クラレトレーディングのSPS繊維/スポーツなどに積極提案/非フッ素撥水も打ち出す

2023年06月27日 (火曜日)

 クラレトレーディングは、このほど開発したシンジオタクチックポリスチレン(SPS)繊維「エプシロン」をスポーツ・アウトドア用途などに積極的に提案する。疎水性を生かしたドライタッチや耐熱性を訴求するほか、フッ素系加工剤非使用でも高い速乾性を発現できる点などを打ち出す。

 エプシロンは、出光興産が世界で初めて合成したSPS樹脂「ザレック」をクラレトレーディングが繊維化したもの。紡糸条件が難しく、容易に繊維化できなかったが、特殊樹脂の繊維化で豊富な実績を持つクラレグループの溶融紡糸技術によって繊維化に成功した。

 SPSの分子構造は立体規則性を持ち、結晶性が高い。このため疎水性が高く、融点も270℃と高く、耐熱性に優れるためポリプロピレンでは難しかったアイロンでのケアもできる。分散染料で染まるため、ポリエステルとの複合でも一浴で染色でき、昇華転写プリントも可能だ。比重は1・04で、ポリエステルの1・38と比較して軽量性に優れる。

 こうした特性を生かし、まずはスポーツ・アウトドア用途への提案を進める。例えばポリエステル繊維で速乾性を高める場合、撥水(はっすい)加工を施すケースが多い。これに対してエプシロンは疎水性が高いため、撥水加工を施さずに速乾性を発現させることができる。現在、世界的にフッ素系撥水加工剤に対する規制が強化されていることから「フッ素系撥水加工剤非使用を打ち出す」(上野裕樹クラベラ事業部副事業部長兼衣料販売部長)考えだ。

 まずは国内アパレルに対して25春夏向けから販売を本格化させる。来年3月に中国・上海で開催される国際テキスタイル見本市「インターテキスタイル上海」にもエプシロンを出品し、海外アパレルにも積極的に提案する。

〈特殊素材の打ち出し強める/クラベラ事業部〉

 クラレトレーディングのクラベラ事業部は2023年度(12月期)の重点方針として糸・生地ともに独自性を発揮できる特殊素材の打ち出しを強めるととともに、引き続き縫製品ビジネスの拡大に取り組む。

 23年度上半期(1~6月)は、国内アパレル向けが中心のスポーツ・アウトドア分野が糸・生地・縫製品とも堅調に推移している。ユニフォームもワークウエアが回復傾向となった。原糸は特定用途への特化を進めており、導電性糸「クラカーボ」などの販売が拡大した。

 ただ、引き続きエネルギーコスト上昇や円安による海外縫製・調達コストの上昇が続いていることから、「縫製品などではポートフォリオの見直しを進めている」(上野氏)。価格改定が難しい不採算品からの撤退もやむなしとの姿勢だ。

 こうした中、23年度はこれまで以上に独自性のある特殊素材を活用した打ち出しを強める。その一環としてSPS繊維「エプシロン」も開発した。国際テキスタイル見本市「インターテキスタイル上海」や国際スポーツ用品展示会「イスポ」などにも積極的に出展し、海外に向けて独自素材を発信する。

 ウエルネス用途は縫製品の好調が続いていることから、引き続き拡大を進める。シューズ部材など資材用途にも力を入れる。そのためにクラレとの連携も強め、スポーツ用品メーカー・ブランドへの提案を強化する。