特集 快適・衛生機能の繊維(2)/快適で生活を豊かにする素材・製品メーカー/大和紡績/ダイワボウレーヨン/靴下のハラダ「デオゼロ」/シキボウ

2023年05月25日 (木曜日)

〈天然由来成分での加工充実/フェムテック切り口に/大和紡績〉

 大和紡績は、天然由来成分による後加工素材を充実させている。天然系の優しいイメージを生かし、新たな市場の深耕につなげる。

 シルクのマイクロパウダーを用いて吸湿・放湿性を付与した「アミノモイスト」は、多孔質のシルクフィブロインによって保湿性を高め、ソフトな風合いも特徴だ。「アミノピュア」は化粧品にも使われる、サイトウキビなど天然成分から作られた安全性の高いアミノ酸(誘導体)によって複合的な機能を持たせた。保湿に優れ、乾燥しやすい季節でもしっとり感を保つ。抗菌防臭に加え、ソフトでしなやかな風合いを持つ。

 抗菌防臭加工の「シトラスガード」は化粧品にも使われる、グレープフルーツの種子エキスを使用。同じ抗菌防臭加工の「ハーブトリート」は、ヨモギ、アロエ、シソを主成分とする天然薬草エキスを使うことで、肌への安全性を高めた。キシリトール成分を活用した涼感・速乾加工素材「クールドライX」は、水分を吸水すると温度が低くなる吸水吸熱と、汗を素早く拡散、乾燥させる。

 これらの加工では天然由来の優しいイメージを通じて女性向けの吸水ショーツや、寝装品での経血漏れ対策商品などへの提案を検討。女性の悩みに先進的な技術によって製品やサービスで対応するフェムテック関連商品への販路開拓にもつなげる。

〈強力消臭レーヨン本格化/フェムテック向け開発推進/ダイワボウレーヨン〉

 ダイワボウレーヨンは、得意の機能材練り込み技術によって開発した強力消臭機能レーヨン「ATL」の提案・販売を本格化させる。関心が高まっているフェムテック分野に向けた開発も推進する。

 ATLは、高機能な消臭機能材を練り込んだレーヨン短繊維。機能発現速度、耐久性、消臭力いずれでも高い性能を持つ。同社の調べでは、アンモニアの臭気を10分間で79%低減し、洗濯100回後も消臭機能が低下しない。また、2倍のガス濃度のアンモニア臭気も2時間で90%低減する強力な消臭力が特徴だ。

 “スピード”“スタミナ”“パワフル”という三つの特徴を兼ね備えた強力消臭機能レーヨンとして打ち出し、今期から販売を本格化させた。既に保温インナー用途で採用実績があり、そのほかのアイテムのテキスタイル向けでも採用が決まるなど市場からの評価は高い。

 新たな開発に力を入れているのが社会的関心も高まっているフェムテック分野に向けた機能レーヨン。やはり消臭や保温といった機能を切り口に開発を進めている。テキスタイル向けと不織布向けの両方で開発を進める。

 同社はそのほかにも清潔や快適に焦点を当てた機能レーヨンを多彩にそろえる。原綿段階で機能を付与できることも利点として打ち出し、機能レーヨンの販売拡大に取り組む。

〈抗ウイルス、売れ行き安定/コロナ禍で関心高まる/靴下のハラダ「デオゼロ」〉

 靴下製造卸、ハラダ(奈良県桜井市)の抗ウイルス加工商品が量販店で定番的に売れるようになっている。同社独自の抗ウイルス加工「デオゼロ」をブランド名としメンズ、レディース、キッズソックスで販売する。

 同社の2023年4月期の売上高は25%増と昨年に続き好調。原田慎太郎社長は前期の好業績について「10代女性向けのトレンド商品がけん引した」と振り返る一方、「デオゼロが量販店の定番商品となり、毎年一定数売れるようになったことも飛躍の土台になった」と説明する。

 デオゼロはファッション分野やトレンド商品を主力とするハラダにとっては無地でも売れる、珍しい機能商品だ。「こうした機能性のカテゴリーでなかなか食い込めなかったが、デオゼロでようやく一定の売り場を占めることができるようになった」(原田社長)

 15年に繊維評価技術協議会が認証する「SEK抗ウイルス加工マーク」も取得しており、その効果は確かだ。新型コロナウイルス(ヒト)に対する抗ウイルス性も確認済み。コロナ禍の中でウイルスへの関心が消費者の間で高まったことがブレークするきっかけになった。

 デオゼロは複数の金属イオンをアミノ酸に拡散させたアミノ酸金属イオンを用いた抗ウイルス加工・加工剤。ハラダと寝具製造卸のマルゼン(栃木県宇都宮市)、抗菌性金属を研究開発するCSL(名古屋市)の3社で加工薬剤を共同開発した。

〈ストレス臭など抑制/マスク外す機会捉える/シキボウ〉

 シキボウは、後加工で汗臭だけでなく尿漏れ臭に効果のある「スーパーアニエールP」、ストレス臭に効果のある「スーパーアニエールS」の販売を本格化する。汗臭に対応した加工は他社からも多く展開されているが、尿漏れ臭やストレス臭といった、より特定の臭いに対して効果のある加工は珍しい。

 8日から新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行し、マスクを外す機会が少しずつ増えてきた。そのような中で「これまで感じていなかった臭気に敏感になるケースも増えてくる」と予想されることから今回の開発に至った。

 スーパーアニエールPは、時間がたってから尿の成分が分解されることで発せられる強い臭気の元になるパラクレゾールに加え、アンモニアへのダブルの効果で消臭機能を発揮する。抗菌性も持たせ、できるだけ菌の発生を抑えることで臭いの発生も抑制する。

 スーパーアニエールSでは、たくあんのような臭いとされるジメチルトリスルフィドと、ニンニクのような臭いとされるアリルメルカプタンに効果がある。仕事や人間関係などで緊張感のある場面が増え、ストレスにより何らかの臭いを感じている人が増えているとされる中、新たな需要を掘り起こす。

 いずれも独自の消臭効果試験では80%を超える性能値で、洗濯10~30回程度であればそれほど機能は落ちないと言う。