特集 ITMA(6)/新技術の開発進む/高山リード/カトーテック/タジマ工業/道下鉄工/ニッタ・インダストリーズ・ヨーロッパ

2023年05月30日 (火曜日)

〈密度変更、結び目対応/AJ用測定器の小型版も/高山リード〉

 リード(筬)製造の高山リード(金沢市)は1羽ごとに密度を自由に変更できる筬や結び目問題を解消する筬などを訴求する。1915年筬修理業として創業。現在は筬生産に加え、スイス製を主体に物性試験機、測定器類も販売する。

 羽密度を自由に設定できる筬は織物の密度むら(色差の改善など)、織物ロスの低減などにつながる。1羽ごとに密度を設定できるため、どの場所でも密度を変えられる。特に織り縮みが大きい織物の品質改善やデニムの色差改善に寄与する。

 結び目対応筬「マジックリード」はタイイングマシンによる結び目が筬羽の隙間より大きいことが多く、無理に通過させると結び目が切れて結び直しなどの作業が多発することを解決する。同製品は特殊な羽形状でこの問題を解消し生産性を向上する。ろ過布用など大型は経糸交換作業時間も大幅短縮できる。

 その他、サブノズルを適正にセットし、エアジェット織機の安定稼働に寄与する測定器の小型版「TR―7700SN mini」や各種筬、メンテナンス機器も展示する。

 同社の販売先はインド、中国、欧州、米国、バングラデシュ、インドネシア、パキスタン、トルコなど約80%が海外。インド向けは省エネ効果を兼ね備えた「e―REED」の強化と短納期、中国は品質・価格、欧米は大型筬や経糸準備機用筬の拡大を課題に挙げる。

〈機器で風合い客観評価/接触冷温感、圧縮なども/カトーテック〉

 カトーテック(京都市)は、手の感覚による主観的な指標である風合いを客観評価する試験機を製造販売する。微小な荷重領域において高精度で再現性の高い計測技術を実現した「KES」シリーズは風合い判断熟練者の官能評価と高い相関性があり、繊維以外にも化粧品、食品、自動車などで活用される。

 今回展では「風合い」「京都らしさ」、そして「アップサイクル」をテーマに、表面試験機「KES―N4」、接触冷温感試験機「KES―QM」、ウエアラブル接触力センサー「HapLog」、圧縮試験機「KES―G5」などを出品する。

 KES―N4は摩擦係数とその変動、表面の粗さなどを数値データで取得できる。N4は新開発の検出器により微細な表面の粗さ・凹凸を測定できる。KES―QMは熱流量ピーク値「qmax」を自動測定するもの。HapLogは資生堂と研究開発した。モノをつかんだ時の力、指を使って動作した時の力を測定する。KES―G5は圧縮試験機で、圧縮剛性、圧縮エネルギー、回復性のデータが得られる。紙おむつのソフト感、ムース泡の硬さなどさまざまな分野に使える。

 同社は中国、米国の電気自動車を重点市場と位置付ける。自動運転の進展で車内空間の快適性を求められるため、触り心地の良否判定への重要性が高くなるとみている。

〈AI搭載刺しゅう機紹介/管理システムと連動実演/タジマ工業〉

 タジマ工業(愛知県春日井市)は自動上糸調整機能(i―TM)を搭載した単頭型AI刺しゅう機「TMEZ―SC」とネットワーク管理システム「DG.NET」により刺しゅうカスタマイズの効率的運用をデモンストレーションする。

 ECサイト受注プロセスでは刺しゅうカスタマイズの完成プレビューを実現し、刺しゅうデータを自動生成する。刺しゅう生産では人工知能(AI)による自動上糸調整により、作業者の経験に左右されず高品質な刺しゅうを安定生産する。

 多頭式などの大型機をはじめとする全ラインアップを見れるように、イタリア代理店であるスタジオ・アウリガのショールームへのシャトルバス運行も予定する。

 スウェーデン・カラーリール社の染色ユニットとAIによる上糸調整機能搭載のTMEZ―SC1501Cの組み合わせも参考出品する。糸染めしながら刺しゅうするため、糸の廃棄、環境負荷の低減につながる。AI刺しゅう機が染糸の違いによる縫い上がりの差を自動調整。糸の滑りの違いによる影響を受けずに安定生産できるという。

 同社は刺しゅう機だけでなく、AI、ネットワークなどソフトウエアを強化するため、昨年8月にタジマ・ソフトウエア・ソリューションズを設立している。

〈リニアモーター機訴求/超高速、高精度で位置決め/道下鉄工〉

 タフトカーペット機など製造の道下鉄工(堺市)は「ITMA」初出展となる。中国など主力のアジア向けに加えて欧米での知名度向上を図るのが狙いで、ブースに実機は置かずに、パネル展示やパンフレットの配布、ビデオ放映などで提案を行う。

 この数年、海外を中心に販売台数を拡大してきた。5~6年前まで年間約8台だった納入台数は、2022年には3倍強の約26~27台まで増えた。海外販売が主力で中国をメインに19年からはインドやタイへの輸出も伸びる。

 同社製タフトカーペット機(人工芝製造機も含む)はちょうどよい機械という点が特徴。大手の欧米製よりも安価で中国製よりも高価だが、高速生産でも壊れにくく価格と品質がマッチする点が評価される。

 今回展では特にリニアモーターにより超高速で動き、高精度で位置決めができるニードルバーによる柄出し装置や、糸を1本ずつ制御する糸送り装置「ICY」装置を搭載したタフトカーペット機を訴求する。

 リニアモーターによる柄出し装置は日本、中国、欧州連合(EU)、米国で特許を取得する。

 同社は1948年創業。精密部品の加工技術を生かして、98年にタフトカーペット機製造に参入した。

〈両面に帯電防止付与/主力の紡績用ベルトに/ニッタ・インダストリーズ・ヨーロッパ〉

 産業用ベルト製造のニッタ子会社のニッタ・インダストリーズ・ヨーロッパはリング精紡機やオープンエンド紡績機など向けの各種ベルトを訴求する。デモストレーション用の小型機械も置く予定だ。

 同社はこれまで「ITMA」に継続出展してきた。出展を通じて、新規顧客の開拓だけでなく、繊維機械の最新情報を収集するという狙いもある。今回展では帯電防止機能を高めた紡績用ベルト、「ポリスプリント TFL―BK22E26―2」を同展では初めて披露する。

 従来品はベルトの片面だけの帯電防止性だったが、ベルト両面に付与することで、帯電防止性がさらに増した。

 同社の紡績用ベルト販売は海外向けがけん引する形で安定しており、東南アジアや中国、中央アジア、インド、東欧、北アフリカ、南米向けなどが伸びていると言う。