春季総合特集Ⅴ(2)/Topインタビュー/菅公学生服/社長 尾﨑 茂 氏/インバウンドにも対応/増加するブレザー生産に注力

2023年04月28日 (金曜日)

 近年、性的少数者(LGBTQ)へ配慮する流れで制服のブレザーへのモデルチェンジ(MC)が急増する中、菅公学生服も今入学商戦でMC校の旺盛な受注に対応した。来年以降もMC校数はさらに増えるとみられ、これを見据えた体制構築と対応を進める。近年力を入れる教育ソリューション事業ではさまざまな仕掛けで教育現場をサポートする。

  ――インフレを好機とするには何が必要でしょうか。

 訪日外国人(インバウンド)の取り込みしかありません。日本の物価は海外に比べるとまだ安く、日本に来れば商品を安く購入できます。

 インバウンドに関して言えば、当社ではセレクト制服の販売やレンタルを行う専門店、「カンコーショップ原宿セレクトスクエア」を東京・原宿で運営しています。新型コロナウイルス禍前にはインバウンド客も多かったです。今年は商業施設のイクスピアリ(千葉県浦安市)に同業態の店舗をオープンしました。引き合いがあれば今後の出店も考えます。

 学生服では、値上がりしている素材を使って国内で縫い、国内で販売しています。原材料やエネルギー価格など、これだけコストが上がっていると、それを吸収する場所がなかなか見つからないのが現状です。

  ――今春の入学商戦の進捗(しんちょく)について教えてください。

 LGBTQに配慮する流れで、中学校を中心に制服のMCが全国的に活発になっています。当社でもMCの獲得数はこれまでに比べて随分と多くなっています。さらに詰め襟やセーラー服がブレザーに置き換わっており、生産する品目のバランスも変わってきています。そのため、品種転換も当然のごとく起こっています。

 生産においては、素材の入荷が遅れた影響が顕著に出ました。そのため、12、1月あたりの生産が計画通りに進まず、入学式前の生産にしわ寄せがきたことで、納期に追われる状態が続きました。

  ――来年以降もMC校の増加傾向は続くとみられます。その対応策について。

 採用が増加しているブレザー、スラックスを中心に、生産ラインを増やすなど生産能力を増強していきます。アイテムの一部に関しては海外生産も活用していきます。

 働く人を集めるのも課題です。コロナ禍で減った外国人技能実習生の人数は徐々には増えていますが、コロナ禍前の水準までには戻り切っていません。

  ――今後の設備投資の予定は。

 これまで、営業から生産、物流までを一気通貫で一元的につなげる業務センターの構築を進めてきました。不備を改善しながら取り組んでおり、一部は動きだしています。社員からも「便利になった」という声を聞いており、業務は良くなっているようです。今後はデータ連携をさらに綿密にできるように手を加えていきます。

 昨年12月、岡山県倉敷市の児島地域に物流センターの「児島ロジセンター」を新設しました。この先増加が見込まれる個人宅配への対応強化に加え、即納体制の構築も目指します。物流倉庫に関しては、今後も増やしていく予定です。

――昨年に東京で開いた展示会で、医薬業のDR.C医薬(東京都新宿区)と共同開発した商品を発表しました。

 花粉と臭いの悩みを和らげる制服、体育着になります。こちらの商品はこの春から提案を始めます。基本的には再来年の春からの採用となってくると思います。

  ――グループ会社のカンコーマナボネクト(岡山市)で取り組む教育ソリューション事業については。

 学校側からの引き合いは変わらず多くいただいています。制服提案での相乗効果も一部ではあります。高校生を対象に、生徒自身が動画を企画、準備、撮影、編集をして学校の魅力を発信するコンテスト、「You Tube甲子園」など、これまでにさまざまな取り組みも行ってきています。

 社会課題解決の部隊として、今後も非認知能力(意欲や感性など、客観的な数値で測定できない能力)といったテーマを中心に取り組んでいきます。

〈インフレを実感するとき/満額回答相次ぐ春闘に〉

 尾﨑さんは「買い物をしているとさまざまなモノの値段が高くなったと感じる」と話す。ただ、「何が要因なのかなかなか分かりにくい」。「物価の上昇には円安の影響もあると思うし、例えば野菜が取れなければ値段は高騰する。需給バランスが不安定になるということも一つの要因」として、「物価上昇と言ってもいろいろな要素が複合的に絡まっている」と指摘する。また、「春闘の結果を見ても、インフレを実感する」と話す。

【略歴】

 おざき・しげる 1998年尾崎商事(現・菅公学生服)入社。2001年取締役、03年専務。06年から社長