繊維機械/世界需要に減速感/ITMA後の動きに期待
2023年05月01日 (月曜日)
世界の繊維機械需要は2020年秋ごろから好況が続いたが、昨年後半から減速感が出ている。この間、好況が通常時より長く続いたこともあり、「回復まで時間がかかる可能性がある」との懸念も出ている。ゼロコロナ政策が明けた中国の動きもまだ鈍く、足元では6月の国際繊維機械展「ITMAミラノ」後の動きが注視されている。
(星野公清)
世界の繊維機械需要は18年の好況を経て19年は冷え込み、新型コロナウイルス禍が追い打ちをかけた。しかし、コロナの影響は短期間にとどまり、20年秋に急回復した。日本繊維機械協会によると、21年は受注額が前年比2・1倍、販売額が同80%増に拡大した。
21年からの需要拡大は、コロナによる特殊事情も絡んだとみられる。市場に近いところで作るなど生産地の再セットが進み、経済対策として設備投資に関する補助金も各国で打ち出された。部品不足などによる長納期化を見越した早めの決断もあった。この間に過去最高水準の受注を得る機械メーカーも見られ、「通常よりも好況期が長く続いた」という声は多い。
しかし昨年後半から様相が変わり、減速感が出ている。欧米など繊維製品の最終市場の景気低迷や繊維機械の一大市場である中国の失速などが背景にあり、稼働率低迷で設備投資計画を延期する動きも出た。この数年は積極的な投資が目立ったトルコは落ち着き、ゼロコロナ政策が明けた中国もまだ投資意欲は戻っていない。
合繊機械のTMTマシナリーは近年、主力の中国向けが順調に推移してきた。前々期(22年3月期)は過去最高の売り上げとなり、前期は部品不足の影響があったがほぼ計画通りに推移した。
受注残で今期も売り上げは堅調に推移する見通しだが、受注は厳しくなるとみる。中国のポリエステル市況が落ち込んでいるためで、設備投資計画の延期が出ることも懸念する。中国の市況回復を25年とみる声もあり、新商品の提案や新市場開拓などの手を打っていく。
丸編み機の福原産業貿易は中国やトルコ向けがけん引する形で2年ほど順調に推移してきた。22年5月期はこの10年で最高の売り上げとなったが、22年後半から状況が変わり、今年に入ってから失速した。引き続きインドやバングラデシュ、パキスタンなどからの引き合いが増えているが、ベッドマットレス用の高付加価値機が好調だったトルコが落ち込み、ゼロコロナ政策が明けた中国もまだ回復していない。部品不足の影響も続いているため、今年の市場環境は慎重にみている。
関係者の中には国際展示会が控えていることも足元の停滞感の一つとみる向きもある。今年は、4年ごとの開催で繊維機械メーカーが新技術を発表する場となっているITMAが6月にミラノであり、11月には上海でITMAアジアが開かれる。ITMAアジアのスケジュール変更で国際展が同じ年に開かれる形となり、設備投資の決断を展示会まで待つ動きもあるという。当面の期待材料として展示会後の動きが注視される一方、好況期が長くなった分だけ回復に時間がかかるとみる声もある。