帝人/“背水の陣”で改革断行/課題3事業の収益性改善へ
2023年05月16日 (火曜日)
帝人は、業績が低迷している複合成形材料事業、アラミド事業、ヘルスケア事業を課題事業と位置付け、2023年度(24年3月期)に収益性改善に向けた構造改革を断行する。内川哲茂社長は「背水の陣で臨む」と強調し、改善が見込めない場合は一部事業の売却なども選択肢から排除しない考えだ。
22年度決算は売上高1兆187億円(前期比10・0%増)と増収ながら、営業利益128億円(70・9%減)、経常利益91億円(81・7%減)と大幅減益となった。減損損失の計上もあり、176億円の純損失に沈む。特に業績の足を引っ張ったのがマテリアルセグメント。炭素繊維事業は航空機需要などの回復で黒字浮上したものの、複合成形材料事業とアラミド繊維は原燃料高騰や設備トラブルなどによる生産性悪化で赤字だった。このためマテリアルセグメントは売上高4560億円(18・4%増)ながら営業損失204億円となる。
ヘルスケアセグメントも売上高1524億円(13・0%減)、営業利益235億円(45・7%減)と大幅な減収減益。医薬品は後発品との競争が激化し、薬価改定の影響も大きかった。
このため23年度は複合成形材料事業、アラミド事業、ヘルスケア事業の収益性改善に重点的に取り組む。役員・スタッフの経営体制変革も進め、全社レベルでの構造改革を断行する。23年度までに300億円以上の利益改善を目指す。
複合成形材料事業は約130個の改善策を策定・実行し、本社によるモニタリング体制も強化することで実行力を高める。価格改定を進め、生産性改善に取り組む。特に北米事業に関しては改善が見られない場合、売却も含めて事業継続の可否を判断する。
アラミド事業は、昨年の原料工場火災事故による生産性低下からの復旧を進め、23年度第1四半期(4~6月)中にはフル稼働とする要諦だ。火災を契機に生産拠点である日本とオランダのチームによる現場力強化の取り組みを実施し、「安全」「品質」といった強みを再強化する。
23年度はマテリアルセグメントで売上高4700億円(3・1%増)、営業利益110億円の黒字浮上を計画する。
ヘルスケア事業は「既存製品極大化」と「事業基盤を生かすことのできる希少疾患・難病等の医薬品導入活動」への特化を進める。
〈繊維・製品は産資回復へ〉
帝人の繊維・製品セグメントは23年度に売上高3150億円(2・1%減)、営業利益100億円(前期比横ばい)を見込む。
内川社長は「衣料繊維は昨年後半からグローバルアパレルからの受注が鈍化しており、今期もその傾向が継続している」と指摘。ただ、産業資材は自動車関連の市況が回復傾向にあり、水処理フィルター向けポリエステル短繊維のさらなる販売拡大も見込む。「衣料のマイナスを産資の回復でカバーする」戦略だ。