特集 ITMA(1)/繊維機械の新技術披露/重要テーマに「サステ」/デジタル活用も進む

2023年05月30日 (火曜日)

 繊維機械の国際展示会「ITMA」が6月8~14日に、イタリア・ミラノのフィエラ・ミラノ・ローで開催される。4年ごとに開催されるため繊維機械のオリンピックともいわれる展示会で、繊維機械の新技術が発表される場として知られる。今回展は繊維機械の普遍的なテーマである高生産性や高品質などに加え、デジタル技術の活用やサステイナビリティーなどが重要なキーワードとなりそうだ。

 ITMAは4年ごとに欧州で開かれる繊維機械の国際展示会で、多くの繊維機械メーカーはここをターゲットに研究開発を進める。出展企業は紡績、合繊、ニット、織物、染色仕上げ、デジタルプリント、不織布など幅広く、新技術を見るために世界中から繊維関係者が訪れる。前回(2019年)のITMAバルセロナでは45カ国・地域から1700社超の出展があり、来場者は10万人を超えた。

 ミラノでは15年以来、8年ぶりの開催となる。今回も展示面積20万平方メートルが全て埋まり、44カ国から約1600社が出展する。

 会場は20分野に分けて展示を行う。1館と3館、2館の一部は紡績、合繊、ワインダーのほか、「リサーチ&イノベーション」「スタートアップ」関連の展示になる。2館の1部と4館はニットと検査機械で、5館と7館はデジタルプリントやインク、染料・薬剤関連になる。

 デジタルプリントは前回ミラノ開催の15年から、染色仕上げ部門と分けられる形で専用館が設けられた。ITMAバルセロナではスペースを拡大し、回を追うごとに注目を高める分野の一つになっている。

 織機、不織布関連は6館と10館、染色仕上げ関連は11館、14館、18館と9館の一部が使われる。9館はガーメントマーキング、刺しゅう、複合材料、ロジスティクス、リサイクル、ソフトウエアなどの企業が集まる。

 日本の繊維機械メーカーは海外拠点からを含めて多くの企業が参加する。村田機械、TMTマシナリー、豊田自動織機、津田駒工業、福原産業貿易、島精機製作所、AIKIリオテック、京セラ、セイコーエプソン、湯浅糸道工業、阿波スピンドル、カトーテック、イズミインターナショナル、高山リード、梶製作所、道下鉄工などさまざまな分野の企業が参加する。

〈各社が新機種発表〉

 前回のITMAバルセロナから現在までの間には新型コロナウイルス感染拡大があり、今回展は通常とは異なる状況での開催となる。この間には、生産地の再セットに伴う繊維機械需要の拡大やサプライチェーン混乱による部品不足の問題などがあった。世界の展示会スケジュールもコロナ禍の影響を受け、2年ごとに上海で開催されるITMAアジアは日程の変更が続いた。通常だとITMAの前後の年にITMAアジアが開催されるが、今回は6月のITMAミラノに続いて、11月にITMAアジアが開催される。

 一時はコロナ禍による工場閉鎖もあり、世界的なサプライチェーン混乱による部品不足は足元も続いている。このことから開催前には研究開発の遅れも懸念されたが、今回展も多くの新技術が発表される場となりそうだ。

 村田機械は自動ワインダーの新機種を紹介し、TMTマシナリーは仮撚り加工の新技術のコンセプトを紹介する予定。豊田自動織機はエアジェット織機の新機種「JAT910」を出し、インクジェットプリンターヘッドの京セラはITMAを機にプリンター本体に進出する。海外勢も新しい提案を用意しており、ピカノールはレピア織機の新機種「アルティマックス」を発表し、ストーブリはドビー機の新技術を展示する。

 前回のITMAバルセロナでは「インダストリー4.0」と「サステイナビリティー」の切り口が注目されたが、今回もこの二つは重要なテーマとなる。欧州繊維機械製造者委員会(CEMATEX)のエルネスト・マウラー社長は、「持続可能性は単なる流行語ではない。業界はより迅速に行動する必要がある。パンデミックの間、多くの企業がリソースを研究開発活動に注ぎ込んだ。ITMA2023は、新製品と最先端技術を紹介する機会を提供するのに最適なタイミングだ。研究開発と持続可能性への取り組みが組み合わさることが成功につながる」とコメントした。

 サステイナビリティーへの流れの中、各分野で省エネ技術の進化が見られ、無駄のないモノ作りに向けた提案もさらに進化する。

 デジタル技術の活用は稼働管理やバーチャルサンプリングなどさまざまな方向から進むとみられ、デジタルプリントでは染料インクよりも水使用量を削減できる顔料インクの提案が進むとみられる。多くの繊維生産国が悩む人手不足への対応として、自働化・省人化への新たな提案も注目を集めている。