

 三菱ケミカルグループが製造・販売する「ソアロン」は、世界で唯一のトリアセテート繊維だ。天然パルプを主原料とする環境優位性に加え、肌に優しい自然な質感やドレープ性、寸法安定性などが高い評価を受ける。サステイナブル度をさらに高めて国内外での販売拡大につなげる。

 ソアロンは、天然のパルプと化学系原料を反応させて生産する半合成繊維で、持続可能な形で管理された森林の木材を使用し、富山の自社原糸製造工場は森林管理協議会によるFSC―CoC認証を取得。「ブルーサイン」なども取得している。

 製造する糸や生地は「エコテックススタンダード100」認証を取得しているが、基幹染工場が同社協力のもと国内初の「STeP」認証を取得したことで「MADE IN GREEN」の登録もできる。森林保全NGOキャノピーのランキング(ホットボタンランキング)ではグリーンシャツステータスを達成した。

 環境負荷度を数値化・分類し、改善に向けた課題の「見える化」を実現した「ソアグリーンプログラム」を独自に立ち上げているのも特徴だ。生地の温室効果ガス排出量の想定も可能であり、テキスタイル生産の各工程負荷や改善効果も定量的に把握できる。

 環境優位性や素材特徴が評価され、販売は2022年度と比べて順調な動きを見せる。国内はファッションとフォーマルともに回復し、海外は一部で減速感があるが、中東と欧州市場向けが良好。今後もサステイナブル度の向上で欧州トップブランドを軸に拡販を狙う。

 サステイナブル度の向上では、原料メーカーなどとの連携を強化して、ホットボタンランキングでさらなる得点アップを目指す。FSC―CoC認証については染工場までつながったチェーンをアパレルにも広げる。

〈マジックテープで環境配慮/リサイクルタイプも開発/クラレ〉

 クラレグループはさまざまな商品で環境配慮型素材や製法への切り替えを進めている。その一つが、子会社のクラレファスニングが製造販売する面ファスナー「マジックテープ」。環境に配慮した設計と製法を実現した。新たにリサイクルタイプも開発し、昨年12月に販売を開始した。

 面ファスナーは、主にテープ、フック、ループの3部材で構成されるが、一般的な製品はテープにフックとループを固定するためにウレタン樹脂のバックコートを施す。これに対してクラレファスニングは独自の設計と製法によってバックコートをなくすことに成功した。

 バックコートレスとすることで、製造工程で有機溶剤を使わないことに加え、製造時のCO2排出量を従来品に対して約30%削減する。面ファスナーはナイロン製が多いが、マジックテープはポリエステル100%。リサイクルの際に不純物となるウレタンバックコート剤を使用しないことで、リサイクルに適している。ポリエステル製品に使えば容易にモノマテリアルとなることもメリットだ。

 昨年12月から、新たにリサイクルタイプの販売も開始した。材料の約30%(重量比)をペットボトル由来のリサイクルポリエステル糸にした。既にアウトドアブランドが採用を決めるなど反響は大きい。ユニフォームでも採用に向けた商談が進む。

 世界的にリサイクル素材への要求が高まる中、マジックテープはバックコートレスのポリエステル100%面ファスナーとしてリサイクルに適している点を打ち出すことで販売の拡大を進める。衣料用途だけでなく資材用途でも提案を進めており、メディカル分野のディスポーザブル(使い捨て)製品などもターゲットとして視野に入る。