豊島/進化するライフスタイル提案/サステ社会めざす事業を多彩に

2023年06月13日 (火曜日)

 豊島は「ライフスタイル提案商社」を掲げ、消費者に持続可能なライフスタイルと未来を提供する企業姿勢を打ち出す。繊維事業で生まれたさまざまな企業との関係性を育み、多彩な事業展開へとつなげている。社会貢献を目指す共感の輪を広げることで、商社としての可能性を切り開く。

〈合繊の再生素材を提案/テックリサイク〉

 オーガニックコットン普及プロジェクト「オーガビッツ」など、豊島は地球環境に配慮した独自の素材提案を推進する。2023年から取り組み始めたのが、海外の生産ネットワークを生かして再生する合成繊維を、グローバル再生素材「TecRecyc」(テックリサイク)として打ち出すプロジェクトだ。

 ポリエステルについては、使用済みペットボトル由来のマテリアルリサイクルだけでなく、生地を化学的に分解し再合成するケミカルリサイクルも取り入れる。試算では、豊島が生産するポリエステル製品を全てテックリサイクに変えた場合、東京ドーム520個分の面積の森林を作るのと同等の二酸化炭素(CO2)の吸収効果が得られるという。

 商品の製造時に発生した端材や廃漁網をチップにし、再生した原着ナイロンも提案する。チップに着色を施すため、発色性に優れ色落ちや色ぶれも起こさず、染色工程での水質汚染も抑制する。

 混紡での使用が多く、リサイクルが困難とされるアクリルも提案に加えた。アクリル再生の技術を持つ海外メーカーと提携し、工場で発生した端材を再利用する。

 森林保全団体の一般社団法人more treesを通じてカーボン・オフセットにも取り組む。テックリサイクのタグを下げた商品は、1点の購入につき10円が植樹などのために寄付される。

〈フェムテックで産学連携/ホガラ〉

 「Hogara」(ホガラ)は女性社員が中心になって立ち上げたフェムテック・フェムケアのブランドで、〝私たちが今ほしいもの〟を追求する。繊維の知識とネットワークを生かし、働く女性の声を反映させたアイテムの開発、販売に取り組む。

 産学連携による商品も生まれた。名古屋市の金城学院大学の学生とともに開発、制作したのが防水機能を持った「Femly(フェムリー)・ペチパンツ」。腹部と臀部(でんぶ)を覆う立体設計で、ウエストや足口は折り返しによって圧迫感を抑えた。股下にも防水布を取り付け、横漏れを軽減した。サニタリーショーツやその上にはくオーバーパンツとして提案する。

 ブランド専用サイトで販売しており、5月にはジェイアール名古屋タカシマヤ(名古屋市中村区)で期間限定店を開いた。

 ホガラは22年に同大学でフェムテックについての講義を行い、学生を対象とした吸水ショーツなどに関する意識調査も実施した。こうした学生との交流が産学連携の商品開発につながった。

〈廃棄衣料の循環システム/ワメグリ〉

 「WAMEGURI」(ワメグリ)は、22年にスタートした循環型社会の実現を目指すプロジェクト。廃棄衣料を回収し、提携先のリユース・リサイクル事業者と連携して再利用の道筋をつける。

 回収した衣料は古着として販売したり、ウエスに加工するほか、素材別に処理し再生を図る。綿やウールは反毛して再び紡績する。ダウンは洗浄し新たな製品に活用する。

 ワメグリは使用済みペットボトルも対象とし、回収から紡績までの全工程を国内で完結させる。

 再生品の出口を増やす取り組みも進める。ライトオンとの協業で廃棄予定のコットン製品を再利用したジーンズを販売したり、自動車輸入大手のルノー・ジャポンが開いたイベントに使用済み衣料の回収箱が設置されるなど、取り組みの範囲が拡大している。

〈独自のモノ作り身近に/バズユー〉

 「BUZZU」(バズユー)は22年12月から運営するモノ作り支援のサイトで、誰でも簡単にオリジナルグッズやTシャツを1枚から制作できる。サイトにログインした後、選んだアイテムに自身で決めたデザインを合わせて注文する仕組みで、アイテムはエプロン、トートバッグなどさまざまな種類をそろえた。

 「オーガビッツ」のオーガニックコットンを100%使用した寄付金付きのTシャツ、廃棄予定の食材から抽出した色で染めた「フードテキスタイル」のTシャツなど、豊島ならではのサステ素材を使ったアイテムの制作ができるのも特徴。

 SNS分析機能を搭載したため、インスタグラムやユーチューブのアカウントと連携させ、フォロワーの属性や関心度を分析することで、ファンのニーズに応えるモノ作りも可能にした。

 今後はバズユーの活用を広げるための情報発信にも力を注ぐ。

 ライフスタイルブランド「ベイフロー」が10日、「イオンモール大高店」(名古屋市緑区)で開いたオリジナルハンカチ制作の体験イベントにバズユーが活用された。参加者は、タブレット端末を使って完成させた動物の塗り絵を好みのサイズや位置にカスタマイズして楽しんだ。

〈生産者守る意図に共感の輪/トゥルーコットン〉

 トレーサブルなオーガニックコットンの素材ブランド「TRUECOTTON」(トゥルーコットン)は、綿花農場や紡績工場で働く人たちが守られているとの確証も可能にした。生産者や産地を大切にする価値観をファッション業界に拡散することを目指す。

 今春は、発信力のあるインフルエンサーと連携した商品展開が続いた。

 自然体のライフスタイル提案で知られるインスタグラマー・石岡真実さんの監修で、掛けふとん、BOXシーツ、ピローケースを制作。3月中旬から1カ月間、ネット通販を行った。

 モデルでデザイナーのマリエさんが展開するブランド「パスカル・マリエ・デマレ」のトートバッグの素材に採用され、同ブランドの期間限定店の品ぞろえに加わった。